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方法論・統計手法研究

  • 複雑なサンプリング構造を持つデータの統合に関する方法
  • 経時的なバイオマーカーデータの変化の検出
  • レジストリ/RWDなどを活用した研究方法論
  • 予測モデルの構築, 評価手法に関する研究
  • 分子マーカーを用いた疫学研究における統計学的手法
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レジストリ/RWDなどを活用した研究方法論

 本邦では2015年以降、厚生労働省のClinical Innovation Network事業(CIN事業)の一環として国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)でも患者レジストリ整備が進んできました。米国では21st Century Cures Actが2016年に成立し、レジストリやReal World Data (RWD)の医薬品等の薬事承認申請資料への活用を含む薬事目的利用の議論も世界的に活発化してきました。

 2015年度の厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究「国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)等において構築する疾患登録システム(患者レジストリ)を基盤とした、新たな治験・臨床研究の推進方策に関する研究」(研究代表者:国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター  武田伸一先生)、及び、2016年度~2018年度の日本医療研究開発機構(AMED)医薬品等規制調和・評価研究事業「患者レジストリデータを活用した臨床開発効率化のための新たな臨床研究デザインの開発」(研究開発代表者:群馬大学 林邦彦先生)での検討を踏まえ、国内での議論も深まってきました。

 しかし、薬事申請資料として治験と異なるRWD を活用する際のデータの信頼性担保の方法論や、データの価値を高めるための利活用の方法論は発展の途上にあり、アカデミアの研究や医薬品等の研究開発の各々のプロジェクト内で試行錯誤されている状況にありました。そのため、これらの課題を検討するために2019年度~2021年度にかけ、AMED医薬品等規制調査・評価研究事業の支援を受け「患者レジストリデータを活用した、臨床開発の効率化に係るレギュラトリーサイエンス研究」班(研究開発代表者 柴田大朗, JP21mk0101154)として、6 つのナショナルセンターを中心に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、企業からの参加者も含む研究班を構成し、二つの研究開発項目[(1)品質マネジメントシステムのあり方及び留意事項、及び、(2)生物統計学的検討と他データベース連携の検討]に取り組みました。研究班での検討の成果として2 つの文書「レジストリデータを医薬品等の承認申請資料等として活用する場合におけるデータの信頼性担保に資する運営・管理に関する留意点」、及び「医薬品等の開発において RWD/RWE を利活用する際の生物統計学的側面の留意事項」(和文及び英文)を作成しました。

 

  • 小居秀紀ほか.「レジストリデータを医薬品等の承認申請資料等として活用する場合におけるデータの信頼性担保に資する運営・管理に関する留意点」作成の経緯, Jpn Pharmacol Ther 50(s2): s102-105, 2022.
  • 小居秀紀ほか「品質マネジメントシステムのあり方及び留意事項の検討」分担班. レジストリデータを医薬品等の承認申請資料等として活用する場合におけるデータの信頼性担保に資する運営・管理に関する留意点, Jpn Pharmacol Ther 50(s2): s106-128, 2022.
  • Hideki Oi, et al. Subgroup for “Review of the quality management system and points to consider”. Points to Consider for Operation and Management to Ensure the Reliability of Registry Data for Use in Application Dossiers of Pharmaceuticals and Medical Devices, Jpn Pharmacol Ther 50(s2): s129-153, 2022.

 

 この研究には、当部スタッフも関与している中央病院のMASTER KEY Projectでの経験が反映されており、また、この研究の成果がMASTER KEY Projectに反映されると共に、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)のデータの利活用に関する考え方にも反映されています。このように、国立がん研究センター内の部局間での連携、他のナショナルセンターとの連携を踏まえた取り組みとなっています。