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国立がん研究センター

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肝がんの病気について

最終更新日:2023年8月28日

肝がんとは?

肝臓は、腹部の右上にあり、成人では約1kg以上にもなる体内最大の臓器です。肝臓は体の右側部分(右葉)と左側部分(左葉)に分けられ、下方には、胃や腸から吸収した栄養を肝臓に運ぶ静脈(門脈)が通っています。
肝臓の主な役割は、門脈から流入した血液に含まれる栄養を取り込んで、体に必要な成分に変えることや、体内でつくられたり、体外から摂取された物質を解毒して排出することです。また、脂肪の消化を助ける胆汁をつくるはたらきもあります。胆汁は、胆管を通って胆のうに入り、十二指腸へと送られます。

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肝がん(肝臓のがん)は、肝臓の細胞ががん化したもので、肝臓から発生するがん(原発性肝がん)と他の臓器のがんが肝臓に転移したがん(転移性肝がん*1)に大別されます。原発性肝がんの約90%は肝細胞がんのため、一般的に「肝がん(肝臓のがん)」とは、「肝細胞がん」のことを指します。
その他の種類として、肝臓にはりめぐらされている胆管から発生する肝内胆管がん(胆管細胞がん)*2や小児の肝がんである肝細胞芽腫などがあります。

肝がんは50歳代から増加し始め、80~90歳代でピークを迎えます。男女比は2:1と男性に多いのが特徴ですが、2000年以降、男女ともに罹患率、死亡率は減少傾向がみられます。

*1 転移性肝がん:肝臓以外の臓器にできたがんが肝臓に転移したもので、「肝転移」といわれることもある。肝臓から発生した原発性肝がんとは区別し、最初にがんができた臓器(原発巣)に準じた治療を行う。

*2 肝内胆管がん(胆管細胞がん):肝臓にできたがんでも、肝臓の中を通る胆管ががん化したものは、肝がんとは治療方法が異なるため、「胆道がん」として区別されている。

(がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/cancer/biliary_tract/print.html

原因

肝がんの主な原因は、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)への持続感染といわれています。肝炎ウイルスが長期間体内に留まることにより、肝細胞で炎症と再生が繰り返されるうちに、遺伝子の突然変異が積み重なり、慢性肝炎から肝硬変(肝臓が硬くなってしまう状態)を経て、肝がんになることが多いのですが、慢性肝炎や肝炎がほとんどない状態からも肝がんができる場合があります。また、ウイルス感染がないにもかかわらず、誤って自分の肝細胞を攻撃してしまう自己免疫性肝炎が慢性肝炎の原因となることもあります。

その他の原因としては、多量飲酒によるアルコール性肝障害、メタボリックシンドロームに起因する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などがあります。脂肪肝炎*3とは、肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病により、肝臓に脂肪がたまって、炎症を起こした状態で、慢性肝炎と同じように、やがて肝硬変に至ることがあります。このように非アルコール性の脂肪肝から脂肪肝炎や肝硬変に進行した状態までを含む一連の肝臓病のことを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。近年では、ウイルス感染や自己免疫性の肝炎よりも、NAFLDに起因する肝がんの割合が増加しています。

さらに、男性、高齢、喫煙、アフラトキシン(カビから発生する毒素の一種)への曝露なども肝がんのリスク因子として知られています。

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*3 脂肪肝炎:脂肪が過剰にたまった肝臓(脂肪肝)が炎症を起こしている状態。

肝炎と肝炎ウイルス                                                                 

肝炎ウイルスに感染して、ウイルスが長期間体内に留まると、免疫のはたらきによって肝細胞で炎症と修復が繰り返され、慢性肝炎から肝硬変に至り、がんを発症するといわれています。肝炎ウイルスに感染する経路としては、次のようなものがあります。

  1. 妊娠・分娩に伴う母子感染     
  2. 輸血などの血液製剤による感染
  3. 性行為による感染
  4. 針刺し事故や注射器の使い回しによる感染 など

ウイルスに感染しても、肝炎を発症せず、健康に生活している人もいますが、こうした肝炎ウイルスの保有者(キャリア)も含めて、ウイルスに感染したことがあれば、肝がんになりやすい“予備群”として、早期発見・治療に努めることが大切です。以前は、肝炎ウイルスによる慢性肝炎が肝がんの原因の上位を占めていましたが、近年では、インターフェロンという注射薬をはじめとする治療薬の進歩で、治療成績は大きく向上しました。近年では、C型肝炎に対して、インターフェロンを使用せず、飲み薬だけで治療する「インターフェロンフリー」治療が主流になっています。

症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、炎症やがんがあっても、ほとんど自覚症状がないことが多く、健康診断やほかの病気の検査のときに、たまたま肝臓の異常を指摘されることも少なくありません。肝がんに特有の症状はありませんが、肝がんになる人は、すでに肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患を伴っていることもあります。慢性肝疾患によって肝機能が低下すると、食欲不振、むくみ、倦怠感(けんたいかん)などの症状があらわれます。また、肝がんが進行すると、腹部にしこりや痛み、圧迫感などの症状があらわれることがあります。

肝がんの発生には、慢性的な肝臓の炎症や肝硬変が影響しているといわれていますので、たとえ症状がなくても、職場の健康診断などで肝機能の異常や肝炎ウイルスへの感染が指摘されたら、主治医に相談したり、近くの内科や消化器内科を受診するようにしましょう。

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