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国立がん研究センター

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口腔がんの治療について

最終更新日:2023年10月17日

前回の動画▷口腔がんの検査・診断について

治療までの流れ

図:口腔がん(舌がん)の治療

oral_001_7.pngクリックするとPDF(702KB)が開きます

がんの大きさ(T:原発巣*)、頸部リンパ節への転移の有無(N:領域リンパ節)

*原発巣:最初にがん(腫瘍)が発生した病変のこと。原発巣が何かを知ることは治療方針を決める上で重要だが、発巣が小さい、あるいは発見しにくい場所にある場合には、特定できないこともある。
(参考)国立がん研究センターがん情報サービス「原発巣

治療法

口腔がんの治療法は、がんができた場所やがんの種類、進行(広がり)の度合いなどによって異なります。ほとんどの口腔がん外科治療(手術)が標準治療となりますが、進行度によっては、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を術後に併用したり、痛みなどの症状を和らげる目的で緩和治療も行う場合があります。

口腔がんの治療後は、食べ物を噛んだり(咀嚼)、飲み込んだり(嚥下)、言葉を発音する(構音)などの機能が障害されてしまうことがあります。これらの機能を回復させるために、様々なリハビリテーションが必要になる場合もあります。

手術について

原発巣切除術

がんが発生しているところ(原発巣)を手術によって取り除く方法で、ステージ0~IVBでは標準治療となります。確実にがんを取り除くために、がん周辺の正常組織も一緒に切除します。がんが骨まで広がっている場合は、骨組織も切除する場合があります。

がんができた場所や進行度によって、切除範囲も異なります。手術は、以下の組み合わせによって行われます。

手術(切除)の方法

舌の切除

舌部分切除術

舌可動部の半側に満たない切除

舌可動部半側切除術

舌可動部のみの半側を切除(舌中隔までの切除)

舌可動部(亜)全摘出術

舌可動部の半側をこえた切除(亜全摘)あるいは全部の切除

舌半側切除術

舌根部をも含めた半側切除

舌(亜)全摘出術

舌根部をも含めた半側以上の切除(亜全摘)あるいは全部の切除

下顎の切除

下顎辺縁切除術

下顎骨下縁側を保存し、下顎骨体を離断しない部分切除

下顎区域切除術

下顎骨の一部を節状に切除し、下顎体が部分的に欠損する切除

下顎半側切除術

ほぼ正面から半側の下顎の切除をいうが、下顎骨の一部が残存する場合もある

下顎亜全摘術

下顎骨の半側をこえる切除


合併切除

口唇切除

口腔底切除

下歯肉切除

頬粘膜切除

皮膚切除,その他

頸部郭清術

リンパ節への転移がある場合、リンパ節を周囲の組織ごと手術で取り除きます。T1、T2の口腔がんでリンパ節転移がなくても、今後リンパ節転移が明らかになってくる可能性がある程度高いと判断された場合、予防的に郭清を行うこともあります。がんの状態によって郭清を行う範囲や温存できる臓器(血管・神経・筋肉など)が異なります。

再建手術

切除して欠損した部分を補うための手術です。再建手術では、患者さんの体の別の部分を使って、組織移植を行うのが一般的ですが、金属などの人工材料を用いて再建する場合もあります。

放射線治療について

手術でがんがとり切れなかった場合や、頸部のリンパ節に転移がみられる場合、術後化学放射線治療が推奨されています。術後化学放射線治療とは、放射線治療と薬物療法(抗がん剤治療)を併用する治療法で、口腔がんの治療では、手術後の再発予防を目的として局所進行がんで行われることがあります。

口腔がんで用いられる放射線治療には、放射線を放出する物質(放射性同位元素)を用いてがん組織やその周辺の組織に管や針などを挿入して照射する「小線源治療」があります。

副作用について

放射線治療中や治療後は、次のような副作用があらわれることがあります。治療後も長期間、症状が残る場合がありますので、気になる症状があれば、主治医に相談しましょう。

-早期の副作用(放射線治療中や治療後数カ月以内に生じるもの)

口腔に高線量が入ると唾液の量の減少、口腔乾燥、味覚障害、口腔粘膜炎による痛み、舌運動機能の低下、皮膚の炎症による痛みが生じることがあります。また、咽頭に高線量が入ると、嗄声(声のかすれ)や嚥下障害、咳などの症状が起こります。ものを食べたり、飲み込んだりする機能が低下して、栄養状態が悪くなった場合は、入院が必要になることもあります。

-晩期の副作用(治療後数か月以降に生じるもの)

咽頭に放射線が入ると、嚥下障害がみられることがあります。口腔領域への照射では開口障害、唾液が出にくくなることによる虫歯の増加、歯の欠損や骨壊死などがあらわれることもあります。放射線治療の影響は長期に及び、治療終了後、何年かたっても、抜歯をきっかけに下顎骨の骨髄炎になることもあります。治療終了後も口の中を清潔に保ち、歯科を受診する前には、担当歯科医に放射線治療歴があることを伝えましょう。また、稀に、放射線治療の影響で、新たながん(二次発がん)が発生することがあります。

化学療法について

進行した口腔がんでは、手術後に化学療法と放射線治療を併用した治療(化学放射線治療)を実施することで再発の危険性を低減させる治療が検討されます。また、病気の拡がりの状況などから手術が実施困難と判断される場合に、化学放射線治療が選択される場合があります。これらの場合、一般的に用いられる化学療法(抗がん剤)はシスプラチンになります。また、がんの再発や遠隔転移を認め根治が目指せない場合、がんを縮小させる、あるいは進行を遅らせることによって延命を図る緩和的化学療法を検討します。これらの治療で用いられる抗がん剤は、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的治療薬、タキサン系抗がん剤、フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬、プラチナ製剤などがあります。

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