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臨床医インタビュー 中島拓真

中島拓真

丹羽真琳子写真

出身 熊本大学医学部医学科
現職 名古屋大学医学系研究科脳神経外科大学院生
   2023年10月~国立がん研究センター研究所 脳腫瘍連携研究分野 特任研究員
がん研究センター研究所の所属 脳腫瘍連携研究分野
NCC在籍期間 2021年4月~現在
研究指導者 鈴木啓道 (脳腫瘍連携研究分野 分野長)


研究所で実験するようになったきっかけ

初期研修終了後に名古屋大学の脳神経外科に入局し、関連病院で脳外科臨床医としての勤務を開始しました。市中病院での研修中には、脳腫瘍や脳血管障害の手術に励みましたが、手術・化学療法・放射線治療と確立された治療では治癒することのない膠芽腫を代表とする悪性脳腫瘍に対峙し、現代の医療の限界を痛感しました。その後大学病院に戻り、小児脳腫瘍チームで半年間勤務しましたが、やはり確立された治療では刃が立たないものばかりでした。この状況を改善するためには、研究により悪性脳腫瘍の発症メカニズムの解明、治療に有効なターゲットの発見が必要不可欠であると考え、博士課程に進学しました。当時、脳腫瘍の臨床現場に遺伝子診断が導入されたばかりで、がんの発生の原因であるゲノム異常の探求に興味を持った私は、2021年4月に脳腫瘍連携研究分野長に着任された、同門の鈴木啓道先生の元で研究に従事することを希望し、博士課程2年目で任意研修生として赴任させていただきました。2023年10月より、特任研究員として研究を続けております。

研究所での生活

現在主に行っているのは、大規模脳腫瘍コホートに対する全ゲノム、RNA、エピゲノムなどのシークエンスデータを解析して、脳腫瘍の病態に迫るマルチオミクス解析です。ドライ解析は、目的に応じて適切な解析手法を考えて組み合わせることで行うため、試行錯誤の連続です。我々の研究室では鈴木先生から直接指導を頂く機会も多く、このような試行錯誤に対しても得られた結果に対してどのように解釈し、次の解析にどのように活かすかという今後研究者として独立して研究をお行っていくために必要な考え方の部分を学ぶことができます。週に1回、ラボミーティングで自分のプロジェクトの進捗の報告を行う機会もあり、この際にも各自が用意するプレゼンテーションに対して、どのような構成にすると聴衆に面白く魅せられるかという観点から熱心な指導をいただけ、非常に学びの多い時間になっています。このミーティングをペースメーカーとして、プロジェクトの課題に取り組みながら日々研究を行っています。

研究所での実験に取り組んで良かったこと

研究所内にはがん研究の各分野で実績のある先生が多くいらっしゃるため、我々の研究室よりもより専門的なアドバイスを頂きたい場合や、最新の解析手法を取り入れたい時に、その分野に精通した方が身近にいらっしゃり、研究室の垣根を超えてご相談させていただいたる環境があります。また、研究所では月に1回若手の研究セミナーが開催されており、各研究室がどのような研究を行っているのか発表を聞く機会もあります。このような環境があることで研究室内だけでなく、他の分野の大学院生や若手の研究者との交流でき、自分の成長や研究の発展につながるような意見交換ができます。

また、鈴木先生は海外の研究者とのつながりも広く、複数の海外の研究室と共同研究を行っており、共著者として貢献させていただくことができます。海外との共同研究では、大きな研究が実際に複数の研究室が協力することで形になっていく過程を臨場感をもって体験することができ、非常に有意義な経験となります。私自身、在籍2年で5件ほど海外との共同研究に協力させていただき、うち1つはNature誌に成果が発表されました。

このように、研究所の内外で世界の研究を間近で経験できることが魅力だと感じています。

後輩へのアドバイス

国立がん研究センターと聞くと、到底ついていけないようなハイレベルな研究をしているところではないかと不安になるかと思います。実際私も来る前はそう思っていました。しかし、全くの研究初心者で飛び込んだ私でも、もちろん最初は大変なのですが、熱心にサポートしていただける環境があるので、もがきながらもある程度プロジェクトを進められるようになりましたので、あまり過度な心配はいりません。

研究生活自体は充実しているとはいえ、何を発見できるのかわからない暗闇の中を進んでいくような側面もありますので、苦しい日々も多いですが、切磋琢磨できるラボのメンバーやついていこうと思える指導者がいるおかげで意外と何とかなります。とりあえず頑張れるやる気さえ持っていれば問題ないと思いますので、興味があれば一度見学に来てください。

主要な論文

  1. Liam D. Hendrikse, Takuma Nakashima(19 番目/131), Hiromichi Suzuki, Kathleen J. Millen, Michael D. Taylor. Failure of human rhombic lip differentiation constitutes medulloblastoma. Nature. 69時10分21-1028. 2022
  2. Yusuke Funakoshi, Takuma Nakashima(4 番目/5), Hiromichi Suzuki. Recent advances in the molecular understanding of medulloblastoma. Cancer Science. 114(3): 741-749. 2023