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脳腫瘍研究コア

深層学習を始めとする機械学習は、人間には処理が難しいような大量のデータから法則性を見出すことが可能である。一方バイオサイエンスの分野ではハイスループット技術の発達や、医用画像の進歩により加速度的に扱うデータの量が増えており、この大量のデータを処理し法則性を見出すツールとして機械学習は期待されており、研究レベルでは既にいくつもの有望な結果を上げている。

 しかしながら、実用化は思った以上に進んでいない。これは、倫理面や商業面などの障壁だけでなく、機械学習装置自体に大きな問題点があるからである。脳のMRI画像を用いた、腫瘍領域のセグメンテーション(図を参照。脳の腫瘍部分と正常脳部分を囲って区別すること。放射線治療の計画などに必要)を例に取ると、深層機械学習装置は脳内に発生する神経膠腫の腫瘍領域の自動セグメンテーションを高い精度で行える。しかしながら、深層学習装置に学習に用いた画像とは別の施設由来の画像に対してセグメンテーションを行わせると、急激にその精度が落ちることが確認されている。このような機械学習装置の成績の低下のことを画像のdomain (画像が撮像、処理された場所のこと) が異なっていることに起因することから、domain shiftによる成績の低下と呼ぶ。本研究グループでは 日本全国10施設以上の施設と提携し、domainの異なるデータを取集、domain shiftによる成績の低下がどの程度の頻度と深刻さで起こるのかを明らかにした。また、わずか20症例弱の症例で追加の学習を行うことでdomain shiftによる成績の低下を克服しうることを示した。我々の研究グループではこのように、機械学習装置を社会実装するにあたって解決することが必要な問題をについて研究を行なっている。
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