コンテンツにジャンプ

トップページ > 共通部門のご案内 > 遺伝子診療部門 > 遺伝子検査(解析)

遺伝子検査(解析)

遺伝子図

遺伝子はヒトの体を構成する細胞の設計図に相当します。遺伝子はDNAと呼ばれるA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4つの化合物(塩基)が並んだ物質で、A・T・C・G の4文字で書かれた情報としてとらえることができます。遺伝子検査は、このDNAの文字の配列を調べる検査です。同じ遺伝子であっても、DNAの文字の並びはヒトによって異なり、それらは「バリアント」や「変異」と呼ばれています。この、ヒトによって様々なDNAの配列が、私たちヒトの特徴や体質の多様性を生み出しているのです。

がん診療で実施される遺伝子検査には2つのタイプがあります。これらは異なる目的で使用されるので、区別することが必要です。

  1. がん細胞で生じている遺伝子の配列を調べる検査(体細胞遺伝子検査)
  2. 生まれつき持っている遺伝子の配列を調べる検査(生殖細胞系列遺伝子検査)

体細胞遺伝子検査

がん細胞で起きている遺伝子変異を調べる検査です。ヒトの遺伝子は、環境や加齢の影響で徐々に変化(「変異」とも呼ばれます)が起こます。その結果、遺伝子の配列を基に作られるタンパク質が正常に機能しなくなることで、細胞はがん化すると考えられています。たとえば肺がんのうち、腺がんというタイプではEGFR遺伝子に変異がみられることがあります。このようながんではEGFR遺伝子からつくられるタンパク質に対する薬剤(分子標的治療薬と呼ばれています)が有効です。この分子標的治療薬の適応を決めるために、体細胞遺伝子検査が行われます。

最近では、1つの遺伝子を調べるのではなく、網羅的にたくさんの遺伝子を一度に調べ、がん細胞で起きている遺伝子変異のタイプに適する薬を選択するための検査も導入されています。詳しくはがんゲノム医療のページをご覧ください

生殖細胞系列遺伝子検査(遺伝学的検査)

生まれつき持っている遺伝子配列の違いを調べる検査です。生まれつき持っている遺伝子配列の違いは、身体的特徴や体質の違いを生み出すほか、病気のなりやすさにつながるものもあります。ヒトは1つの受精卵が分裂を繰り返して、約30兆個の細胞で構成されており、すべての細胞が同じ遺伝子配列(遺伝情報)を持っています。生殖細胞系列の遺伝子検査(遺伝学的検査)はリンパ球と呼ばれる細胞を用いることが多く、検査には採血が必要となります。1の体細胞遺伝子検査と異なり、がんになっていない細胞を調べるためです。

遺伝学的検査の目的は、がんの発症リスクに関わる遺伝子変異をもっているかどうか調べることです。これには遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の原因である「BRCA1/2遺伝子」や、Lynch症候群の原因である「ミスマッチ修復遺伝子」などが含まれます。また最近では、分子標的治療薬の適応判定として、この生殖細胞系列の遺伝子検査(遺伝学的検査)が実施されることもあります。

生まれつきもっている遺伝子の情報は個人の特定にもつながる情報です。また、遺伝学的検査の結果は個人だけでなく、ご家族にも影響する可能性があります。

検査や結果の意味を事前に十分理解した上で、遺伝学的検査を受けていただく必要があることから、国立がん研究センター東病院では、家族性腫瘍外来にて専門的なサポート(遺伝カウンセリング)を行っています。

更新日:2022年5月13日