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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第12回 食道がんの外科治療の進歩

2022年4月23日

国立がん研究センター東病院 食道外科 藤田武郎

食道がんのうち日本で多い「扁平上皮がん」は典型的には喫煙や飲酒による食道への慢性的障害が一因とされています。特にお酒を飲むとすぐに赤ら顔になる「フラッシャー」とよばれる遺伝的素因の方は食道がん発生のリスクが高く、同時にこのリスクは咽頭がんや喉頭がんにも関連するため定期的な検診が重要です。

大腸がんの特徴図

 

食道がんの治療には内視鏡・手術・抗がん剤・放射線の4つの治療が主体になります。実際の治療においてはステージなどにより、主として1.いわゆる「胃カメラ」を用いて局所切除を行う内視鏡治療、2.所属リンパ節も含めてがんを切除する外科手術、3.放射線と抗がん剤を併用して行う化学放射線療法が挙げられます。

そのうちの2.外科手術はステージ1から4までの幅広いがんの進行度に対して行われる最も根治性の高い治療方法になりますが、同時に身体への負担も他の消化器がん手術と比較して大きいことが特徴です。

負担が大きい理由としては、一度の手術で頸・腹・胸部の3部位に手術操作が必要な事が挙げられます。以前は大きく体を切る開胸と開腹での手術が主体でしたが、現在では多くの場合小さな穴をあけて行う腹腔鏡と胸腔鏡の手術が行われるようになりました。

 

腹腔鏡や胸腔鏡手術は体への傷が小さいという身体的負担の軽減のみならず、高精細な内視鏡画像を通じて観察しながら手術を行うことで先に挙げた近接する重要臓器に対して愛護的な手術を行う事が可能になります。また最近ではこれらの低侵襲手術を手術支援ロボットを用いて行う事も一部の病院では医療保険で行う事が可能となりました。ロボット手術ではこれまで真っすぐだった手術器具が関節機能で自由に曲げられるとともに手ぶれが補正される機能などもあり、食道手術においては特に有用とされています。当院では2020年より医療保険でロボット手術を施行する事が可能となりこれまで100例以上施行しています。ロボット手術により精密な切除が体への少ない負担で施行できるようになり、今後様々な有効性が期待されています。

低侵襲手術と開胸・開腹手術図

 

さらに高齢者や心肺に持病があるなど胸部アプローチが困難な場合には、「胸の傷を作らない」縦隔鏡手術も考慮されます。縦隔鏡手術は、頸部の小さな傷より細長い手術器具を挿入して行う方法で、腹腔鏡手術と併用して行う事で最小の負担で行う事が可能となり、現在国内でも一部の施設で施行されています。

ただし、これらの低侵襲手術は高度な技術を必要としているため、どこの病院でも行われているわけではありません。また、がんの大きさやリンパ節転移の広がりなどの理由で適応できない病状と判断されることもあります。

国立がん研究センター東病院では、基本的にはほぼすべての病状の方に上記の胸腔鏡・ロボット・縦隔鏡などいずれかを用いた手術を実施しています。全国的にもこれら低侵襲手術が少しずつ普及しており、負担が少ない治療が今後進んでくると考えます。

執筆者

藤田先生写真
  • 藤田武郎(ふじた・たけお)
  • 2001年高知医科大学医学部卒業、2005年岡山大学大学院卒業。2005年米国ピッツバーグ大学がんセンターフェロー。2012年国立がん研究センター東病院食道外科・医員。2019年同科・科長。専門は食道がん・食道胃接合部がんの外科手術。日本内視鏡外科学会評議員。日本内視鏡外科学会技術認定医。日本ロボット外科学会認定専門医。食道ロボット手術プロクター。

更新日:2022年6月23日