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主な研究内容

本邦のゲノム医療に適したがん体細胞遺伝子異常の検査法の開発と実施体制の整備

NGSを用いたゲノム検査の医療実装

ゲノム情報に基づいて治療選択を行う個別化治療を実施するための基盤として、次世代シークエンサー(NGS)を用いて体細胞遺伝子異常を検出する検査法の開発を行っています。具体的には、1度の検査により腫瘍組織から抽出したゲノムDNA上の114個の遺伝子変化、生殖細胞系列遺伝子変異、ゲノムにおける腫瘍変異負荷(TMB: tumor mutation burden)検出する『NCCオンコパネル検査(遺伝子パネル検査)』を開発しました。NCCオンコパネルは、日本初の遺伝子パネル検査として2018年12月25日に薬事承認され(OncoGuideTM NCCオンコパネルシステム、承認番号:23000BZX00398000)、2019年6月1日に保険収載されました。現在は、がんゲノム医療中核拠点・連携病院で保険検査として、がんゲノム医療に用いられています。
 今後、研究所臨床ゲノム解析部門、バイオインフォマティクス部門と協力し、さらなる改良を行います。欧米とは異なる規制の中での遺伝子パネル検査の実装・改良はやさしいものではありませんが、本邦に適したがんゲノム医療の基盤取り組んでいきます。

日本と米国のがんゲノム検査規制の違いの図

遺伝子パネル検査の要点

また、本検査を院内臨床検査として行うための体制として、中央病院病理臨床検査科と協力し、国際基準の品質保証検査室(SCI-Lab)をシスメックス社/理研ジェネシス社とともに中央病院内、新研究棟に設置し運用しています。また、2018年度には、シスメックス社/理研ジェネシス社において、先進医療Bとしての外注検査を行いました(登録終了)。

NGSを用いたゲノム検査の臨床的有用性の検証

遺伝子パネル検査の臨床的有用性の検証のため、中央病院先端医療科、病理臨床検査科と協力して、早期臨床試験へのエントリーを検討している患者を対象とした臨床研究として、NCCオンコパネル検査を実施しました。2013 ~ 2014 年に登録されたTOP-GEAR試験 第1期試験の追跡調査から、ゲノム異常に適合した治療を受けた症例の予後がその他の治療を受けた症例よりも良いことが示されました。

 

 

クリニカルシークエンスの臨床的な有用性の証明

2016年から2017年には、上記SCI-Labにて品質保証下で解析を行うTOP-GEAR第2期試験において248 例が検査に参加されました。遺伝子解析結果が得られた187例のうち、約半数でがん関連三学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)が作成した「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス」治療効果基準3A以上のアクショナブル変異が検出されました。また、約10%の症例が、10変異/100万塩基対以上の腫瘍変異負荷を示し、免疫チェックポイント阻害薬治療の効果が見込まれる症例でした。全体の13%の症例で、アクショナブル変異に基づいた抗がん剤が選択され、治療されました。この成果は、本邦の遺伝子パネル検査の臨床的な有用性を示しています。
 drugadmin

がん遺伝子パネル検査後の変異マッチ治療は、希少がんや早い治療ラインでより有効であることが、TOP-GEAR研究で明らかになりました。
The impact of rare cancer and early-line treatments on the benefit of comprehensive genome profiling-based precision oncology.
Kubo T et al, ESMO Open, 2024


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がん遺伝子パネル検査が医療現場に導入されることで、がんの新しい病因の発見、正確な病態の把握が可能となると期待されます。例えば私たちは、母子間のがん遺伝子パネル検査の結果の類似性に基づいて、母親の子宮頸がんが羊水を介して出産時に子供の肺に移行し、小児肺がんの原因となることを世界で初めて発見しました。

202117日 母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見ーNew England Journal of Medicine誌に論文発表ー

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