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日本における化学療法誘発性悪心・嘔吐に対するガイドラインに基づく予防的制吐療法の実施に影響を与える要因:病院における質的研究のプロトコール

更新日 : 2022年07月07日

はじめに:

 化学療法による悪心・嘔吐(CINV)は患者の QOL を低下させ、治療成績に悪影響を与える。ガイドラインで推奨されている急性期CINVに対する標準的な予防的制吐療法は有効であるが、ガイドラインの実施が不十分であることが世界的に問題となっている。日本では、予防的制吐療法は催吐性リスクの高い化学療法では比較的よく実施されているが、催吐性リスクの低い化学療法では実装ギャップが見られる。

 適切な制吐薬の処方に影響を及ぼす要因については、医師の意識や行動に着目した報告が多い。しかし、化学療法の実施体制には薬剤師や看護師、さらには病院長が関与し、さらにオーダリングシステムによりレジメンとして投与されると考えられることから、より包括的な検討が必要である。本質的研究の目的は、日本のがんの診療を行う病院における適切な予防的制吐療法の実施に影響を与える要因を、包括的に探索することである。

方法と分析:

 本研究は、半構造化面接を用いた病院ベースの質的研究である。対象者は、病院長、がん化学療法部・薬剤部・看護部の管理者(代理を含む)で、合目的的サンプリングにより抽出する。化学療法レジメンに含まれる制吐剤、制吐剤のルーチン使用、ガイドラインの認知度などについて、事前アンケートで情報を収集する。その後、インタビューガイドを使用してオンラインでインタビューを実施する。インタビューデータの収集と分析には、「実装研究のための統合フレームワーク」を使用する予定である。また、必要に応じて、帰納的に新たなコードを作成する。また、QI調査の集計結果を参考に、推奨されている制吐剤処方の各病院での実施状況を把握し、影響因子との関係についても考察する予定である。

倫理と普及:

本研究は、国立がん研究センター倫理承認委員会の承認を受けている(承認番号:2020-305)。研究結果は、査読付き雑誌の出版や学会での学術関係者、政策立案者、臨床医への発表を通じて普及させる予定である。

 

発表論文

Yaguchi-Saito A., Kaji Y., Matsuoka A. et al. Factors affecting the implementation of guideline-based prophylactic antiemetic therapy for chemotherapy-induced nausea and vomiting in Japan: a protocol for a hospital-based qualitative study. BMJ Open 12, 6 (2022).
https://bmjopen.bmj.com/content/12/6/e055473.long