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2022年度「患者・市民パネル」検討会~ゲノム医療への患者・市民参画~

開催日時

開催日:2022年12月10日(土曜日) 開催時間:13:30~16:00

開催方式

オンライン(Zoomミーティング)

プログラム

  • 開会あいさつ
  • 講演1 身近になってきた全ゲノム解析
  • 講演2 患者・市民参画と全ゲノム解析等実行計画
  • 事前アンケートの結果報告、検討テーマと進行方法についての説明
  • グループディスカッション
  • 各グループからの報告・全体共有、コメント
  • 閉会あいさつ

概要

12月10日に2022年度国立がん研究センター「患者・市民パネル」検討会をオンラインにて開催いたしました。北海道から沖縄まで全国から53名のパネルのメンバーにご参加いただきました。今回の検討会は「全ゲノム解析を基盤としたがんゲノム医療の実装に向けた患者還元、解析・データセンター、 ELSI 体制構築についての研究班」(研究代表者 中釜斉)、および「国立がん研究センター 患者・市民パネル事務局」が共同で開催し、研究班から16名の方々にもご参加いただきました。

開会にあたり、中釜斉・国立がん研究センター理事長から挨拶がありました。中釜理事長からは、全ゲノム解析を医療現場に実装するためには患者さんに十分な理解を促す必要があること、また、そのためには、説明文書が適切か、そもそも全ゲノム解析が認知されているのか、といった様々な課題について患者・市民の意見が必要であり、今回の検討会をそのための議論の場としてほしい旨が語られました。

次に、国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野長の河野隆志先生より「身近になってきた全ゲノム解析」というテーマでご講演いただきました。全ゲノム解析は全ての遺伝子を対象とした解析方法であり、現在は研究段階にあります。河野先生は、研究を進めるためには研究者のみならず患者・市民の意見が重要であると述べられました。また、現在行われているがん遺伝子パネル検査によるがんゲノム医療についてもご説明いただきました。現状を踏まえ、全ゲノム解析の利用可能性を明らかにするために今後も研究を行っていく旨が述べられました。

グループ発表の場面の写真01

続いて、国立がん研究センターの中田はる佳先生と、早稲田大学の横野恵先生より「患者・市民参画と全ゲノム解析等実行計画」というテーマでご講演いただきました。中田先生からは患者・市民参画の定義や意義について、横野先生からは全ゲノム解析研究における患者・市民参画の必要性についてご説明いただきました。患者・市民参画は「医学研究・臨床試験プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にすること」と定義付けられています。患者・市民参画は、研究対象者が望まない研究を避けるため、また研究者が持つ専門知と患者の持つ経験知を融合して課題解決を目指すため、そして研究の社会的妥当性について専門家だけでなく患者・市民の視点も入れて判断するために必要であることが述べられました。

グループ発表の場面の写真02

ディスカッションを開始する前に、パネルメンバーを対象に行われた事前アンケート結果の紹介がありました。アンケートの結果、9割以上の方が全ゲノム解析研究への参画に関心をお持ちであることがわかりました。

グループディスカッションは10グループに分かれて行われました。各グループにはパネルメンバーの他に、ファシリテーターとして当センターがん情報提供部の職員が、書記として研究班の方々が加わり、議論をサポートしました。「全ゲノム解析研究において患者・市民参画をする必要があるか」「あなた自身は参画したいか」というテーマで活発な意見交換が行われました。

グループ発表の場面の写真 03

グループディスカッションでは、このような話題が出ていました。
「研究のしくみや新しいルールを作る段階から患者・市民の意見が必要だと思う」「研究者や医療者がもたない経験に基づく意見を患者側は提供できる」「研究者と患者・市民との認識の違いを埋める意味でも、患者・市民参画は重要」「研究者のパートナーとして対等に意見を述べるために、知識を学べる機会があるとよい」

各グループからの発表を受けて、若尾文彦・がん対策研究所事業統括から「今回の検討会は、患者・市民参画の第一歩になったといえる。期待も不安の声もあるゲノム医療の情報をどのように一般の人々に伝えるかなどの面でも、今後も患者・市民パネルにお力添えをいただきたい」とのコメントがありました。
検討会の終了後には引き続き、交流会を設けました。全国各地のパネルのメンバーが少人数のグループに分かれて交流する場になりました。