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研究プロジェクト

更新日 : 2024年3月30日

がん検診アセスメント

がん検診ガイドラインの作成と研究

国内外のがん検診の有効性評価研究をレビューして、がん検診ガイドラインを作成しています。科学的に信頼できる医学研究を基に、日本の対策型検診として実施すべき検査方法に「推奨」をつけてまとめたものが「がん検診ガイドライン」です。これまでに胃がん、大腸がん、肺がん、子宮頸がん、前立腺がん、乳がん検診ガイドラインを作成し、公開しています。

ガイドラインの「推奨」は、医療資源等の日本国内の事情も配慮しつつ、多くの有効性評価研究の結果を統合し、不利益との対比を元に最終決定されます。検診研究部は日本国内のがん検診の有効性評価研究にも参加し、最新の研究成果をガイドラインに反映させて、より信頼されるガイドライン作成を進めていきます。さらに、これらの活動を研究論文や報告書として発表しています。

【参照リンク】科学的根拠に基づくがん検診推進のページ

がん検診の有効性評価に関する研究

新しい検査方法を、健常者を対象としたがん検診に導入するためには、がん死亡率減少を指標とした有効性を評価する研究が必要です。健康面に問題のない数万人の方々を、新しい検査方法によるがん検診を受ける群と受けない群に分けて、長期間にわたって両グループのがん死亡率を比較します。検診研究部はこのような大規模評価研究の事務局となり、多くの大学・研究機関や自治体と協働して、国内のがん検診の有効性評価研究を推進しています。

(現在進行中の研究(2024年1月))

以下すべて国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「革新的がん医療実用化研究事業」 に採択されています。

がん検診マネジメント

がん検診の精度管理に関する研究・事業

有効性が示され、国の指針で推奨されたがん検診であっても利益だけではなく不利益が生じます。がん検診の精度管理(注)は検診の利益の最大化、不利益の最小化のためになくてはならないものです。検診研究部は適切な精度管理手法に関する研究を行い、住民検診の精度管理を支援するツールを開発・更新しています。また適切な精度管理手法の普及を目的として、住民検診の従事者を対象とした研修も行っています。

(注)がん検診の精度管理とは、検査の前後も含めたすべての工程(検診機関の選定、受診勧奨、検診結果の通知、要精検者への精検勧奨、精検結果の把握など)を適切に管理することを指します。

(現在進行中の研究・事業(2024年1月))

  • 厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)
    がん検診の精度管理における指標の確立に関する研究 (研究代表者 高橋 宏和)
  • 精度管理指標「事業評価のためのチェックリスト」の開発・更新
  • 精度管理に関する全国データの把握(全国自治体を対象とした各種調査)、データベース作成・公開
  • 精度管理のためのツールの開発・更新
  • 自治体担当者(がん検診従事者、がん検診指導者)を対象とした研修会の開催
【参照リンク】がん情報サービス・医療関係者向け・がん検診
【参照リンク】がん情報サービス・がん統計・がん検診
【参照リンク】科学的根拠に基づくがん検診推進のページ・がん検診の精度管理

コロナウイルス感染症とがん検診およびがん医療に関する研究

新型コロナウイルス感染症により、がん検診やがん医療が影響を受けています。これらのデータを収集し、対応を検討するための基礎資料を作成すること、また適切な医療提供体制の構築のため、これらを多角的に分析・評価し実行可能性のある方法を検討しています。

(現在進行中の研究(2024年1月))

  • 厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)
    新型コロナウイルス感染症の流行によるがん検診及びがん診療の受診状況等に対する中・長期的な健康影響の解明にむけた研究 (研究代表者 高橋 宏和)

その他/がん検診の普及・実装研究

HPV検診のリーフレット開発のための調査研究

2024年2月厚生労働省は「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、子宮頸がん検診にHPV(ヒトパピローマウイルス)検査を追加しました。細胞診検査に変わって、HPV検査による子宮頸がん検診を提供する自治体もこれから増えていくでしょう。そこで、当部は市民向けにHPV検査にわかりやすく解説したリーフレット作成を行います。具体的には、30代女性を対象にインタビュー調査と同時にインターネット調査を行い、市民のHPVに関する認知や知識を調べて、リーフレット開発に役立てます。これらの調査を通じて、がん検診における市民への情報伝達のあり方を明らかにします。

(現在進行中の研究(2024年3月~))

 職域検診における自己採取子宮膣部細胞診実施状況の調査

 わが国での職域検診は受診率が高いものの、有効性や精度検証が行われていない検査法が様々用いられていることが課題となっていました。「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」(2009年版)で精度の問題が指摘された自己採取子宮頸部細胞診 (以下自己採取法) が職域検診において現在も実施されています。

この研究は、職域検診の実施主体である健康保険組合 (健保組合) の責任者に個別インタビュー調査を行い、自己採取法を継続している要因を明らかにします。さらにインタビュー調査結果を基に作成したアンケートを使って、全国の健保組合を対象に自己採取法の実施状況や自己採取法を使用する理由を調べます。この研究成果は、将来的に医師採取細胞診やHPV (Human Papilloma Virus) 検査への移行を促す介入プログラム開発に繋がる可能性があります。

重喫煙者を対象とする低線量CT肺がん検診に対する意識調査

がん検診の対象者は自覚症状が無い健康な人です。そのため、がん検診を受けることでこうむる不利益を最小化することが求められます。
近年、肺がん検診において重喫煙者を対象とした「低線量CT検査を用いた検診(LDCT検診)」が注目されています。従来の胸部単純X線検査によるがん検診に比べて、がん検出力が高まる一方で偽陽性や偽陰性過剰診断や放射線被ばくという様々な不利益も増加することが憂慮されます。
そこで海外では、LDCT検診の対象者を肺がんにかかるリスクが非常に高い重喫煙者に限定して、肺がん検診を実施しています。国内においても、重喫煙者を対象としたLDCT検診の有効性に関する検討が行われています。
検診研究部はLDCT検診の有効性評価と同時に、LDCT検診に対する市民の意識調査を行っています。2024年1月にインターネット調査を行い、肺がんのかかりやすさに応じて検査方法が変わること(リスク層別化検診)に対する市民のご意見を集める予定です。市民がLDCT検診をどのくらい受け入れられるかを調べて、今後の検討のための基礎資料にします。

(現在進行中の研究(2024年1月))

職域検診(働く世代を対象に職場で行われるがん検診)の適切な情報提供

職域検診の内容については、厚労省「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の中で、検診項目・対象年齢・受診間隔等の推奨が示されています。しかし同マニュアルはまだ十分に普及しておらず、多くの職域検診で科学的根拠に基づかないものが行われています。そこで職域検診の実施者(保険者・事業者)に向けて、検診を企画・運営する際に参考となる情報コンテンツを開発しました。

【参照リンク】がん情報サービス ・一般向け・ がん検診