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国立がん研究センター

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精巣がんの治療について

最終更新日:2023年10月17日

前回の動画▷精巣がんの検査・診断について

治療までの流れ

精巣がんの治療では、まず精巣の摘出手術(高位精巣摘除術*)を行います。取り出した精巣腫瘍は、顕微鏡で組織を調べる病理検査によって、セミノーマか非セミノーマかが明らかになります。
その後の治療法は、セミノーマと非セミノーマ、病期などによって異なります。

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セミノーマの治療

ステージI

セミノーマで転移がみられないステージIの治療では、(1)経過観察(2)放射線治療(3)化学療法、という3つの選択肢があります。

多くの場合は、無治療のまま、経過を観察します。不必要な治療や副作用を避けられる一方、20%程度に再発がみられることから、指示された間隔で腫瘍マーカーやCT検査を受ける必要があります。また、再発しても、その時点で化学療法を開始することで、ほぼ完治が可能です。

予防的な治療法として、再発を予防する目的で、手術後に化学療法を行うこともあります。化学療法では、抗がん剤のカルボプラチン単剤で、1から2コース(1コースは約3週間)の治療を行います。

二次がんの発生リスク、一時的な不妊リスク、心血管系合併症リスク等を勘案し、国立がん研究センター東病院、国立がん研究センター中央病院では放射線治療はほとんど行っていません。

ステージII以上

セミノーマでは、放射線治療が選択肢の一つであるため、ステージIIAの比較的小さなリンパ節転移に対して行われることがありますが、日本では放射線治療より化学療法が主流となっています。

ステージIIA、ステージIIB以上の治療では、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの3種類の抗がん剤を用いるBEP療法の3コースが主に推奨されています。IIAだけは、放射線治療も考えられますが、ステージIと同じ理由で化学療法が主体となっています。ただし、ブレオマイシンは、間質性肺炎や肺線維症を少ないながら起こすリスクがあるため、高齢者やヘビースモーカーの方では、ブレオマイシンを抜いたEP療法を4コース施行することもあります。

どんな抗がん剤をどのくらいの期間投与するかは、リスクレベルによって異なり、予後良好群ならBEP療法3コース、またはEP療法4コース、予後中間群ならBEP療法4コースが推奨されています。同じの理由でブレオマイシンが使えない場合には、EP療法4コースでは不十分であるため、イホマイドというお薬を加えたVIP療法を施行することもあります。

なお、セミノーマの場合、抗がん剤投与後の残存腫瘍(抗がん剤治療の後に、腫瘍マーカーは正常値まで減少したにもかかわらず、腫瘍のかたまりが残ることがある)が3cm以下ならば、経過観察でよいとされています。 

非セミノーマの治療

ステージI

非セミノーマのステージIは、脈管侵襲(みゃっかんしんしゅう)*の有無で治療法が異なります。

脈管侵襲がない場合は、経過観察または後腹膜リンパ節郭清*、脈管侵襲がある場合はBEP療法1-2コース、経過観察または後腹膜リンパ節郭清を行います。非セミノーマでは、放射線が効かないため、抗がん剤による化学療法が第一選択となります。

ステージII以上

ステージIIA以降では、BEP療法またはEP療法を3から4コース行い、腫瘍マーカーの値が正常化するのを待って、可能な限り残存腫瘍を切除することがすすめられています。化学療法は、エトポシド、イホスファミド、シスプラチンによるVIP療法を4コース行うこともあります。腫瘍マーカーが陰性化後に、リンパ節郭清を行い、病理検査で確認しています。

病期が進行し、化学療法でも腫瘍マーカーが陰性化しないときは、難治性と判断されます。難治性の精巣がんに対しては、救済化学療法*といって、前回使用したものとは別の抗がん剤による化学療法や大量化学療法による治療が試みられます。 

【用語解説】

*脈管侵襲:がん細胞が血管またはリンパ管に入り込むこと
*救済化学療法:治療の効果が得られない場合や再発・再燃した場合に、前回使用したものとは別の薬剤を用いて行う化学療法 

手術について

精巣がんは進行が早いため、まず精巣の摘出手術(高位精巣摘除術*)を行い、その後に病理検査で確定診断が行われます。化学療法後に、化学療法の治療効果判定、および再発・転移の予防目的で、後腹膜リンパ節(お腹の大血管周囲のリンパ節)を摘出する手術(後腹膜リンパ節郭清術*)をすることもあります。

【用語解説】

*高位精巣摘除術:基本的に、精巣がんのすべての患者さんに行われる手術で、治療前の病理組織診断も兼ねています。鼠径部を切開し、がん細胞が手術によって散らばらないよう、精巣に向かう血管を結紮(糸で縛って固定)してから、がんのある側の精巣、精巣上体、精索(精巣に栄養を送る血管、神経、精管などを覆う索状組織)をまとめて摘出します。精索は腹腔内につながっているため、腹腔に近い高い部分を切除します。

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*後腹膜リンパ節郭清術:精巣がんが転移しやすい腹部の大きな血管の周囲にあるリンパ節を切除するもので、開腹手術が一般的です。すでに転移が起きているII期以上の場合は、化学療法後、腫瘍マーカーの値が正常になってから行われます。切除した組織を検査して、その後、どんな治療が必要かを判断します。I期の非セミノーマの治療では、再発予防のためにこの手術を行うこともあります。

放射線治療について

セミノーマには放射線治療が有効です。再発予防やリンパ節転移などに対して放射線治療が行われる場合もありますが、現在、日本では化学療法が主流であり、放射線治療の頻度は減少しています。

化学療法について

精巣がんは化学療法の効果が高く、転移がある場合も、化学療法によって根治が期待できます。

初期治療として行う化学療法では、単剤のほか、

  • 複数の抗がん剤を組み合わせて投与するBEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン併用療法)
  • EP療法(エトポシド、シスプラチン併用療法)
  • VIP療法 (エトポシド、イホスファミド、シスプラチン併用療法)
    などもよく行われています。

また、初期治療で十分な結果が得られなかった場合には、残った腫瘍を外科切除し、病理結果で生きているがん細胞が認められた場合は化学療法を追加します。

また、腫瘍マーカーが陰性化しない場合は、救済化学療法として、TIP療法(パクリタキセル、イホスファミド、シスプラチン併用療法)などが行われ、高い治療成績が得られるようになっています。 

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