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国立がん研究センター 中央病院

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Message代表者挨拶

2019年4月1日

企業、患者さんとの協働で希少がんの個別化ゲノム医療を実現

山本 昇 (やまもと のぼる)

 MASTER KEYプロジェクトのホームページへお越しいただきありがとうございます。研究代表者の山本昇です。MASTER KEYプロジェクトは、2017年5月に国立がん研究センター中央病院・藤原康弘(元・企画戦略局長・研究担当副院長, 現・PMDA理事長)を研究代表者として開始され、2019年4月より、私がこの重責を引き継ぐ形となりました。このプロジェクトはアカデミア(医療機関)、製薬企業、患者さんとの協働で成り立っており、多くの方と協力して、希少がん患者さんの抗がん剤へのアクセス機会を増大させ、より良い医療を提供すると共に、希少がん領域の創薬開発も振興することを目指しています。

 具体的には、MASTER KEYプロジェクトは、希少がんのレジストリ研究とバスケット試験から構成されます。レジストリ(疾患登録)研究では、希少がん患者さんの診療情報やそれぞれのがんが有する遺伝子異常の情報、治療の効果を含む網羅的なデータベースを構築することを目的としています。また、バスケット試験とは、標的とする遺伝子変異のある希少がんを有する患者さんであれば、がんの種類に関係なく参加できる臨床試験のことを指し、このプロジェクトでは多くのバスケット試験を実施することで、これまで治療の機会が限られていた希少がん患者さんに対して、臨床試験への参加を通じたより多くの治療の機会を提供することを目的としています。

 では、なぜ希少がんが重要なのでしょうか。我が国では、年間発生数が人口10万人あたり6例未満の“まれ”な“がん”、“まれ”であるがゆえに診療・受療上の課題を有するがんのことを“希少がん”と総称し、その種類は200にも及ぶとされています。個々の希少がん患者さんの数は非常に少ないですが、すべての希少がん患者さんの数を合計すると、がん患者さん全体の20%も占めるといわれております。しかし、希少がんの患者さんは多いものの、個々の希少がんは”まれ”であるがゆえに、アカデミアや製薬企業の希少がんに対する診断法・治療法の開発は世界中で遅れているのが現状です。国立がん研究センターは、このような希少がんを巡る各種の難題に立ち向かうことを使命のひとつとしており、2014年6月に希少がんセンター(川井章 センター長)を開設し、“希少がんホットライン ”、“希少がん Meet the Expert”などの先進的な試みを通じて希少がん患者さんの診療と研究に邁進してきました。

 そのような中、当院でのゲノム医療の推進(TOP-GEAR(トップギア)プロジェクト)および質の高い臨床試験・治験の実施(臨床研究支援部門)により培ってきたノウハウを希少がん領域に応用し、希少がんの診断法と治療法の開発を強力に推進するために、アカデミア(医療機関)、製薬企業、患者さんと協働した治療開発基盤として構築したのが、このMASTER KEYプロジェクトです。

 今後、共同研究機関・医療機関を増やすとともに、患者支援団体とも緊密な連携し、リキッドバイオプシー(血液中の腫瘍細胞DNA断片から、遺伝子異常を診断する手法)も導入することで、日本全国にMASTER KEYプロジェクトを普及させ、全国の希少がん患者さんへ迅速かつ、患者さんにあった個別化医療を提供できる社会の実現を目指して、さらに研究を推し進めて参る所存です。

 MASTER KEY プロジェクト
研究代表者 国立がん研究センター中央病院 山本 昇