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技術支援内容

ゲノム解析を実施する前に必要な準備

 

目次

  1. RNA サンプルの品質検定(Sample QC)
    解析に必要な RNA サンプル量
    全トランスクリプトーム解析プラットフォームの紹介
  2. シークエンスライブラリーの品質検定 ( Library QC )

  3. DNAサンプルの品質検定(Sample QC)
    全ゲノム・エクソームシークエンス解析プラットフォームの選定

(1) RNA サンプルの品質検定(Sample QC)

 研究所臨床ゲノム解析部門では、全トランスクリプトーム解析、WTS (RNA-seq) を実施しています。RNA の質や量によって、プラットフォームを選択しているため、RNA サンプルの品質検定の評価は重要です。

 手順は下記の通りに進めています。

依頼された連結組織標本より抽出した RNA の濃度と品質の確認

  RIN値 と DV200 を Agilent TapeStation または Bioanalyzer を用いて確認しています。詳しくは下記のサイトをご覧ください。
 https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1003805

解析に必要なRNA量や品質で解析プラットホームを選定

  ただし、症例間で比較する場合、統一したプラットホームを用いた解析が必要となりますのでご注意ください。

FFPE (ホルマリン固定)標本を用いた WTS (SMART-seq) 解析は可能

  FFPE 由来 RNA でも、DV200 が 0.6 以上であれば SMART-seq による解析が可能です。また、0.3 以上であれば Exome RNA-seq による解析が可能です。

解析結果の返却

  依頼された検体の受領から結果の返却まで 4~6 週間かかります。


DV200 とは、200ヌクレオチド以上のRNA断片の割合のことをいいます。詳しくは下記のサイトをご覧ください。
 https://www.agilent.com/en/promotions/dv200-determination 

sampleRNA_quality_report.png

screenshot_2022-07-14_154535_TapeStation_analysis.png


解析に必要な RNA サンプル量

解析委託時に必要となる RNA 量と品質

・PolyA RNA-seq: 4 ug以上( 200 ng/uL以上、20 uL以上、RIN値 6 以上)
→Input 量は 100 ng/uL、11 uL (1.1 ug)となります。

・RiboZero Plus RNA-seq: 2 ug以上( 80ng/uL以上、25 uL以上、RIN値 4 以上)
→Input 量は 50 ng/uL、 10 uL ( 500 ng )となります。
◎ただし、100 ngまで全量をinput量とすることで、解析を実施可能です。しかしながら、ライブラリQCで基準を満たさない場合は、シークエンスのランは行いません。

・SMART-seq: 50 ng以上( 10 ng/uL 以上、10 uL以上、DV200 0.6 以上 )
→Input 量は凍結由来RNA が 1.1 ng/uL、10 uL ( 10 ng )、
FFPE由来RNA (DV200 < 0.6 の場合)が 5 ng/uL、10 uL ( 50ng ) となります。

◎RIN値が 4 以下の場合は、SMART-seq を推奨します。

・Exome-RNA-seq
 DV200 が0.6以下であっても、Exome RNA-seqによる解析が可能な場合があります。個別にご相談ください。



全トランスクリプトーム解析プラットフォームの紹介

研究所臨床ゲノム解析部門では、4つの全トランスクリプトーム解析を実施しています。RNAの質や量によって、プラットフォームを選択しています。 

(注意事項)解析対象集団内のプラットフォームは統一する必要があります。 

 

★PolyA RNA-seq(高品質RNA) 

Total RNAから3’末端に付加するpolyA RNAを回収し、逆転写反応で合成したcDNAをシークエンスライブラリとして、シークエンスを実施します。 

 

使用する試薬並びに機器(受託企業) 

TruSeq Stranded mRNA Library Prep (Illumina)  

IDT for Illumina - TruSeq RNA UD Indexes (Illumina)  

Agilent XT-Auto System (Agilent technologies)  

 

使用する試薬並びに機器(臨床ゲノム解析部門) 

TruSeq Stranded mRNA Library Prep (Illumina) 

TruSeq RNA Single Indexes Set A/B (Illumina) 

 

下記の手順に従って、ライブラリー調製を実施しています。 

Sample QC にて RNA の質が担保されていることを確認した後、PolyA + RNA を断片化し、この RNA 断片を鋳型として逆転写反応を行い、一本鎖 cDNA を合成します。この一本鎖 cDNA を鋳型として、dUTP を取り込ませた二本鎖 cDNA を合成します。得られた二本鎖 cDNA の両末端を平滑化・リン酸化処理した後、3 ′ -dA 突出処理を行い、Index 付きアダプターを連結します。アダプターを連結した二本鎖 cDNA を鋳型とし、dUTP を持つ鎖を選択的に増幅しないポリメラーゼにより PCR 増幅を行い、シーケンスライブラリーとします。 



★RiboZero Plus RNA-seq(低品質RNA) 

Total RNAからリボソーマルRNAを除去し、逆転写反応で合成したcDNAをシークエンスライブラリとして、シークエンスを実施します。 

 

使用する試薬並びに機器 

TruSeq Stranded Total RNA Library Prep Gold (Illumina)  

RNAClean XP Beads (beckmancoulter 

IDT for Illumina - TruSeq RNA UD Indexes (Illumina)  

Agilent XT-Auto System (Agilent technologies)  

 

下記の手順に従って、ライブラリー調製を実施しています。 

解析検体より rRNA を除去した後、断片化します。この RNA 断片を鋳型として逆転写反応により一本鎖 cDNA を合成します。この一本鎖 cDNA を鋳型として、dUTP を取り込ませた二本鎖 cDNA を合成します。得られた二本鎖 cDNA の両末端を平滑化・リン酸化処理した後、3 ′ -dA 突出処理を行い、Index 付きアダプターを連結します。アダプターを連結した二本鎖 cDNA を鋳型とし、dUTP を持つ鎖を選択的に増幅しないポリメラー ゼにより PCR 増幅を行い、シーケンスライブラリーとします 

 

★SMART-seq Stranded 

Total RNAからランダムプライマーを用いてcDNAを合成した後、リボソームcDNAの切断し、シークエンスライブラリとして、シークエンスを実施します。 

 

使用する試薬 

SMART-Seq Stranded Kit 

SMARTer RNA Unique Dual Index Kit 

 

下記の手順に従って、ライブラリー調製を実施しています。 

Total RNA に対して、ランダムプライマーを用いて cDNA を合成し、SMART(Switching Mechanism At 5’ End of RNA Template)法により 1st strand cDNA の末端に特定の配列を付与します。引き続き、特定配列 を利用し、検体ごとに異なるタグ配列を有する Index 付きのプライマーを用いて PCR により増幅します(PCR:18-19サイクル)。得られた PCR 産物を、AMPure XP(ベックマン・コールター社)を用いた磁気ビーズ法にて精製し、scZapRscR-Probe により、リボソーム cDNA の切断を行います。最後に、アダプターを認識するプライマーを使用して未切断 cDNA を PCR 増幅し、シーケンスライブラリーとします。 

 

★Exome RNA-seq(低品質RNA) 

Total RNA逆転写して合成したcDNAから、全エクソンシークエンス用のベイトを用いて遺伝子配列をキャプチャーしてシークエンスライブラリーを作製し、シークエンスを実施します。 

 

使用する試薬並びに機器 

SureSelect XT HS2 RNA 試薬キット (index primer pairs 1-96) (Agilent technologies) 

SureSelect XT Human All Exon V7 キャプチャライブラリ (Agilent technologies) 





(2) シークエンスライブラリーの品質検定 ( Library QC )

★作製したライブラリーのインサートサイズをAgilent TapeStationまたはBioanalyzerで確認します。 

サンプルDNAの品質検定の例 

作製されたシーケンスライブラリーの品質を Agilent 2100 Bioanalyzer を用いて測定します。なおライブラリーはアダプターを付加しているため、ピークサイズからアダプターサイズ(約 100base)を除いたサイズがクローニングサイズになります。

2022-06-24_162810.png




NovaSeq 6000によるシークエンス解析 

物理的に数百baseに断片化したDNAからライブラリーを作製してフローセルに結合させ、Sequencing by Synthesis法による2色蛍光検出により塩基配列を一挙に解析します。NovaSeq 6000 S4試薬の場合、1フローセルあたり約2,400 Gbase、および約160億リードの塩基配列データの取得が可能です。150bp paired end sequenceを行います。 






(3) DNAサンプルの品質検定(Sample QC)

 研究所臨床ゲノム解析部門では、全ゲノム・エクソームシークエンス解析を実施しています。DNAの質や量によって、プラットフォームを選択しています。RNA-seqとは異なり、一般的に、異なるプラットフォームで得られたデータであっても比較解析を行うことができます。 

アガロースゲル電気泳動結果の例

agarosegel.png

 

★送付された検体の二重鎖DNA濃度をThermo Fisher Qubitなどで確認します。また状況によっては、アガロースゲル電気泳動で高分子DNAを確認します。 

★提供いただくDNA量は、 以下の通りです。

WGSPCR Free: 4 ug (80 ng/uL, 50 uL以上)、2ug (80 ng/uL, 25 uL以上) 

WGSTagmentation: 1 ug (50 ng/uL, 20 uL以上) 

WES:1 ug (20 -80 ng/uL, 50uL以上) 

サンプルDNAの品質検定の例

samplrDNA_quality.png
アガロースゲル電気泳動結果の例
(レーンの左から λ-EcoT14 I digest, DNA01 → 品質不良, DNA02, DNA03)

agarosegel_result_example.png

  FFPEFormalin-Fixed Paraffin-Embedded由来RNAでも、WES実施可能です。ただしDNA断片化など、ある一定のDNAサンプルの品質が担保されているかを確認する必要があります。別途ご相談をお願いします 


全ゲノム・エクソームシークエンス解析プラットフォームの選定

 〇WGS( PCR Free ライブラリーの作製 )
 超音波処理による物理的な断片化を行い、さらに末端平滑化後、アダプターを付けてシークエンスを行います。

・Input量:2.2 ug (40 ng /uL 55 uL) 550bp insert size 

・Input量:1.1 ug 20 ng/uL 55 uL)350bp insert size 


 使用する試薬並びに機器

TruSeq DNA PCR-Free Library Prep Kit (Illumina)  

IDT for Illumina - TruSeq DNA UD Indexes (Illumina)  

Agilent XT-Auto System (Agilent technologies)  

 下記の手順に従って、ライブラリー調製を実施しています。 

 Sample QCをパスした検体を、アコースティックソルビライザー Covaris (コバリス社) を用いて物理的に数百 bp に断片化します。断片化した DNA の両末端 を平滑化・リン酸化処理した後、Agencourt AMPure XP(ベックマン・コ―ルター社) による DNA のサイズ選別を行います。サイズ選別された DNA に対して 3′-dA 突出末端処理を行い、index 付きアダプターを連結することで、シーケンスライブラリーとします。 

 

★WGS(Tagmentationライブラリーの作製 ) 

 Transposaseを用いタグメンテーションにより断片化並びにアダプター付加を行い、シークエンスを行います。 

・Input量:0.3 ug 20 ng/uL 15uL)350bp insert size 

 

 使用する試薬並びに機器 

Illumina DNA PCR-Free Prep Kit, Tagmentation (Illumina)  

IDT for Illumina DNA/RNA UD Indexes (Illumina)  

Agilent XT-Auto System (Agilent technologies)


 下記の手順に従って、ライブラリー調製を実施しています。 

 Sample QCをパスした検体に対して、Tagmentation付加ビーズを用いて断片化した後にIndexを付加し、磁気ビーズによりサイズ選別したものをシークエンスライブラリーとします。 

 

★WES( ライブラリーの作製 ) 

 超音波処理による物理的な断片化を行い、さらに末端平滑化後、アダプターを付けてシークエンスを行います。 

・Input量:500 ng (25 ng/uL 20 uL)

 

 使用する試薬並びに機器 

・SureSelect XT Low Input Reagents (Agilent technologies) 

・SureSelect XT Low Input Dual Index P5 Indexed Adaptors1-96 (Agilent technologies) Agilent XT-Auto System (Agilent technologies) 

 

SureSelectXT Human All Exon Kit V7 (Agilent technologies) (約48 Mb) 

Twist Comprehensive Exome Panel (約37 Mb) 

 

下記の手順に従って、ライブラリー調製を実施しています。 

Sample QCをパスした検体をアコースティックソルビライザー Covaris (コバリス社) を用いて物理的に数百 bp に断片化します。断片化した DNA の両末端を平滑化・リン酸化処理した後、3′-dA 突出末端処理を行います。末端修飾した DNA に P5 アダプターを連結した後、Index 付きプライマーを使用して PCR による増幅を行い、DNA ライブラリーとします。 




シークエンスライブラリーの品質検定(Library QC)

 ★作製したライブラリーのインサートサイズをAgilent TapeStationまたはBioanalyzerで確認します。 

サンプルDNAの品質検定の例 

作製されたシーケンスライブラリーの品質を Agilent 2100 Bioanalyzer を用いて測定します。なおライブラリーはアダプターを付加しているため、ピークサイズからアダプターサイズ(約 100base)を除いたサイズがクローニングサイズになります。 

全ゲノムシークエンス用ライブラリー調製 

(1)WGSPCR Free ライブラリー) 

レポート返却フォーマットの例 

WGSlibrary_format_1.png
(2)WGS(Tagmentation ライブラリー)
レポート返却フォーマットの例
WGS_Tagmentation_library.png
(3)WES(SureSelectXT Human All Exon Kit V7 ライブラリー)
レポート返却フォーマットの例

screenshot_WES_report_table.png
WES_SureselectXT_graph.png

NovaSeq 6000によるシークエンス解析

物理的に数百baseに断片化したDNAからライブラリーを作製してフローセルに結合させ、Sequencing by Synthesis法による2色蛍光検出により塩基配列を一挙に解析します。NovaSeq 6000 S4試薬の場合、1フローセルあたり約2,400 Gbase、および約160億リードの塩基配列データの取得が可能です。150 bp paired end sequenceを行います。

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