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腫瘍の臓器横断的分子生物学的解析・希少がんの解析

RASファミリー遺伝子のKRAS、NRAS、HRASは多くのがんの発がんに関連している代表的ながん遺伝子でありながら、いまだ有効な治療薬が一部の変異 (KRAS G12C)のみに限られている。がんをはじめとする生物学全般においてこれまであまり研究対象として注目されてこなかったサイレント変異(アミノ酸を変化させない遺伝子変異)が、KRAS Q61K変異の発がんに必須であることを発見した。この発見を契機に、KRAS, NRAS, HRASのコドンQ61周辺は、スプライシングに対して脆弱な領域であることが判明した。これらの発見をもとに、生物に元来備わっているスプライシング機構を核酸医薬で誘導することで、発がん変異を持つがん細胞だけを攻撃する新しい治療法を提唱した (図5)。また、本研究で用いたCRISPRゲノム編集を応用して融合遺伝子モデル細胞を作成し、EGFR変異肺がんの薬剤耐性機序としての融合遺伝子の克服に有効な併用療法を見出し、がんが併用療法に対してさらに獲得する様々な薬剤耐性機序を明らかにした。

 

  • 発がんに関わるKRASのサイレント変異とスプライシングを応用した新規治療01
  • 発がんに関わるKRASのサイレント変異とスプライシングを応用した新規治療_02

図 5 発がんに関わるKRASのサイレント変異とスプライシングを応用した新規治療

このほか、がん遺伝子パネル検査における腫瘍細胞含有率の評価が過大評価されやすいものの、トレーニングによってその評価が均一化することを報告した(図6)。

 

がん遺伝子パネル検査における腫瘍細胞含有率評価のトレーニングによる改善効果_2023
図 6 がん遺伝子パネル検査における腫瘍細胞含有率評価のトレーニングによる改善効果