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生体試料を用いた分子疫学研究

当部では、多目的コホート研究(NCC管轄外部サイトへリンクします)において収集・保管された末梢血(白血球DNAや血漿)を用いて、様々な分子疫学研究を行っています。その中から最近の代表的な成果を紹介します。
白血球DNAを用いた研究として、胃がんを対象にアルコール摂取量とアルコール代謝酵素の遺伝子多型との交互作用を検討した研究があります(Carcinogenesis 2015)(NCC管轄外部サイトへリンクします)。この研究から、アルコール摂取量とアルコール代謝酵素の遺伝子多型との組み合わせによって、胃がんリスクが上昇する可能性が示唆されました。このように、遺伝素因としての発がんに対する影響を検討することに加えて、環境要因との交互作用を明らかにすることで、がんの原因究明・本態解明から体質(遺伝素因)に応じたがん予防法の開発につながるエビデンスの構築を目指しています。この例は、候補遺伝子アプローチによる解析ですが、SNPチップを用いたゲノム網羅的な遺伝情報を用いた解析にも精力的に取り組んでいます。
また、血漿を用いた研究として、血中ビタミンD濃度とがんとの関連を検討した研究があります(BMJ 2018)(NCC管轄外部サイトへリンクします)。この研究から、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下し、血中ビタミンD濃度が一定のレベルを超えるとそれ以上のがん予防効果は期待できない可能性が示唆されました。このように、環境要因の曝露状況を反映するバイオマーカーを用いて発がんリスクへの影響を明らかにする研究も行っています。
新たな試みとして、遺伝情報や血漿バイオマーカー情報を用いて、個人の発がんリスクを推計する研究を行っています。大腸がんのリスクと関連する5つの要因(年齢、肥満度、身体活動度、飲酒、喫煙)に大腸がん関連遺伝子に基づく遺伝的リスクスコアを追加して10年間の罹患確率を推計したところ、確率の低い人はより低く、また高い人はより高くなる方向で、予測能の改善傾向が見られました(Cancer Prev Res 2017)(NCC管轄外部サイトへリンクします)。今後は、予測能の更なる改善を目指して、ゲノム網羅的な遺伝情報を活用した遺伝的リスクスコアの開発を継続していく予定です。
当部には、多目的コホート研究以外にも、国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究(NCC管轄外部サイトへリンクします)のように、多数の生体試料を収集・保管している研究基盤が複数整備されているため、研究のアイデアさえあれば、直ぐにでも分子疫学研究を立案・実施可能な環境にあります。また、乳がんの国際コンソーシアムであるBCAC(The Breast Cancer Association Consortium)や大腸がんの国際コンソーシアムであるGECCO(The Genetics and Epidemiology of Colorectal Cancer Consortium)など、複数の国際コンソーシアムに参画しているため、海外の研究者と共同研究を実施する機会もあります。国内の研究者から共同研究のご提案なども随時受け付けておりますので、興味のある方は  、岩崎(moiwasak●ncc.go.jp)にお問い合わせください。