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研究プロジェクト

ゲノム不安定性の誘導機構の解析

ゲノム不安定性は、染色体不安定性(CIN)とマイクロサテライト不安定性(MSI)に大別され、どちらも複製ストレスを引き金として誘導される (Yoshioka et al., Cancers 2019)。CINは殆どのがん細胞で認められ、複製ストレスに伴って生じた損傷(DSB)が“相同組換え修復(HR)で修復され難い背景”で誘導される。MSIはミスマッチ修復(MMR)欠損の背景で誘導され、同様に生じたDSBの“マイクロホモロジー介在末端修復(MMEJ)による修復間違え”に伴って誘導される (Matsuno et al., Nature Com 2019)。

ゲノム不安定性のリスク変動機構解析

ゲノム不安定性はDSBの修復異常(修復間違え)に伴って誘導される。実際、様々な修復欠損の背景で、ゲノム不安定性に伴うがんの易罹患性が示されている。しかしながら、殆どのがんはゲノム不安定性に伴う発症にも関わらず、DNA修復因子に遺伝的な異常は見当たらない。そこで我々は、『正常細胞のゲノム不安定性リスクがどの様に変動してしいるのか?』という点を明確にすることを目指し、研究を進めている。現段階までの解析からは、ゲノム不安定性リスクの上昇には、少なくとも“細胞老化”が関わっていると考えられる。

放射線に伴うゲノム不安定性リスクの促進機構解析

様々な外的ストレスがゲノム不安定性(および、これに伴うクローン進化)の促進要因になっていると考えられる。放射線損傷はそのうちの一つである。これまでに我々は、『放射線で直接に生じたDSBは修復されるが (Atsumi et al., Cell Reports 2015)、次のS期に修復され難いDSBが現れる(Minakawa et al., Genes Cells 2016)』ことを認めている 。放射線損傷が促進要因となって誘導されるゲノム不安定性は、“放射線発がん”と“がん細胞の放射線治療抵抗性”に影響していると考えられる。現在、その両方への影響を解析している。

ゲノム安定性を作用点としたがん予防法の研究

殆どのがんはゲノム不安定性に伴って発症している。我々は、これらのがんを対象とし、ゲノム安定性の保持・制御を作用点とした予防法の創出を目指している。ゲノム不安定性リスクの上昇機構には不明な点も多いが、これまでの解析で、『細胞老化に伴って高リスク状態が誘導される』ことが示されている (Yoshioka et al., Cancers 2019)。これに対し、『ポリフェノールを処理(摂取)した背景では“ゲノム安定性保持”を促進する効果が現れ、これに伴ってがんの予防効果が現れる』ことが示されている(Matsuno et al., Scientific Rep 2020)。

ゲノム安定性保持の促進機構の解析、効果の検証

ゲノム安定性を保持する効果は様々なポリフェノールで認められるが(Matsuno et al., Scientific Rep 2020)、その作用点は明確でない。現在、作用機序の解明を目指し、解析を進めている。また、ポリフェノール等の成分・物質の効果・影響は、動物と細胞モデルを用いて検証している。

ゲノム安定性の保持効果の促進物質のスクリーニング

ゲノム不安定性の高リスク状態では、DNA損傷の蓄積など、様々な特徴が明確になってきた。そこで、これらのゲノム状態変化を指標とし、ゲノム安定性保持に貢献する成分・物質のスクリーニングを実施している。また、その効果は細胞と動物モデルを用いて検証している。最終的に、がん予防の“機能性物質(成分)ゲノム・スタビライザー(Genome stabilizer)”の創出を目指している。

ゲノム不安定性リスクを指標とした超早期診断法開発

殆どのがんは、ゲノム不安定性を引き金として誘導されていると考えられる。このため、ゲノム不安定性の高リスク状態は“がんのリスクレベルが高い状態”と相関していると考えられる。そこで、がんの超早期診断(リスク診断)法の開発を目指し、マーカーとなるゲノム不安定性の高リスク状態(および、これに伴って現れる影響)を明確にすることを目指している。