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がんワクチン ~ペプチド/mRNAワクチン~

  1. ワクチンについて
  2. 治療用がんワクチン
  3. がんペプチドワクチン
  4. mRNAがんワクチン

1. ワクチンについて

インフルエンザワクチンや五種(三種)混合ワクチン、BCGワクチンなど、様々な「ワクチン」を聞いたことがあると思います。ワクチンの基本は「病気の元になる様々な異物(=病原体)に対して免疫反応を(前もって)活性化させる」ことです。この“免疫反応を活性化させる”ためには“きっかけ”が必要になります。この“きっかけ”が【目印=抗原】になります。昔はこの“きっかけ”を作ることが出来ず、少量の病原体そのものを使用しており、安全性が低かったこともありました。現在では科学の発達により、より安全な【抗原】が作られています。

2. 治療用がんワクチン

がんワクチンには大きく分けて、(1)予防用ワクチンと(2)治療用ワクチンの2種類が存在します。(1)はHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンやHBV(B型肝炎ウイルス)ワクチンで、ウイルスが原因で発症するがんに対する予防的ワクチンになります。(2)はすでに発症したがんに対して免疫を活性化させて治療や転移、再発を抑えることを目的としています。私たちは、(2)に対して、以下の2通りの方法について研究を進めて来ました。

3. がんペプチドワクチン

免疫細胞が活性化するための「抗原」として「ペプチド」を使用したワクチンがペプチドワクチンになります。ペプチドはタンパク質の最小単位であるアミノ酸が数個~数十個つながったもの(結合したもの)のことです。がん細胞に限らず、正常な細胞も、作り出したあらゆるタンパク質を自分で分解して、新しくタンパク質を作るときの材料にします。SDGsを実行しているわけです。このタンパク質を分解する過程で生じるペプチドを細胞の表面に出現させます。免疫細胞はこれをチェックして、異常があれば殺して、私たちの体が正常であることを維持しています。がんペプチドワクチンは人工的に作った「がん細胞に存在する抗原タンパク質が分解されたごく一部のペプチド」を使ったワクチンになります。

私たちは、共通がん抗原であるタンパク質、GPC3(グリピカン3)から作った抗原ペプチドを使った臨床試験を行いました。その結果、進行がんでも効いた症例を複数経験し、再発予防には有効な可能性を示すことができています。しかし、新しい治療法として薬にすることは出来ませんでした。「ペプチドワクチン1種類では、そのペプチドに反応するT細胞だけが誘導されて、そのペプチドを提示しているがん細胞は殺せるかもしれないが、提示していないがん細胞は殺せないので、効果が限定的になってしまう」という点と、そのペプチドが結合するHLA(白血球の血液型のようなもの)をもっている人にしか使えないと言う欠点がありました。

がんペプチドワクチン

4. mRNAがんワクチン

mRNAワクチンは「抗原」としてmRNAを使って、ワクチンをすることです。mRNAはタンパク質の設計図です。したがって、mRNAをワクチンに使うということは体の中(細胞の中)でタンパク質を作るということになります。mRNAには寿命があるため、ずっとタンパク質を作ることは出来ません。しかしながら、寿命が尽きるまでは、何回でもタンパク質を作ることが出来ます。また、タンパク質の「ごく一部のペプチド」が『抗原ペプチド』になりますが、タンパク質全体の中にはあらゆるHLAに提示されうるペプチド配列がたくさん存在します。つまり、1つのmRNAからタンパク質が作られ、1つのタンパク質からたくさんの「抗原ペプチド」が出来るため、いろんなT細胞が誘導され、またいろんな抗体もつくられて、非常に効率の良いワクチンとなります。現在、私たちは、共通がん抗原タンパク質の設計図であるmRNAをワクチンとして使って、複数のがん抗原タンパク質を標的にした多様なキラーT細胞が活性化される治療法を開発中です。

mRNAがんワクチン