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一般の方向け解説ページ

はじめに

免疫療法開発分野 分野長の中面です。私は若いころは外科医でした。肝がんや膵がんを手術だけで治すことは難しく、悔しい思いを何度もしました。その経験から、私は腫瘍免疫学者に転身しました。

肝細胞がんなどで多く存在しているがん抗原、GPC3を標的にしたペプチドワクチンを開発して2007年から2016年まで臨床試験を行いました。進行がんでも、がんのかたまりが消えたり、小さくなるような結果を示した患者さんはいらっしゃいましたが、その頻度は5%未満でした。

2018年のノーベル賞の受賞でTVをはじめ各種メディアで紹介されることが多くなった免疫チェックポイント阻害剤は、進行がんでも20%程度の奏効率が認められ、新しい免疫治療薬として承認され、多くの患者さんに投与されています。

ペプチドワクチンは明らかな有効性を証明することができず、未だに薬になったものはありません。しかし、手術後の再発予防効果においてはペプチドワクチンが効いている可能性も示唆されました。小児がんの再発と寛解を繰り返していた7人の患者さんは全員ペプチドワクチンの投与のみで10年以上無再発で現在も元気です。そのうちの1人の女の子は、5回も肺転移を繰り返し、そのたびに手術していたのが、ペプチドワクチンを投与してからまったく再発しなくなり、今も健康状態でこの春に大学に進学しました。彼女の採血中のリンパ球からがん細胞を殺すキラーT細胞を取り出して、そのT細胞受容体(TCR)という分子を使って、ほかの患者さんも救うためのT細胞療法も開発しています。また、肝細胞がん術後の再発予防効果を検証する臨床試験で、GPC3が存在するがんにおいては、術後にペプチドワクチンを投与した群では長生きできる可能性が示された一方で、GPC3が存在しないがんが再発した患者さんもいらっしゃいました。つまり、GPC3を狙った免疫療法は、GPC3が存在しないがんには無力なのです。すなわち、『がんは全滅させないと再発するが、1種類の抗原を標的とした免疫療法では、がん細胞を全滅させることは難しい』ということを再認識しました。

そこで私たちは、様々な臓器のがんに広く存在し、正常組織では無い、あるいは極めて少ない抗原を見出す研究を進め、10種類集めることに成功しました。ここで紹介する研究は、この発見を元に進めている免疫療法となります。

免疫療法開発分野 分野長
中面 哲也

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