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TCR-T細胞療法 ~T細胞受容体遺伝子改変T細胞療法~

  1. TCR-T細胞って何?
  2. メリット・デメリット

1. TCR-T細胞って何?

前述のCAR-T細胞と同様に、TCR-T細胞も治療用に開発されたT細胞です。 “CAR”の代わりに“TCR”という名前がついていますが、こちらは「T Cell Receptor:T細胞受容体」を意味しています。T細胞はが元々何らかの抗原をつかむ“腕=受容体”を持っています。これを、「強制的に『がん抗原をつかむ腕』になるように改良したT細胞」がTCR-T細胞であり、この細胞を使用した治療法がTCR-T細胞療法になります。 “人工的にがん抗原をつかむ腕”を持ち、がんを攻撃するように改良した点はCAR-T細胞と同じです。

現在、GPC3のペプチドワクチンでがんが治った小児がん患者さん(10年以上の間再発がない)のT細胞からTCRを複製して、TCR-T細胞をつくり、これを使った臨床試験の準備をしています。

TCR-T細胞1

2. メリット・デメリット

TCR-T細胞療法は、CAR-T細胞療法と同様に「がん細胞を殺すために生み出された細胞」を使用します。そしてCAR-T細胞にないメリットとして、「がん抗原であるタンパク質が『がん細胞の表面になくても、“あれば”』がん細胞を殺せる」という点です。“CAR”と違い、“TCR”は細胞の表面に現れる“がんペプチド抗原”をつかみます。がんペプチドワクチンの項目で少し触れましたが、タンパク質の一部分はペプチドとしてがん細胞の表面に出現します。この表面に出てきたペプチドをTCRはつかむため、抗原タンパク質ががん細胞のどこにあるかには影響を受けず、タンパク質が作られる限り、細胞を殺すことが可能です。つまり、10種の共通がん抗原全てがTCR-T細胞の目印になります。

デメリットとしては、CARに比べて結合力が弱いことです。大部分のCARで使用される部品である抗体に比べ、TCRは「1000~100万倍弱い」と言われています。CARも人工的なTCRも作るときの加工によって結合力はどちらも落ちますが、それでもTCRの方が「100~1000倍弱い」と言われます。もちろん、“腕”は一本ではないので何本も使って抗原ペプチドをつかみ、がん細胞と接触して殺しますが、抗原ペプチドが少ない場合などは殺しづらくなります。また、HLAが合わない人には投与できません。

TCR-T細胞2

どちらのT細胞療法にも強みと弱点があります。私たちはこの弱点を克服するために、2つのT細胞療法を組み合わせる方法(カクテルT細胞療法)などを含め、検討を進めています。

TCR-T細胞3