トップページ > 各部紹介 > 行動科学研究部 > 研究プロジェクト > 健康情報についての全国調査(INFORM Study) > オンライン健康情報探索およびSNS利用に関連する慢性疾患と社会人口統計学的特性:日本人の代表サンプルによる横断調査

オンライン健康情報探索およびSNS利用に関連する慢性疾患と社会人口統計学的特性:日本人の代表サンプルによる横断調査

更新日 : 2023年11月6日

背景

高齢化社会において、慢性疾患の悪化は患者や医療システムの負担を増大させます。FacebookやYouTubeなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を介した健康情報を含むオンライン健康情報の活用は、インターネット利用者の慢性疾患の自己管理や健康増進に重要な役割を果たすと考えられます。

 

目的

本研究では、インターネットを介して慢性疾患の自己管理に必要な信頼できる情報へのアクセスを促進する戦略を改善するため、オンラインでの健康情報探索とSNS利用に関連する慢性疾患を特定しました。また、健康のためにインターネットを利用する障壁に直面している集団を特定するため、オンライン健康情報探索およびSNS利用に関連する特徴を検討しました。

 

方法

2020年に自記式質問票を用いて日本人の代表サンプルに対して実施した横断郵送調査「INFORM Study 2020」のデータを用いました。従属変数は、オンラインでの健康情報探索とSNS利用としました。オンラインでの健康情報探索は、健康や医療情報を探すためにインターネットを利用したかどうかという質問への回答で評価しました。SNS利用は、「SNSへの閲覧」「SNSでの健康情報の共有」「オンライン日記やブログへの書き込み」「YouTubeでの健康関連動画の視聴」の4つの質問への回答で評価しました。独立変数は8つの慢性疾患としました。その他の独立変数は、性別、年齢、教育歴、就労、配偶者の有無、世帯収入、ヘルスリテラシー、自己申告による健康状態としました。すべての独立変数で調整した多変量ロジスティック回帰モデルを実施し、慢性疾患やその他の変数とオンラインでの健康情報探索やSNS利用との関連を調べました。

 

結果

最終的な分析対象は、2481人のインターネット利用者でした。分析対象者のうち、高血圧または高脂血症、慢性肺疾患、うつ病または不安障害、がんの既往歴がある人の割合は、それぞれ24.5%、10.1%、7.7%、7.2%でした。オンラインでの健康情報探索のオッズ比は、がんの既往歴のある人ではそうでない人に比べて2.19(95%CI 1.47-3.27)、うつ病や不安障害の既往歴がある人ではそうでない人に比べて2.27(95%CI 1.46-3.53 )でした。さらに、YouTubeでの健康関連動画の視聴のオッズ比は、慢性肺疾患の既往歴がある人ではそうでない人に比べて1.42(95%CI 1.05-1.93)でした。女性、若年、高学歴、ヘルスリテラシーの高さは、オンラインでの健康情報探索やSNS利用と正の相関関係がありました。

 

結論

がん患者に対しては信頼できるがん関連情報を提供するウェブサイト、慢性肺疾患患者に対しては信頼できる情報を提供するYouTubeへのアクセスを促進する戦略が有用であると考えられました。さらに、男性、高齢者、教育歴の低い人々、ヘルスリテラシーの低い人々がオンライン健康情報にアクセスしやすいように、オンライン環境を改善することが重要です。

 

発表論文

Mitsutake S, Takahashi Y, Otsuki A, Umezawa J, Yaguchi-Saito A, Saito J, Fujimori M, Shimazu T, INFORM Study Group. Chronic Diseases and Sociodemographic Characteristics Associated With Online Health Information Seeking and Using Social Networking Sites: Nationally Representative Cross-sectional Survey in Japan. J Med Internet Res. 2023 Mar 2:25:e44741. doi: 10.2196/44741.