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7年間のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的な勧奨差し控えのもとでの、日本人成人におけるHPVの認知と知識についての年齢、性別、社会経済状況による格差:INFORM Study 2020

更新日 : 2023年11月6日

背景

2013年のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の積極的勧奨差し控えの結果、HPVワクチンの接種割合は低迷しています。HPVワクチン接種を行うために、HPVやHPVワクチンに関する認知・知識は重要とされていますが、日本人におけるHPVの認知と知識に関するデータは限られています。本研究では、積極的勧奨停止が7年間継続していた2020年の全国代表サンプルによる調査データをもとに、年齢、性別、社会経済状況(教育歴、収入、職種)によって、HPVに関する人々の認知と知識に格差が観察されるのかを検討しました。

 

方法

健康情報についての全国調査(INFORM Study 2020)では、郵送によるアンケート調査を実施しました。本研究の分析では、回答者のうち20歳から59歳の1,998人を対象としました。1)HPVについて聞いたことがあるか(HPVの認知)、2)HPVが子宮頸がんの原因であると思うか(HPVの知識)、3)HPVワクチンの子宮頸がん予防の有効性に関する正しい理解があるのか(HPVワクチン有効性の知識)について、関連する要因を分析しました。

 

結果

性別に関しては、女性が男性よりHPVの認知とHPV・HPVワクチン有効性の知識の割合が2倍以上高いことが示されました。33.9%(女性:47.5%、男性:21.0%)がHPVを認知しており、21.4%(女性:34.1%、男性:9.5%)にHPVの知識がありました。さらに、25.0%(女性:33.6%、男性:16.8%)にHPVワクチン有効性の知識がありました(図)。女性では、50~54歳は20~24歳よりも、高学歴の方は低学歴の方よりも、HPVを認知している割合が高いことが示されました。また、高学歴の女性の方が低学歴の女性よりもHPVワクチンの有効性の知識を持つ割合が高いことがわかりました。

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考察

日本ではHPVに関する認知やHPV・HPVワクチン有効性の知識を持つ人の割合が低いことが判明しましたが、これは積極的な勧奨が停止されていたことによる可能性があります。また、年齢、性別、社会経済状況によってHPVの認知と知識に格差があることが確認されました。2022年からのHPVワクチンの積極的勧奨再開にあたって、HPVの認知とHPV・HPVワクチンに対する知識が不足している集団に的を絞った取り組みを実施することが不可欠であると考えられます。

 

発表論文

Terada M, Shimazu T, Saito J, Odawara M, Otsuki A, Yaguchi-Saito A, Miyawaki R, Kuchiba A, Ishikawa H, Fujimori M, Kreps GL, INFORM Study Group. Age, gender and socioeconomic disparities in human papillomavirus (HPV) awareness and knowledge among Japanese adults after a 7-year suspension of proactive recommendation for the HPV vaccine: A nationally representative cross-sectional survey. Vaccine. 2023 Oct 20:S0264-410X(23)01207-0. doi: 10.1016/j.vaccine.2023.10.024. Online ahead of print.