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国立がん研究センター

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食道がんの病気について

最終更新日:2023年6月15日

食道がんとは?

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食道は、のど(咽頭)と胃の間をつなぐ細長い管状の臓器で、体のほぼ中心部にあります。部位によって、口側から、頸部食道、胸部食道、食道胃接合部領域と呼ばれています。また、食道の壁は、内側から外側に向かって、粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4層から構成されています。

食道の役割は、口から食べた食物を胃に送ることで、食物が通りやすいよう、食道の粘膜からは粘液が出ています。飲み込んだ食物は、食道の壁を作っている筋肉が、上から下に向かって収縮を繰り返す(蠕動(ぜんどう)運動)ことで、胃に送り込まれます。胃内の食物が逆流するのを防ぐのも食道の役割です。しかし、食道には胃や腸のような消化機能はなく、食物の通り道にすぎません。

食道がんは、食道の粘膜にある細胞ががん化することで発症します。日本人の食道がんでは、食道の中央付近(胸部中部食道)に発症するケースが約半数、次いで胸部下部食道、胸部上部食道の順に多く、食道胃接合と頸部食道にも発生します。

食道がんは、食道内面を覆っている粘膜から発生し、食道内にいくつもできることがあります(多発がん*)。組織型(顕微鏡で見たときのがんの形)は、日本人の9割近くが扁平上皮がん*ですが、近年は、逆流性食道炎(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)に関連したバレット食道がんなどの腺がんも増加しています。

食道の粘膜から発生したがんは、深層(外側)へと広がっていきます。食道の周囲には気管や肺、大動脈、心臓といった重要な臓器が近接しているため、がんが食道壁の外にまで広がるとすぐにこれらの臓器にも入り込んでしまいます(浸潤)。また、食道の壁内にあるリンパ管や血管にがんが侵入すると、リンパ液や血液の流れに乗って、食道の外にあるリンパ節や肺、肝臓などにもがんが移っていきます(転移)。

粘膜内にとどまるものを早期がん、粘膜下層までしか及んでいないがんを表在がん、それよりも深い層まで入り込んでいるがんを進行がんと呼びます。

一般的に、食道がんは男性に多く、60~70歳代に好発するといわれています。また、胃がんや頭頸部がんなどの他のがんを重複(重複がん*)することも少なくありません。

 

*多発がん:同じ部位に、同じようながんが多発すること。

(がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/qa_words/word/tahatugan.html

*扁平上皮がん:体を構成する組織のうち、扁平上皮とよばれ、体の表面や食道などの内部が空洞になっている臓器の内側の粘膜組織から発生するがん。

(がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/squamous_cell_carcinoma.html

*重複(じゅうふく)がん:同じ人の異なる部位に発生するがんのこと。多重がん、重複(ちょうふく)がんともいう。

(がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/jufukugan.html

食道がんの種類

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食道がんには、扁平上皮がんと腺がんの二つのタイプがあります。扁平上皮がんは、食道の粘膜のもっとも内側にある扁平上皮に発生します。腺がんは、逆流性食道炎によって、食道が胃酸で傷つくことが原因であることが多く、主に食道の下部に発生します。日本では9割近くが扁平上皮がんで、欧米に多いとされる腺がんは約7%です。なお、この二つ以外の組織型の食道がんもまれにみられます。

 

原因

食道がんの主な要因は、喫煙と飲酒です。特に日本人に多い扁平上皮がんは、喫煙と飲酒と強い関連があるといわれています。飲酒により体内に生じるアセトアルデヒドは発がん性物質であり、この物質を遺伝的に代謝しにくい人は食道がんリスクが高いことが分かっています。また、喫煙と飲酒、両方の習慣がある人では、より危険性が高まるといわれています。

さらに、栄養状態が悪い、果物・野菜をあまり摂取しない(ビタミン不足)などの食習慣も、食道がんの発生に影響していると考えられています。

症状

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食道がんは、初期には自覚症状がほとんどなく、飲み込みにくいなどの症状があらわれるのは、がんがある程度大きくなってからです。がんが進行するにつれて、胸の違和感、飲食物のつかえ感、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が出るようになります。胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどは、心臓や呼吸器の病気でも起こりますが、心臓や肺の検査だけでなく、食道の検査も行うことが大切です。

食道がんは転移しやすく、早期のがんでもリンパ節転移を起こしやすいことも分かっています。早期発見のためにも、検診や人間ドックの際に、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)を受けるようにしましょう。

1 胸の違和感

早期発見のための危険サインともいえる症状です。飲食物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛む、熱いものを飲み込んだときにしみるなどの症状があらわれますが、一時的に症状が消えることもあります。

2 飲食物のつかえ感、体重減少

がんが大きくなり、食道の内側が狭くなると、飲食物がつかえやすく、飲み込みづらくなり、最終的に水さえも通らなくなります。このような症状があらわれると、食事の量が減り、体重が減少します。

3 胸や背中の痛み、咳、声のかすれ

がんが進行して食道の壁を越え、周囲にある肺・背骨・大動脈などに広がっていくと、胸の奥や背中に痛みが出ます。また、がんが気管や気管支などに及ぶと咳が出たり、声帯を調節している神経へ及ぶと声がかすれることがあります。

 

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