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国立がん研究センター

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食道がんの療養について

最終更新日:2023年10月17日

前回の動画▷食道がんの治療について

リハビリテーション

食道がんに対する手術は、頸部・胸部・腹部に及ぶ大きな手術のため、臓器機能低下が起こりやすく、さらに合併症が起こる確率が高いため、術前からのリハビリテーションによって臓器機能を維持あるいは向上させることが重要です。特に術後の呼吸機能低下による肺炎や嚥下機能低下による誤嚥(ごえん)は、術前から術後のリハビリテーションを行うことで、機能が維持され合併症の予防につながります。

嚥下のリハビリテーション

食べ物がうまく飲み込めないと、誤嚥によって誤嚥性肺炎を起こす危険があります。誤嚥を防止するため、顎を引いて飲み込む、空嚥下(口の中が空の状態で何度も唾を飲み込む)をする、など、喉を動かす練習を行います。その後、とろみのあるものやゼリー状の食べ物を使って、実際に食べ物を飲み込む練習をします。一口の量を少なくする、ゆっくりよく噛む、食べた後は体を起こしておくなど、食事の内容や姿勢にも注意が必要です。口から食事がとれないと、体重が減ったり、筋力が低下して、回復が遅れてしまいますので、患者さんの状態に合わせて、術前から術後にリハビリテーションを行っていきます。

呼吸のリハビリテーション

食道がんの手術後は、胸やお腹の痛みなどで呼吸がしづらかったり、痰が出しにくくなり、肺炎を起こしやすくなります。予防のためは、手術の前から、呼吸訓練器を使ったり、腹式呼吸の練習を行います。腹式呼吸では、腹筋を意識し、お腹を膨らませるように深く息を吸い込み、腹筋を使って息を吐くようにします。口をすぼめて息を深く吸い込み、息を勢いよく吐き出すと、痰が出しやすくなります。

失声と嗄声への対応

手術で声帯を切除した場合は、食道発声法や電気発生法によって声の出し方を練習します。

声帯を切除しない場合でも、声を出すための神経が影響を受け、声が出しにくくなることがあります。数ヵ月で自然に治ることもありますが、なかなか改善しない場合は、担当医や看護師、言語聴覚士などに相談してみましょう。

療養

食道がんの手術を受けた人は、食事の通り道が変わるため、術後に食事量が減り、体重が減少します。胃酸や消化液の逆流による逆流性食道炎や、飲食物が小腸に速く流れ込むことによって起こるダンピング症候群のほか、飲み込む力が低下することによって誤嚥(ごえん)を起こしやすくなります。また、手術で再建を行ったつなぎ目や、内視鏡治療や放射線治療を行った部位が狭くなり、食事がつかえることがあります。食事することが難しい場合は、食べられるようになることを目的として、狭くなった部分に、バルーンを使って広げる処置を行う場合もあります。難治性の場合には、バイパス手術や、狭くなった部位にステントという管をいれて、広げる場合もあります。栄養障害の改善のために一時的に胃ろうや、腸ろうをつくることもあります。

逆流性食道炎やダンピング症候群に対しては、食事を含めた生活面での工夫が必要です。胸焼けや食後の腹痛・倦怠感などの症状が続くときには、担当医に相談してください。薬物療法を行うこともあります。

誤嚥の予防には、嚥下リハビリテーションが有効です。顎を引いて飲み込む、食事中に何度も空嚥下(口の中が空の状態で唾を飲み込む)をする、一口の量を少なくし、ゆっくりよく噛んで食べる、食べたあとは体を起こしておくなどの訓練を行うのが効果的です。

また、手術後は、胸部や腹部の疼痛などにより痰が出しにくくなるため、肺炎になる可能性が高まります。予防のために、腹式呼吸や痰の出し方の練習が必要になる場合もあります。

治療後は、さまざまなリハビリテーションを行いながら、焦らずに日常生活を取り戻していくことが大切です。不安なことがあれば、主治医とよく相談してください。

予防

食道がんの最大の危険因子は喫煙と飲酒です。禁煙と節酒はもちろんですが、ふだんから規則正しく、栄養バランスのよい食事を心がけ、野菜や果物を多めに摂るなど、食道がんのリスクを避けるような生活を心がけてください。

食道がんの検査は、健康診断の必須項目ではないため、定期的に受けていない人も多いとと思います。食道がんは、多発がん、重複がんのリスクが高いだけでなく、無症状のまま進行して、転移しやすいがんでもあります。検診や人間ドックを受ける際は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)を任意で追加し、早期発見に努めてください。

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