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DNAメチル化と胃発がんリスク予測

我々は、胃の強力な発がん因子であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染がDNAメチル化異常を誘発すること、また、胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常の量は胃発がんリスクと相関することを示してきた。胃以外でも、食道・大腸・肝臓・乳腺等で、非がん部組織DNAメチル化異常が蓄積することが発がんと関連していることが示されている(Ushijima, 2007 [PubMed](外部リンク)Hattori and Ushijima, 2016 [PubMed](外部リンク))。

我々は、自らの知見と、世界の他の研究グループからも報告されたDNAメチル化異常の蓄積と発がんの関連に基づき、胃粘膜でのDNAメチル化レベルを用いた胃発がんリスク診断を実用化しようと考えている。対象としては、ピロリ菌除去後の健康人での初発胃がんのリスク診断(赤枠内)、及び、早期がんに対して内視鏡的切除術を施行した胃がん患者に新たな別の胃がん(異時性多発胃がん)ができるかのリスク診断(青枠内)が可能と考えられる(図)。まずは、新たな別の胃がんの高危険群であり、慎重な追跡が負担となっている後者(青枠内)について、ピロリ菌が感染していない状態(除菌後など)での胃粘膜のメチル化レベルを定量し、胃発がんリスクが予測できることを証明するために、2008年から多施設共同前向き研究を行った。その結果、DNAメチル化レベルを用いた発がんリスク診断が有用であることを世界で初めて証明した。(Asada et al.,2015 [PubMed](外部リンク)Maeda et al.,2016 [PubMed](外部リンク))さらに2014年からは、ピロリ菌除去後の健康人(赤枠内)を対象にした、多施設共同前向き研究を行っている。
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図 非がん部胃粘膜に蓄積したメチル化レベルによる胃発がんリスク予測
ピロリ菌の感染により慢性炎症が起きている胃粘膜では、DNAメチル化異常が強く誘発されている。ピロリ菌が消滅した後、胃粘膜にどのくらいのDNAメチル化異常が残っているかによって、その人が将来、胃がんに罹る危険度が予測できる。発がんリスク予測の対象には、一度胃がんになってしまった人に新たな別の胃がんができる場合(青枠内)と、ピロリ菌がいなくなったあとの健康人に胃がんができる場合(赤枠内)がある。

DNAメチル化による異時性多発胃がんの発生予測

ピロリ菌感染は胃がんの確実なリスク要因として知られており、その仕組みとして胃粘膜細胞の遺伝子にメチル化異常をもたらすことが重要である。メチル化異常はピロリ菌除菌後も胃粘膜細胞に残って胃がんの原因となるため、除菌後も一定の確率(慢性胃炎患者:年率0.4-0.5%, 早期胃がんの内視鏡治療後の患者:年率2.0-2.5%)で胃がんが発生する。我々は、組織のメチル化異常の程度(メチル化レベル)を測定することで発がんリスクの診断が可能であることをあらゆるがんで初めて多施設共同前向き臨床研究によって示した(Asada et al., 2015[PubMed](外部リンク)Maeda et al., 2016[PubMed](外部リンク))。

ピロリ菌感染歴のある早期胃がんの内視鏡治療後の胃がん患者を対象に、除菌後、非がん部から採取した胃粘膜について、3つの遺伝子(miR-124a-3EMX1NKX6-1)のメチル化レベルを測定し、その後、毎年1回の内視鏡検査により平均5年の経過観察を行って、別の新たな胃がん(異時性多発胃がん)の発生を調べた。その結果、経過観察を行えた795名のうち、異時性多発胃がんは133名に発生し、登録時の見落としの可能性のある胃がんを除いても116人に発生した。3つの遺伝子のうちのどれか一つのメチル化レベルにより患者を4つのグループに分けて、胃がんの発生しやすさを比べた。その結果、miR-124a-3遺伝子においてメチル化異常の程度が最も高かったグループの人は、最も低かったグループの人と比べて3倍胃がんになりやすいことが分かった(胃がん危険因子で調整した多変量解析)。他の遺伝子を用いても同様の結果が得られた。今回開発された技術は、他の慢性炎症を原因とするがん(肝がん、潰瘍性大腸炎由来の大腸がんなど)にも応用できると期待される。

また今回の研究成果を発展させ、ピロリ菌を除菌した健康人での胃がん発生リスク診断の実用化を目指し、現在、胃粘膜メチル化レベルの測定により胃がんリスクを予測する多施設共同前向き臨床研究を全国66施設で実施している。

図1
図 DNAメチル化異常の程度による異時性多発胃がん発生率の違い
縦軸は異時性多発胃がん累積発生率、横軸は経過観察期間を示す。メチル化異常の程度により4段階で分けたとき、異常が最も高かったグループ(Q4:赤色)は最も低かったグループ(Q1:緑色)と比べて、有意に高い胃がん累積発生率を示した。また、既知の胃がん危険因子で調整しても最高群では最低群と比べ3倍胃がんになりやすいことが分かった。


DNAメチル化レベルによる胃がんリスク診断多施設共同前向き臨床研究

現在、ピロリ菌除菌後の健康人を対象に、メチル化異常の程度により胃がん発生リスクを予測する多施設共同前向き臨床研究を全国66施設(図)の参加で行っています。ピロリ菌除菌後の健康人でも、一定の確率で胃がんが発生することが知られています(年率0.4-0.5%)。本臨床研究では、除菌後のメチル化異常の程度を測定し、原則毎年1回の内視鏡検査により5年の経過観察を行い、胃がん発生との関係を調べます。研究の詳細はUMINでも閲覧できます。本研究には下記の施設を受診していただきますと、参加条件を満たした場合にご参加頂けますが、ご自身の結果は研究終了までご連絡できません。(UMIN000016894:https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000019470)

 ピロリ菌除菌後健康人を対象とした臨床研究協力施設
図 ピロリ菌除菌後健康人を対象とした臨床研究協力施設


 

都道府県別研究協力施設一覧

北海道

さっぽろ白石内科消化器クリニック

東京都

国立がん研究センター中央病院、日本橋大三クリニック、東京大学医学部付属病院、虎の門病院、一志胃腸科クリニック

神奈川県

徳州会湘南鎌倉総合病院

千葉県

亀田総合病院

静岡県

浜松医科大学医学部附属病院、浜松医療センター、JA静岡厚生連遠州病院、磐田市立総合病院

富山県

富山大学付属病院、富山赤十字病院、富山県済生会富山病院、高岡市民病院、厚生連高岡病院

新潟県

上越総合病院

滋賀県

滋賀医大附属病院、JCHO滋賀病院

和歌山県

和歌山県立医科大学付属病院、和歌山ろうさい病院、橋本市民病院、有田市立病院、国保日高総合病院、新宮市立医療センター、済生会有田病院、済生会和歌山病院、向陽病院、中谷病院、上山病院、名手病院、北出病院、NSメディカル・ヘルスケアサービス、なかた消化器・内科クリニック、上田消化器・内科クリニック、国保野上厚生病院

広島県

広島大学病院、国立病院機構呉医療センター、国立病院機構広島西医療センター、県立広島病院、県立安芸津病院、広島市立安佐市民病院、市立三次中央病院、広島記念病院、呉共済病院、済生会広島病院、中国労災病院、広島赤十字・原爆病院、庄原赤十字病院、広島総合病院、尾道総合病院、吉田総合病院、広島鉄道病院、三菱三原病院、マツダ病院、呉市医師会病院、安芸太田病院、本郷中央病院、河村内科消化器クリニック、益田内科胃腸科医院

大分県

大分大学医学部付属病院、有田胃腸病院、大分県厚生連鶴見病院

長崎県

長崎県壱岐病院