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研究の奥の細道2018年

11月25日(東京)

第6回 腹膜偽粘液腫患者支援の会 講演会(外部サイトにリンクします) に参加しました。腹膜偽粘液腫は100万人に1人から2人が罹患するというたいへん希少ながんです。希少がん研究分野では、腹膜偽粘液腫のゲノム・プロテオーム解析や患者のモデルの樹立に取り組もうとしています。本講演会では、腹膜偽粘液腫の化学療法の効果予測法、治療法開発の歴史、国際的な連携活動、最新の治療法について学ぶことができました。また、希少がんの患者会の取り組みや、治療を受けた患者さんの体験談なども、興味深い内容でした。パネルディスカッションには患者さんも参加されましたが、研究所では患者さんに接することは普段なく、本講演会は貴重な機会でした。腹膜偽粘液腫の治療法の開発に役立つ成果を目指して、これからもがんばりたいと思います。

11月22日(北海道)

かねがねお世話になっている藏満保宏先生(北海道医療大学がん予防研究所(外部サイトにリンクします))をご訪問させていただきました。この時期の北海道はすでに随分寒く、北国の雰囲気を十分に味わってきました。夜はサッポロビール園(外部サイトにリンクします)にて美味しいジンギスカンに舌鼓を打ち、研究と格闘技談義(藏満先生は空手の達人)に花を咲かせ、愉快なひと時でした。

サッポロビール園

藏満先生と記念写真。当日は夕方から大雪。北国の季節感が満載のディナーでした。藏満先生、どうもありがとうございました!

11月14から17日(ローマ、イタリア)

The Connectivity Tissue Oncology Society2018 Annual Meeting(外部サイトにリンクします)に参加し、肉腫のプロテオゲノミクスについてポスター発表(PDF:433KB)をしました。CTOSの年会は肉腫の基礎から臨床まで勉強になり、2010年(パリ、フランス)から毎年参加しています。本会は年を追うごとに参加者が増えています。新しい抗がん剤が肉腫に適応されるようになったことが、本学会の盛り上がりの背景にあると思われます。分子標的薬や免疫療法の臨床試験、病理診断や治療選択における遺伝子異常の重要性など、興味深い演題が目白押しでした。基礎研究としては肉腫特有の融合遺伝子の演題に加え、がん研究全体のトレンドを反映して、NGS、miRNA、CTC、患者由来がんモデルなどの演題が多く、この傾向はしばらく続くのではないかと思います。来年は、国立がん研究センター中央病院・骨軟部腫瘍科の川井章先生が大会長を務められ、東京(外部サイトにリンクします)で開催されます。

CTOS写真と説明

学会最終日・懇親会での撮影。左から、荻原洋子先生(東京女子医大・整形外科)、近藤格(NCC研究所・希少がん研究分野)、岩田慎太郎先生(NCC中央病院・骨軟部腫瘍科)、喜友名翼先生(琉球大学・整形外科)。

11月3日(東京)

第11回基礎と臨床を結ぶ分子病態研究会(PDF:90KB)に参加しました。本研究会は、さまざまな疾患について基礎から臨床まで幅広く網羅しつつ、最新のトピックスをとりあげています。今回は、がん免疫治療の副作用としての自己免疫疾患(川畑仁人先生、聖マリアンナ医科大学)、腸内常在菌研究(辨野義己先生、理化学研究所)、そしてロボットリハビリテーション(山崎正志先生、筑波大学)がテーマでした。がん研究から離れて医学を眺めてみると、新鮮なおもしろさを感じます。

10月11日から12日(奈良)

第33回日本整形外科学会基礎学術集会(外部サイトにリンクします)に参加し、シンポジウム講演「希少がん・肉腫の研究 ―プロテオーム解析によるバイオマーカー開発から患者由来がんモデルの樹立までー」(PDF:128KB)を行いました。バイオマーカー開発では候補タンパク質の機能解析は欠かせません。検証実験と同様に重要なステップです。しかし、肉腫の場合、適切ながんモデルを入手できないことが問題です。シンポジウム講演では、今までの研究の経緯と、国立がん研究センターで樹立され配布されている肉腫細胞株(PDF:380KB)を紹介しました。健全な競争は研究活動において重要です。しかし、研究リソースについては競争のツールとするのではなく、むしろ研究者間で共有することが分野全体の発展のために必要です。細胞株を共有することで、肉腫研究全体が発展していくだろうと考えています。これは肉腫研究に限らず、希少がん研究全般に共通して言えることだと思います。今回の学会では、いい塩梅に距離を置いた会場を行き来する途中に東大寺(外部サイトにリンクします)の境内を横切ることになり、名刹の風情を楽しむことができました。学会事務局の企画された大仏殿の夜間拝観では、大仏の荘厳な雰囲気に触れることができました。1000年以上あとの日本に我々は何を残すことができるでしょうか。来年の学術集会はパシフィコ横浜で開催とのことです。

  • 岡山大医学部柔道部の先輩、西田圭一郎先生(岡大・整形外科)と懇親会

岡山大医学部柔道部の先輩、西田圭一郎先生(岡大・整形外科)と懇親会にて。奈良の個性的な日本酒と共に、楽しいひと時でした。

10月1日から4日(フロリダ、米国)

17th Annual World Congress of the Human Proteome Organization(外部サイトにリンクします)に参加しました。Human Proteome Organizationは2001年に設立されました。以来、北米、アジア・オセアニア、ヨーロッパの3地域において、本学術集会は毎年もちまわりで開催されています。私は第1回目から参加しているのですが、ここ数年の印象としては、プロテオーム解析の技術は普及し、生物学のさまざまな研究で高いレベルで使われるようになったようです。一方、がん研究の視点からは、昔から解決されない問題として基礎と臨床の乖離が残されていると感じました。たとえば、基礎研究者の考える「バイオマーカー」と臨床医の求める「バイオマーカー」は、多くの場合ずいぶん距離があるようです。学際的な研究の難しいところです。本学術集会は、来年はアデレード(オーストラリア)で開催される予定です。

9月30日(フロリダ、米国)

第3回International Cancer Proteogenomics Consortium (ICPC)(外部サイトにリンクします)の代表者会議に参加しました。ICPCは、がんのプロテオゲノミクスを行う研究者が集い、データや技術を共有しようとする国際コンソーシアムです。米国がんセンターを中心として、12か国が参加しています。今回の代表者会議には日本からは国立がん研究センターの研究者が参加しました。プロテオミクスを専門とする国内の大学、研究機関の研究者にも、ICPCの活動にご協力いただいています。ICPCで日本が担当する悪性腫瘍は、希少がん・肉腫です。希少がんの研究においては、貴重な研究リソースを独占するのではなく、共有する姿勢が必要だと思います。ICPCの代表者会議では、日本のプロテオゲノミクスの進捗を報告し、これからの展望を述べ、ICPCのメンバーに肉腫の研究リソースの共有についていくつかの提案をしてきました。生物学的テーマと臨床的テーマの両方の研究が、ICPCでは必要だと感じています。

ICPC代表者会議で

ICPC代表者会議で、肉腫のプロテオゲノミクスについて発表しました。肉腫研究のユニークな点や臨床的な課題がプロテオミクスの専門家にわかっていただけるよう、基礎的なところからご説明しました。

ICPC代表者会議の集合写真

ICPC代表者会議の集合写真。国立がん研究センターの4名が日本から参加しました(近藤:向かって右端)。

9月27日(大阪)

第77回日本癌学会学術総会(外部サイトにリンクします)に参加しました。ランチョンセミナーにてジャクソン研究所(外部サイトにリンクします)のJanine Low-Marchelli博士の講演の司会進行を担当しました。ジャクソン研究所は世界最大規模のPDXライブラリーを保有しており、ヒト化マウスなど先進的な技術の開発に長年にわたり取り組んでいます。講演は「Onco-Hu Models: Humanized Mice for Evaluation of Immuno-Oncology Therapeutics」(外部サイトにリンクします)と題するもので、ヒト化マウスを中心に基礎から応用まで広い範囲が網羅されていました。「どのモデルとて完璧ではなく、特定の目的に特化した使用をするべきである」とのLow-Marchelli博士のコメントには大きく頷けるものがあります。会場はほぼ満員御礼の状態で、活発な質疑応答でセミナーは終了しました。同社サクラメントの研究所(外部サイトにリンクします)をいつか訪れてみたいものです。

9月26日(大阪)

第38回日本分子種マーカー研究会(外部サイトにリンクします)に参加しました。本研究会は、臨床的な視点から高いレベルでバイオマーカー開発が討議される研究会で、毎年、斬新な発表を楽しみに参加しています。今年はArtificial Intelligence (AI)の応用に関するセッションが目新しいところでした。瀬々潤先生(産業技術総合研究所)の講演では、ディープラーニングとバイオマーカー開発の関係が明快に説明され、たいへん勉強になりました。私が座長を担当したセッション「病理診断」では、白石英晶先生(国立がん研究センター・本田一文先生のグループ)のACTN4の発表が白眉でした。臨床応用に近いバイオマーカーとしてACTN4は期待できそうです。

9月19日(埼玉)

長田裕之先生(理化学研究所・環境資源科学研究センター・ケミカルバイオロジー研究グループ)(外部サイトにリンクします)のお招きで、第2回ケミカルバイオロジーチュートリアルにて講演をさせていただきました。「患者由来がんモデルを用いた化学療法感受性試験」という演題です。若い研究者のスタートアップに役立つ内容を、という事前のリクエストが室井誠先生(同グループ)からあり、不束ながら、私なりに思うPIの姿勢についてもお話しいたしました。いつの間にかこういう話をする歳になったのだと、ふと感慨深いものがあります。アットホームな質疑応答でチュートリアルは終り、和光駅前の「和食 五十六」(外部サイトにリンクします)にて懇親会を催していただきました。このお店はおいしい料理もさることながら全国各地の地酒がそろえてあり、楽しい会話と共に堪能しました。こういう素敵なお店は、数回にわけて全酒制覇を目指したいものです。長田先生、室井先生、これからも御指導のほど、どうぞよろしくお願いします。

9月10日(東京)

Australia-Japan Medical Research Symposium(外部サイトにリンクします)にて「Rare Cancer Research from Basic Study to Clinical Application」と題して講演をしてきました。本シンポジウムのタイトルは「希少がん」。若手研究者の発表に続き、シニア研究者が各国の希少がんの臨床や研究の現状そして展望について語りました。オーストラリアはInternational Cancer Proteogenomics Consortium (ICPC)(外部サイトにリンクします)において日本、米国と並んで肉腫を担当しています。症例が少なく臨床検体が得難い希少がんにおいては、国際共同研究はきっと有効に働くことでしょう。それぞれの持つリソースを共同研究でどのように活かしていくことができるのか、本会で知り合いになったオーストラリアの方々とこれからも話し合っていきたいと思います。

7月27日(酒田市、山形県)

第6回細胞凝集研究会(外部サイトにリンクします)に参加してきました。細胞凝集(三次元培養)の技術はがんの基礎研究や前臨床研究で盛んに用いられています。昔からある技術ではありますが、開発されるべきところがまだまだたくさんあるようです。研究会では細胞凝集の新しい技術やその応用が発表され、新しい製品の紹介も多数あり、希少がん研究に役立つ情報を得ることができました。懇親会も楽しく、山形県の特産品に舌鼓を打ちつつ、旧交を温めてきました。山形県庄内地域といえば米どころ。米どころといえば、日本酒。自分へのおみやげと称してついつい日本酒を大人買い(外部サイトにリンクします)してしまいました。2019年の細胞凝集研究会は沖縄で開催予定とのこと。今から楽しみです。

6月27日から28日(東京)

講演会「新しい治療法の開発を目指す患者由来がんモデル」(外部サイトへリンクします)を国立がん研究センターにて開催しました。新しい治療法が求められる中、患者由来がんモデルに期待が寄せられています。第一線で活躍する研究者の方々に、患者由来がんモデルの現状や課題について御講演をお願いしました。また、20名の方にポスター発表を、21社に展示を、それぞれお願いしました。登録者数は、講演会193名、情報交換会118名と、たいへん盛況でした。2019年も同様の会を催したいと思います。

6月15日終日(ソウル、韓国)

韓国の国立がんセンター(ソウル、韓国)(外部サイトへリンクします)において行われた12th International Symposium of National Cancer Center, Korea(外部サイトへリンクします)「Rare cancers: are you ready to keep an on ?」にて講演をしてきました。希少がんの新しい治療法の開発を目指して、世界中の研究者や臨床医ががんばっています。症例の少ない希少がんの研究や臨床は国際連携が必要です。韓国の国立がんセンターとは共同研究の機会を探っていきたいと思います。

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講演会終了後は韓国料理でおもてなしを受けました。焼肉とキムチとで汗を流しながら、ビールや焼酎がぐいぐい進みました。

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講演抄録「Sarcoma Research for Novel Clinical Application(WORD: 19KB)

 6月14日午後(ソウル、韓国)

国立がんセンター(ソウル、韓国)(外部サイトへリンクします)で肉腫の研究や診療に携わるスタッフとミーティングを行い、共同研究の可能性について話し合いをしました。日本の国立がん研究センターと同様に、研究者と臨床家とコミュニケーションがとれている様子が伺われました。患者由来肉腫モデルの開発、プロテオゲノミクスを用いた新しいアプローチなど、国際共同研究が有効なプロジェクトを検討しています。

国立がんセンター(ソウル、韓国)でスタッフとミーティング

6月14日午前(ソウル、韓国)

プロテオーム解析の手法を用いてがんの新しいバイオマーカーを開発しているJe-Yoel Cho教授(Seoul National University(外部サイトへリンクします))のラボを訪問しました。「Rare Cancer Research toward Novel Clinical Application」と題して職員や学生を対象に講演をしました。Cho教授が質量分析を用いて開発されたバイオマーカーは韓国ではすでに承認されており、診断デバイスも完成して病院で使われ始めているとのこと。学内ベンチャーも立ち上げておられ、これからが楽しみです。日本で検証実験をする際にはお手伝いさせていただきたいと思います。

Je-Yoel Cho教授のラボを訪問

6月1日から5日(シカゴ、米国)

American Society of Clinical Oncology(外部サイトへリンクします)年会に参加しました。AACRに次いで今年2回目のシカゴです。AACRとは大きく異なる内容で、今さらながらに基礎と臨床の距離を感じます。ゲノム医療の是非が論じられていましたが、それぞれの主張の根拠の違いが印象的でした。

5月19日(京都)

IPGW: International Proteogenome Workshop in Kyoto(外部サイトへリンクします)にて「Sarcoma Proteogenomics」と題して講演をしてきました。肉腫のプロテオゲノミクスについて、近藤ががん研究の部分、インフォの部分は服部がそれぞれ講演をしました。

5月15日から18日(大阪)

日本質量分析学会・日本プロテオーム学会2018年合同大会(外部サイトへリンクします)にて、セッション「知っておきたい重要なこと:疾患プロテオミクスの最新情報と将来性について」を企画しました。また、「肉腫のプロテオゲノミクス解析:国際がんプロテオゲノミクスコンソーシアム(WORD: 37.5KB)」と題して講演をしました。最終日にも関わらず多くの方が出席され、活発な討議が繰り広げられました。

5月12日(東京)

第14回日本臨床プロテオゲノミクス研究会にて「肉腫のプロテオゲノミクス(WORD: 15.6KB)」と題して講演し、プロテオゲノミクスのためのソフトウェア「Mutated Nucleotide and Amino-acid sequence Generator (MuNaGe)」を紹介しました。International Cancer Proteogenomics Consortium (ICPC)(外部サイトへリンクします)において、このソフトを使った肉腫のデータを発表する予定です。

5月4日から5日(上海、中国)

2018 Upper Extremity Tumor Treatment and Hand Surgery Advanced Technique Workshopにて「Rare Cancer Research」と題して講演をしました。聴衆の多くは臨床医の方々でしたが、日本からの講演者ということだからなのか、希少癌研究、という珍しい名称からなのか、皆さん興味津々で聴講していただけました。

4月14日から18日(シカゴ、米国)

American Association of Cancer Research(外部サイトへリンクします)年会に参加しました。一つの学会で定点観察をしていると、がんの研究が推移しているのがよくわかります。臨床試験についてセッションが設けられるなど、臨床試験の研究はトレンドの一つのようです。日本発の新しい価値観を提唱できるようになりたいものです。

2月23日から24日(東京)

第1回日本サルコーマ治療研究会学術集会(外部サイトへリンクします)にて「肉腫の患者由来がんモデルの開発と応用(WORD: 14.4KB)」と題して講演をしました。希少がんでは患者由来がんモデルがないことが治療法開発や基礎研究のボトルネックになっています。学術集会では、国立がん研究センターで行われている細胞株樹立の研究成果について御紹介しました。樹立したモデル系はどのように臨床に役立ちうるのか、ということをいつも考えています。今回、臨床の方々から貴重な意見を得ることができました。

 講演「肉腫の患者由来がんモデルの開発と応用」の様子

2月3日(京都)

第2回京都生体質量分析研究会シンポジウム(外部サイトへリンクします)にて「Proteogenomics for Sarcoma Research(WORD: 16KB)」と題して講演をしました。質量分析がどのように役立つかということについて、開発中のバイオマーカーや新しいソフトウェアを紹介し、希少がん研究の視点からいくつか提案をしました。