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国立がん研究センター

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がん患者さんの「新型コロナウイルス感染症」対策過度に恐れず、感染予防の徹底を

注:本ページは2021年12月時点の情報です。

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新型コロナウイルス感染症が、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。がん患者さんに発熱、咳、倦怠感などの症状があったときにはどう対処すべきなのでしょうか。また、次の流行を想定して、どのような備えをしたらよいのでしょうか。東病院感染制御室長で総合内科医長の冲中敬二医師が解説します。

東病院 感染制御室長・総合内科医長
冲中敬二(おきなか けいじ)医師

経歴紹介

2000年浜松医科大学卒業。中央病院造血幹細胞移植科・総合内科勤務後、2015年より現職。現在も週1回は中央病院造血幹細胞移植科に勤務。専門はがん患者の感染症診療。
「情報の発信元はどこか確認し、根拠のない情報や誤情報に振り回されないように注意してください」

 がん患者さんは新型コロナウイルス感染症にかかりやすく、重症化しやすいが、その程度は患者さんによって異なる

新型コロナウイルス感染症に関するイラスト画像07

新型コロナウイルス感染症の発生から約2年が経過し、徐々にがん患者さんへの影響がわかってきました。がん患者さんをひとまとめにして一般の方と比較したデータでは、がん患者さんの方が新型コロナウイルス感染症にかかりやすく、かつ重症化しやすいと報告されています。しかし、がん患者さんの中でもそのリスクには大きな差があります。例えばがん患者さんの中でも診断から1年以内の患者さんは新型コロナウイルス感染症にかかりやすいことが示されています。

同様に診断から1年未満の患者さんでは死亡や重症化のリスクが高いことが知られている一方で、診断から5年以降経過している固形がんの患者さんでは一般の人との間に重症化のリスクの差はないことが示されています(血液がんの患者さんでも診断から5年以降は重症化のリスクが下がります)。そのほか、従来から行われてきたような抗がん剤治療(殺細胞性治療)を受けている患者さんも重症化のリスクがある一方、免疫チェックポイント阻害剤では重症化のリスクのリスクが高くない可能性が示されています。

注:画像をクリックすると、東病院感染制御室「がんと新型コロナウイルス感染症」ページにリンクします。

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感染が疑われるときは担当医に相談を

発熱、咳などが出たときの対処法について、あらかじめ担当医と相談している場合には、その指示に従って対応してください。特に何も言われていない場合、軽度の熱や咳だけなら、数日程度様子をみてもよいでしょう。

また、以下のような場合には、担当医やかかりつけ医に連絡・相談が必要です。

  • 「2週間以内に新型コロナウイルス感染症の患者さんや感染が疑われている人との接触があった」「カラオケパーティーに参加した」など、感染する危険性を伴う行動後の体調不良の場合。
  • 息苦しい、顔色が明らかに悪い、ぼんやりしているなど、表の「緊急性の高い症状」に当てはまるとき。
  • 白血病など血液がんの人、造血幹細胞移植後や、4週間以内に抗がん剤治療や手術を受けた患者さんに感染が疑われるとき。

家族や介護者は、がん患者さんの体調に注意し、気になる症状がある場合は担当医に相談してください。家族の体調が悪いときには、食事や寝る部屋は別にするなど、できる限り、がん患者さんとの接触は避けるようにしましょう。接触が避けられない場合には、家の中でもお互いにマスクをし、できるだけ1~2m以上の身体的距離を取り、こまめに手を洗うようにしましょう。1時間に2回程度、部屋の換気をすることも大事です。

注:画像をクリックすると、東病院感染制御室「新型コロナウイルス感染症の基礎知識」ページにリンクします。

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人との距離を取り、飛沫(ひまつ)を回避
こまめな手洗い、換気も重要

新型コロナウイルス感染症に関するイラスト画像11

新型コロナウイルス感染症の主な感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」です。

飛沫感染とは、感染者がくしゃみや咳をしたり、話したりしたときに出る飛沫に含まれるウイルスを口や鼻から吸い込むことによる感染です。飛散した唾液中のウイルスは、手すりやつり革、テーブル、デジタル機器などの表面で、一定時間生存することが知られています。ウイルスを含む飛沫がついた表面を触った手で、目や鼻、口などの粘膜を触ると、そこからウイルスが体内に侵入する接触感染が起こります。

感染予防のためには、密集、密接、密閉、いわゆる「3密」を避けることが大切です。通常、飛沫が飛ぶ距離は2mとされますので、他の人と接触する場合はマスクを着用するようにしましょう。マスクをしていない家族以外の人との間隔は2m以上取りましょう。人込みの中など周囲の人との距離が取れないときや公共交通機関利用時など人が多い空間では室外でもマスクを着用するようにしましょう。また、換気をしっかりと行うことも重要です。

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予防のためには、こまめな手洗いも重要です。外出先からの帰宅後、調理や食事の前、明らかに汚れがついたときには、指の間や手首まで、流水と石けんを用いて、20秒から30秒かけてしっかり手を洗いましょう。アルコール消毒による手指消毒も有効です。

外出中は、接触感染のリスクを考え、目、鼻、口に手を触れないようにしてください。ドアノブ、スイッチ、手すり、リモコン、電話など、家庭内で複数の人がよく触れる部分は、こまめに清掃・消毒しましょう。市販の塩素系漂白剤を用いて消毒薬を作る際には、厚生労働省のサイトが参考になります。

次亜塩素酸(じあえんそさん)ナトリウム溶液や次亜塩素酸水の噴霧(ふんむ)は、効果がないどころか、噴霧液を吸い込むと肺にダメージを与える恐れがあり危険ですのでお勧めできません。

注:画像をクリックすると、東病院感染制御室「新型コロナウイルス感染症にかからないためには」ページにリンクします。

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体調を整えるためには、バランスのよい食事と睡眠をしっかり取り、規則正しい生活を心がけることも大切です。また喫煙は重症化の危険性が指摘されているため、禁煙をお勧めします。

体力が落ちると、がん治療が受けられなくなってしまうこともあります。人との距離を保ちつつウオーキングや自転車こぎをするなど、体調がよいときに体を動かすようにしましょう。当センターのホームページでは、筋力・体力の低下を防ぐために自宅で簡単にできるホームエクササイズを動画で紹介しています。

注:画像をクリックすると、東病院 骨軟部腫瘍科「がん患者さんのための ホームエクササイズ動画集」ページにリンクします。

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新型コロナウイルスワクチンは、特に重症化を予防する点において高い効果が示されています。がん患者さんに特有の問題となる副反応の報告もありませんので、是非積極的な接種をお勧めいたします。

しかし、がん患者さんはワクチンを接種してもその効果が弱く、有効な期間も短くなることが懸念されております。接種可能な時期が来れば、3回目の接種もお勧めいたします。また、家族がワクチンを接種することによって新型コロナウイルス感染症にかかりにくくすることで、間接的に患者さんを守ることも推奨されます。

抗B細胞抗体治療(リツキシマブ、オビヌツズマブなど)をはじめ、いくつかの抗がん剤治療中はワクチンの効果が落ちる可能性が指摘されています。抗がん剤治療中の患者さんはワクチン接種のタイミングについて担当の先生と相談されることをお勧めいたします。同様に造血幹細胞移植後や細胞治療後の患者さんも担当の先生とワクチン接種時期についてご相談ください。

注:画像をクリックすると、東病院感染制御室のページにリンクします。

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    東病院感染制御室「新型コロナウイルスワクチンについて」

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    東病院感染制御室「がん患者さんへの新型コロナワクチン接種Q&A」

新型コロナワクチン以外にも、がん患者さんに必要なワクチンは複数あります。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンなどの接種もお勧めいたします。

病院は感染予防に最大限努力、治療を継続し生活を楽しんで

今後も国や自治体が、自粛要請などを出したときには、不要不急の外出は控えるようにしましょう。ただし、がんの治療や検査、診察は自己判断で中止したりせず、必ず担当医や看護師に相談してください。

国立がん研究センターでは、感染予防に配慮しつつ、患者さんたちのがん治療に影響が出ないように最大限努力しています。

いろいろと不安を抱えていらっしゃる方も多いと思いますが、過度に恐れる必要はありません。予防対策を徹底することで、感染リスクを低くすることは可能です。新型コロナウイルス感染症関連の情報は、公的機関や関連学会などから入手し、デマや根拠のない情報には振り回されないよう気を付けてください。一人暮らしの人は、電話やメールなどで家族や友人と連絡を取り、社会的な孤立を防ぎましょう。感染予防をしながらも、患者さん同士の交流や趣味、生活を楽しむことは続けていただきたいと思います。

緊急性の高い症状(*はご家族がご覧になって判断した場合です)

表情・外見
  • 顔色が明らかに悪い*
  • 唇が紫色になっている
  • いつもと違う、様子がおかしい*
息苦しさ等
  • 息が荒くなった(呼吸数が多くなった)
  • 急に息苦しくなった
  • 日常生活の中で少し動くと息があがる
  • 胸の痛みがある
  • 横になれない、座らないと息ができない
  • 肩で息をしている、ゼーゼーしている
意識障害等
  • ぼんやりしている(反応が弱い)*
  • もうろうとしている(返事がない)*
  • 脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする

「新しい生活様式」の実践を(厚生労働省/2020年6月19日に一部改訂)(外部サイトにリンクします)


  • こまめに手洗い・手指消毒
  • 咳エチケットの徹底
  • こまめに換気(エアコン併用で室温を28度以下に)
  • 身体的距離の確保
  • 「3密」の回避(密集、密接、密閉)
  • 一人ひとりの健康状態に応じた運動や食事、禁煙等、適切な生活習慣の理解・実行
  • 毎朝の体温測定、健康チェック。発熱または風邪の症状がある場合はムリせず自宅で療養

新型コロナウイルス感染症対策参考サイト

電話相談も実施しています

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