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国立がん研究センター 東病院

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がんと新型コロナウイルス感染症

がんと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について

一部のがん患者さんはかかりやすい

  • がん患者さんは新型コロナウイルス感染症にかかりやすいことが報告されているが、リスクの程度は個々のがん患者さんごとに異なる
    -診断から1年未満、血液腫瘍、肺がんなどはリスクが高い
新型コロナウイルス感染症に関するイラスト画像07

中国やスペイン、米国などでがん患者さんが新型コロナウイルス感染症に罹患する頻度が、一般人口より高いことが報告されています(参考文献1-3)が、具体的な値は地域や研究対象となる集団によって異なります。

米国の約7340万人(うちがん患者さんが約252万人)の大規模なデータでは、がん患者さんは1.46倍新型コロナウイルス感染症に罹患するリスクが高く、特に1年以内にがんと診断された患者さん(がん患者さんの約1割)では7.14倍リスクが高いという報告があります(参考文献4)。また、1年以内に診断されたがん患者さんに限定すると白血病では12.16倍、非ホジキンリンパ腫で8.54倍、肺がんで7.66倍のリスクと報告されています。

しかし、このデータでは約9割のがん患者さんは診断から1年以降であり、すべてのがん患者さんのリスクが一様に高いというわけではありません。

  1. Yu Jらの報告(JAMA Oncol, 2020)(外部サイトにリンクします)
  2. Rogado Jらの報告(Clin Transl Oncol.2020)(外部サイトにリンクします)
  3. Filmore NRらの報告(J Natl Cancer Inst 2020)(外部サイトにリンクします)
  4. Wang Qらの報告(JAMA Oncol 2020)(外部サイトにリンクします)

一部のがん患者さんは重症化しやすい

  • 一部のがん患者さんは新型コロナウイルス感染症で重症化しやすい
    -高齢、男性、1年以内に診断されたがん、血液腫瘍、肺がんなどはリスクが高い

英国の1700万人のデータでは、診断から1年未満のがん患者さん(約8万人、血液腫瘍は除く)は1.72倍死亡のリスクが高かったと報告されていますが、診断から5年以降(約54万人)では0.96倍と死亡のリスクはありませんでした。血液腫瘍の患者さんでは診断1年未満(約9千人)では2.82倍の死亡リスクであった一方、5年以降(6.3万人)では1.62倍まで下がりました(参考文献1)。

米国7340万人のデータをもとに解析した報告では、一般の非がん患者さんでは入院割合/死亡割合が24%/5.26%のところ、1年以内に診断されたがん患者さんでは47.76%/14.93%と高かったことが報告されています。(なお、新型コロナウイルス感染症に罹患していないがん患者さんは12.39%/4.03%でした(参考文献2)。また、米国の集中治療室に入室した患者さん2215例のデータでは、がん患者さんの中でも活動性を有するがん(非解寛)の患者さんは死亡のリスクが2.15倍だったとも報告されています。(参考文献3)。

このようにがん患者さんの中でもリスクは大きく異なり、すべてのがん患者さんに一律に重症化の危険性があるわけではありません。がんの種類の中でも血液腫瘍や肺がんの患者さんのリスクが高いという複数の報告があります(参考文献4-6)。そのほか、高齢、男性、複数の基礎疾患、日中の半分以上をベッド上で過ごすような全身状態なども重症化しやすいことが懸念されています(参考文献6-10)。

一方で、これらの文献の中ではここ最近の抗がん剤治療歴は重症化と関連するという報告と関連しないという報告の両方があり結論は得られていません。免疫チェックポイント阻害剤に関してもリスクとなるかどうかの結論は得られていません。また、小児のがん患者さんでは重症化する割合が低いことも報告されています(参考文献11.12)。

一部のがん患者さんには新型コロナウイルス感染症にかかった場合重症化する可能性がありますが、すべてのがん患者さんにそのリスクがあるわけではありません。過度な心配は不要ですが、新型コロナウイルス感染症にかからないように、日々の生活の中での基本的な感染予防対策を守ることがとても重要です。

症状の悪化が予測される因子として呼吸困難(1.34倍)、頻脈(1.8倍)、呼吸回数の増加(1.98倍)が報告されており、体調不良時のこれらの症状には注意が必要です(参考文献13)。詳細は、新型コロナウイルス感染症にかからないためには「もし、発熱や呼吸器症状がでたら…」をご参考ください。

【参考文献】

  1. Williamson Eらの報告(Nature. 2020)(外部サイトにリンクします)
  2. Wang Qらの報告(JAMA Oncol 2020)(外部サイトにリンクします)
  3. Gupta Sらの報告(JAMA Intrern Med. 2020)(外部サイトにリンクします)
  4. Jee Jらの報告(J Clin Oncol. 2020)(外部サイトにリンクします)
  5. De Joodeらの報告(Eur J Cancer. 2020)(外部サイトにリンクします)
  6. Lee LYEらの報告(Lancet 2020)(外部サイトにリンクします)
  7. Kuderer NMらの報告(Lancet 2020)外部サイトにリンクします)
  8. Mehta Vらの報告(Cancer Discov. 2020)(外部サイトにリンクします)
  9. Yang Kらの報告(Lancet Oncol 2020)(外部サイトにリンクします)
  10. Robilotti EVらの報告(Nat Med. 2020)(外部サイトにリンクします)
  11. Boulad Fらの報告(JAMA Oncol. 2020)(外部サイトにリンクします)
  12. Millen GCらの報告(Br J Cancer. 2021)(外部サイトにリンクします)
  13. Brar Gらの報告(J Clin Oncol. 2020)(外部サイトにリンクします)

がん検診やがん患者さんの治療について

緊急事態宣言が発令された2020年4~5月にかけて日本国内の病院での平均外来患者数や平均在院患者数が減少したことが厚生労働省から報告されています(参考文献1)。

米国では同じ時期にがん検診数が3-8割減少したことに伴って、がんの新規診断数、治療開始数が4割前後減少したことが示されています(参考文献2-5)。イタリアでは、2020年に診断された乳がん患者さんにおける進行がんの割合が2019年より増加していたことが報告されています(参考文献6)。診断の遅れに伴い治療が4週間遅れることで、一部のがん患者さんの死亡が増加する可能性も示されています(参考文献7)。

このため、新型コロナウイルス感染症の流行期であっても、気になる症状がある方は検診をしっかりと受けた方が良いと考えられます。また、現在治療中の患者さんは、がんの種類によっては治療が遅れることを避けた方が良い場合もありますので、治療の延期に関しては主治医の先生とよく相談するようにしましょう。

【参考文献】

  1. 厚生労働省 病院報告(外部サイトへリンクします)
  2. Patt Dらの報告(JCO Clin Cancer Inform, 2020)(外部サイトへリンクします)
  3. Bakouny Zらの報告(JAMA Oncol. 2021)(外部サイトへリンクします)
  4. Kaufman HWらの報告(JAMA Netw Open. 2020)(外部サイトへリンクします)
  5. Greenwood Eらの報告(Nat Rev Clin oncol. 2021)(外部サイトへリンクします)
  6. McBain RKらの報告(J Gen Intern Med.2021)(外部サイトへリンクします)
  7. Hanna TPらの報告(BMJ. 2020)(外部サイトへリンクします)

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