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国立がん研究センター東病院読売新聞医療コラム連載「私のがん診療録」
最終更新日:2023年8月23日
公開日:2023年8月23日
「私のがん診療録」は、国立がん研究センター東病院の医師・看護師が、一般の読者に向けて、がんの医療現場の現状などを分かりやすく紹介する読売新聞の連載企画です。
原則毎月第1土曜日夕刊に掲載され、さらに、読売新聞社が提供するwebサイト「ヨミドクター(外部サイトにリンクします)」では、コラムに加え執筆者へのインタビューも掲載されます。コラムの内容について、より理解を深められる内容となっておりますので、併せてぜひご覧ください。
第1回「大丈夫としようがない」
「先生から大丈夫って言われると何か安心するんですよね」
先ほど診察した患者さんからいただいた言葉です。
病院で行われる診断や治療の多くは理詰めで説明できないようなことがまだまだ残されています。医療者のさじ加減は医療現場では日常です。医師が良かれと思って行う医療に対しても、すべてを絶対大丈夫と保証することは叶いません。しかしながら人と人との言葉のやり取りを通じて、この不安定さをうまく解消できることもあります。その代表的な言葉として「大丈夫」は、時に患者さんに大きな安心感を持っていただけます
もう一つの言葉が「しょうがない」です。
初めてお会いした患者さんの中には、「お肉を食べすぎたから大腸がんになってしまったのかしら?」、「やっぱりお酒飲みすぎたのがいけなかったのかな」と病気の原因を今までの食生活に結びつける方がいます。
そんな時私は「しょうがない」を使うことがあります。
「●●さん、焼肉とかビールとか好きだったんでしょ。お肉は美味しいし、みんなと飲むのも楽しいですもんね。だったらしょうがないじゃないですか。ちゃんと手術して治しましょうね」という具合です。
そうすると多くの方の顔はなぜかほころび、「まあ、しょうがないか、これから頑張ろう!」と前向きに進めるようになります。
「大丈夫」と「しようがない」は一見相反するように聞こえますが、両方ともみなさんをなぜか前向きにできる不思議な力を持っています。
副院長(医療機器担当) 大腸外科長
伊藤 雅昭 (いとう まさあき)