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がん患者さんへの新型コロナワクチン接種Q & A

最終更新日:2024年1月17日

1.がん患者さんや、がんサバイバーは新型コロナワクチンを接種すべきですか?

接種することが推奨されます。その理由は以下の通りです。

  1. がん患者さんは、新型コロナウイルス感染症に罹患しやすいことや、重症化しやすいことが示されています。
    -特に治療中や治療後数年以内のがん患者さん、血液がんや肺がん患者さんなど。
  2. がん患者さんにおけるワクチン効果は低いことが知られています。
    -がん患者さんのmRNAワクチンのワクチン効果(注1)は固形がんで79%、血液がんで74%という報告があります。(参考 [外部サイトにリンクします])オミクロン株へのワクチン効果はさらに下がっていることが知られていますが、重症化予防効果は引き続き期待できます(参考 [外部サイトにリンクします])。
    -最初の接種でのワクチンの効果が乏しくても、その後のブースター接種(半年ごとの追加接種)で効果がみられるがん患者さんも多くワクチンのブースター接種が推奨されます。(参考 [外部サイトにリンクします])オミクロン株流行下でブースター接種を行ったがん患者さんとしていないがん患者さんとを比較すると、1回のブースター接種では重症感染を約8割減少させ、2回のブースター接種では約9割減少させたことが報告されています。(参考 [外部サイトにリンクします])(この研究でブースター接種をしていない人=最初の2回の接種のみの人)

  3. 現在までのところがん患者さんに特有のワクチンの副反応は報告されていません。
    -mRNAワクチン接種後はわきのリンパ節が腫脹することがあり、CTなどの画像検査によるがんの病勢評価の前の接種には注意が必要です。

  4. がん患者さんへのワクチン接種は新型コロナウイルス感染症の後遺症(罹患後症状)のリスクを減らす効果が示されています。(参考 [外部サイトにリンクします])

しかし、健康な人よりワクチン効果が劣ることが懸念されるため、接種後も必要に応じて(新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが流行している時期や化学療法中など免疫不全が強い時、体調不良時など)人ごみでのマスクの着用や手洗い、換気をしっかりと行うなどの感染対策の継続が必要です。

前回のワクチン接種から3-6ヵ月を経過した患者さんもmRNAワクチンの追加接種をお勧めします。(抗がん剤治療中、もしくは治療後間もない患者さんは接種時期を担当の先生にご相談ください。)

注1:ワクチン効果:ワクチン未接種のがん患者さん1万人が研究期間中に100人COVID-19に罹患し、ワクチンを接種したがん患者さんでは1万人中10人罹患した場合のワクチン効果は90%となります。(100人罹患するところ、90人の罹患を予防したという意味。)

2.ワクチンを接種してはいけないがん患者さんはいますか?

ワクチンの成分に重度のアレルギー(アナフィラキシーなど)がある場合は接種できません。また、接種当日に体調が悪い方も接種できません。
これ以外には接種していけない条件というものはありませんが、現在受けている治療の内容によってはワクチンの効果が弱まってしまう場合等があります。詳しくは以下の3、4をご参照ください。

3.がん治療中の場合、接種できますか?

がん治療中の患者さんにおける最適な接種時期はまだ分かっていません。一般的な抗がん剤治療中や放射線治療中の場合は、接種できるときに接種することが望ましいと考えられます。しかし、白血球が減少するような治療を受けている場合は、白血球数が回復してからの接種が勧められます。また、抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。

同様に、その他にもワクチンの効果の減弱が懸念される治療(ブルトンキナーゼ阻害剤[イブルチニブ]やBCL-2阻害剤[べネトクラクス]など)もありますので、抗がん剤治療中の患者さんは、接種時期について担当医にご相談ください。(受診が数ヶ月に1回のように安定されているがん患者さんのほとんどは、担当医にご相談せずとも接種可能なときの接種で良いと考えられます。)

造血幹細胞移植患者さんやCAR-T療法後の患者さんも具体的な接種時期は担当医とご相談ください。

リンパ浮腫がある部位への接種は感染のリスクがあるため、リンパ浮腫のない腕への接種が推奨されます。両腕にリンパ浮腫がある場合は大腿部への接種も検討されますので、接種会場でスタッフへご相談ください。

4.ワクチン接種ががん治療の効果を低下させたり、がんの原因となりますか?

ワクチン接種ががん治療の効果を低下させる根拠はないとされています。また、現在までがん患者さんを対象としたワクチンの研究は数多く行われてきていますが、ワクチンがDNAを変化させたり、がんやがんの再発原因となる根拠は示されていません。

海外の論文(総説)でも以下の様に触れられています。

「がん患者さんにおいて、COVID-19ワクチン接種ががんの再発につながるという指摘を指示する証拠も根拠もない。」(Fendler A, de Vries EGEらの報告 [Nat Rev Clin Oncol. 2022] 外部サイトにリンクします)

(For patients with cancer, there is both no evidence and no rationale whatsoever supporting the suggestion that vaccination against COVID-19 leads to cancer recurrence.)

参考となる公的機関情報

厚生労働省(外部サイトにリンクします)

  • ワクチンを接種した後に亡くなった」ということは、必ずしも「ワクチンが原因で亡くなった」ということではありません。接種後の死亡事例は報告されていますが、現時点で、引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとされています。

NCI (National Cancer Institute:米国国立がん研究所)[英語](外部サイトにリンクし、PDFが開きます)

  • Can COVID-19 vaccines cause cancer? Can the vaccines cause cancer to recur or make it more aggressive?
    COVID-19ワクチンはがんの原因になりますか?COVID-19ワクチンによってがんの再発や、病勢が進行する原因となりますか?

    There is no evidence that COVID-19 vaccines cause cancer, lead to recurrence, or lead to disease progression. Furthermore, COVID-19 vaccines do not change your DNA (i.e., your genetic code).
    COVID-19ワクチンががんを引き起こしたり、再発を引き起こしたり、病勢を進行させたりするという証拠はありません。さらに、COVID-19ワクチンはあなたのDNAを変化させません。

American Cancer Society(米国対がん協会)[英語](外部サイトにリンクします)

  • Can COVID-19 vaccines cause cancer or make cancer grow?
    COVID-19ワクチンはがんの原因となったり、がんを増殖させたりしますか?

    There is no information that suggests that COVID-19 vaccines cause cancer. There is also no information that suggests these vaccines can make cancer grow or recur.
    COVID-19ワクチンががんの原因となることを示唆する情報はありません。また、ワクチンががんを増殖させたり再発させたりすることを示唆する情報もありません。

Sloan Kettering記念がんセンターのHP[英語](外部サイトにリンクします)

  • Can the COVID-19 vaccine cause cancer?
    COVID-19ワクチンはがんの原因になりますか?

    No. None of the vaccines interact with or alter your DNA in any way. They cannot cause cancer. There is no truth to the myth that somehow the COVID-19 vaccine could inactivate the genes that suppress tumors.

    いいえ。どのワクチンもDNAに影響を与えたり、がんを引き起こすことはありません。COVID-19ワクチンが腫瘍を抑制する遺伝子を不活性化するという俗説は真実ではありません。

    Messenger RNA (mRNA) is not the same as DNA and cannot be combined with DNA to change your genetic code. The mRNA vaccines use a tiny piece of the virus’ genetic code to teach your immune system how to make a protein that will trigger an immune response if you get infected. The mRNA does not enter the nucleus of the cell (the part that contains your DNA).

    メッセンジャーRNA(mRNA)はDNAとは異なり、DNAと結合して遺伝コードを変えることはできません。mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝コードのごく一部を使って、感染した場合に免疫反応を引き起こすタンパク質の作り方を免疫系に教えます。mRNAは細胞の核内には入りません。


主なファクトチェック

 

5.手術を予定している場合の推奨される接種時期は?

以下は日本麻酔科学会の推奨となります。(参考外部サイトにリンクし、pdfが開きます。

コロナワクチン接種後の手術時期

14日開けることが推奨されていますが、急ぐ場合は、ワクチン接種後の副反応が落ち着いていれば、接種後3日目(48時間経過後)に手術は可能とされています。(ただし、ワクチンによる抗体産生効果が低下するリスクあり。)

手術後のコロナワクチン接種時期

手術後の免疫機能の回復に1-2週間要することから、2週間あけることが推奨されています。

6.ワクチン接種後に抗体価を測定すべきですか?

現在のところワクチン接種後の抗体価とワクチン効果の関連性は未解明であり、研究目的以外での測定は推奨されていません

7.新型コロナウイルス感染症にかかった患者さんや抗体薬治療後の患者さんへの接種は?

新型コロナウイルス感染症にかかった患者さんもワクチン接種が推奨されています。最低限、感染隔離解除基準を満たしてからの接種が推奨されます。

8.エバシェルド®︎(チキサゲビマブ及びシルガビマブ)について

2022年8月に予防薬として中和抗体薬が承認されました。ワクチンに対して十分な効果を示すことができない患者さんにおける感染予防効果や感染した場合の重症化予防効果が示されています。しかし2023年に流行の主流となったオミクロン株(XBB)への効果は低いことが示されています。(参考 [外部サイトにリンクします])このため予防投与をうけるかどうかは担当の先生とご相談ください。

エバシェルドにはmRNAワクチンなどにも含まれる成分(ポリソルベート)が含まれており、mRNAワクチンへの重篤なアレルギーがある方がエバシェルド®投与を受ける場合には担当医とよくご相談ください。[参考 CDCのホームページ]

2024年1月の時点では、12歳以上のワクチンによる予防効果が期待しづらい、以下のような患者さんが投与の対象となっています。(詳しくは担当医へご相談ください。)

  • 抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者
  • B細胞枯渇療法(リツキシマブ等)を受けてから1年以内の患者
  • ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者
  • キメラ抗原受容体T細胞治療レシピエント(治療を受ける患者さん)
  • 慢性移植片対宿主病を患っている,又は別の適応症のために免疫抑制薬を服用している造血細胞移植後のレシピエント(移植治療を受ける患者さん)
  • 積極的な治療を受けている血液悪性がんの患者
  • 肺移植レシピエント
  • 固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者
  • 急性拒絶反応でT細胞又はB細胞枯渇剤による治療を最近受けた固形臓器移植レシピエント
  • CD4Tリンパ球細胞数が50cells/μl未満の未治療のHIV患者

9.その他のワクチンとの接種間隔について

肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンなど他のワクチンを接種する際には新型コロナワクチンと2週間の間隔をとることが推奨されています。ただし、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンはこの間隔は不要で、同時接種も可能です。(参考 厚生労働省 [外部サイトへリンクします]

 参考資料

COVID-19_NCCHE.png

更新日:2024年1月29日