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がん患者さんへの新型コロナワクチン接種Q & A
このページでは、がん患者さんに向けた新型コロナワクチンに関する情報を、以下の3つのカテゴリに分けてまとめています。
知りたいカテゴリを選ぶと、該当するQ&Aが表示されます。
接種の必要性・可否に関する基本的な考え方
接種することが推奨されます。その理由は以下の通りです。
1.がん患者さんは、新型コロナウイルス感染症に罹患しやすいことや、重症化しやすいことが示されています。
・特にがん薬物療法中や治療後数年以内のがん患者さん、血液がんや肺がん患者さんなど。
2.がん患者さんにおけるワクチン効果(予防効果)は低いことが知られています。
・オミクロン株の流行により、がん患者さんにmRNAワクチンを接種した場合のワクチン効果が下がっていることが知られていますが、重症化予防効果は引き続き期待できます。
・ブースター接種(追加接種)による高い重症化予防効果が示されています。オミクロン株
流行下でブースター接種を行ったがん患者さんは、初回の接種のみのがん患者さんとを比較すると、1回のブースター接種では重症感染を約8割減少させ、2回のブースター接種では約9割減少させたことが報告されています。(参考[外部サイトにリンクします])
3.現在までのところがん患者さんに特有のワクチンの副反応は報告されていません。
・mRNAワクチン接種後はわきなどのリンパ節が腫脹することがあり、CTなどの画像検査によるがんの病勢評価の前の接種には注意が必要です。
4.がん患者さんへのワクチン接種は新型コロナウイルス感染症の後遺症(罹患後症状)のリスクを減らす効果が示されています。(参考 [外部サイトにリンクします])
しかし、健康な人よりワクチン予防効果が劣ることが懸念されるため、接種後も必要に応じて(新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが流行している時期やがん薬物療法中など免疫不全が強い時、体調不良時など)人ごみでのマスクの着用や手洗い、換気をしっかりと行うなどの感染対策の継続が必要です。
また、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる場合は速やかに担当医へ相談、もしくは近医を受診し、抗ウイルス薬治療の相談をしましょう
新型コロナウイルスワクチンについて のページもご参照ください。
ワクチンの成分に重度のアレルギー(アナフィラキシーなど)がある場合は接種できません。また、接種当日に体調が悪い方も接種できません。
これ以外には接種していけない条件というものはありませんが、現在受けている治療の内容によってはワクチンの効果が弱まってしまう場合等があります。詳しくは以下の【3】・3【4】をご参照ください。
がん治療との関係・接種タイミング
がん治療中の患者さんにおける最適な接種時期はまだ分かっていません。一般的ながん薬物療法中や放射線治療中の場合は、接種できるときに接種することが望ましいと考えられます。しかし、白血球が減少するような治療を受けている場合は、白血球数が回復してからの接種が勧められます。また、抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。
同様に、その他にもワクチンの効果の減弱が懸念される治療(BCL-2阻害剤[べネトクラクス]など)もありますので、がん薬物療法中の患者さんは、接種時期について担当医にご相談ください。(受診が数ヶ月に1回のように安定されているがん患者さんのほとんどは、担当医にご相談せずとも、接種可能なときの接種で良いと考えられます。)
造血幹細胞移植患者さんやCAR-T療法後の患者さんも具体的な接種時期は担当医とご相談ください。
リンパ浮腫がある部位への接種は感染のリスクがあるため、リンパ浮腫のない腕への接種が推奨されます。両腕にリンパ浮腫がある場合は大腿部への接種も検討されますので、接種会場でスタッフへご相談ください。
ワクチン接種ががん治療の効果を低下させる根拠はないとされています。また、現在までがん患者さんを対象としたワクチンの研究は数多く行われてきていますが、ワクチンがDNAを変化させたり、がんやがんの再発原因となる根拠は示されていません。
海外の論文(総説)でも以下の様に触れられています。
「がん患者さんにおいて、COVID-19ワクチン接種ががんの再発につながるという指摘を指示する証拠も根拠もない。」(Fendler A, de Vries EGEらの報告 [Nat Rev Clin Oncol. 2022] 外部サイトにリンクします)
(For patients with cancer, there is both no evidence and no rationale whatsoever supporting the suggestion that vaccination against COVID-19 leads to cancer recurrence.)
参考となる公的機関情報
1.NCI (National Cancer Institute:米国国立がん研究所)[英語](外部サイトにリンクし、PDFが開きます)
Can COVID-19 vaccines cause cancer? Can the vaccines cause cancer to recur or make it more aggressive?
COVID-19ワクチンはがんの原因になりますか?COVID-19ワクチンによってがんの再発や、病勢が進行する原因となりますか?
There is no evidence that COVID-19 vaccines cause cancer, lead to recurrence, or lead to disease progression. Furthermore, COVID-19 vaccines do not change your DNA (i.e., your genetic code).
COVID-19ワクチンががんを引き起こしたり、再発を引き起こしたり、病勢を進行させたりするという証拠はありません。さらに、COVID-19ワクチンはあなたのDNAを変化させません。
2.Sloan Kettering記念がんセンターのHP[英語](外部サイトにリンクします)
Can the COVID-19 vaccine cause cancer?
COVID-19ワクチンはがんの原因になりますか?
No. None of the vaccines interact with or alter your DNA in any way. They cannot cause cancer. There is no truth to the myth that somehow the COVID-19 vaccine could inactivate the genes that suppress tumors.
いいえ。どのワクチンもDNAに影響を与えたり、がんを引き起こすことはありません。COVID-19ワクチンが腫瘍を抑制する遺伝子を不活性化するという俗説は真実ではありません。
Messenger RNA (mRNA) is not the same as DNA and cannot be combined with DNA to change your genetic code. The mRNA vaccines use a tiny piece of the virus’ genetic code to teach your immune system how to make a protein that will trigger an immune response if you get infected. The mRNA does not enter the nucleus of the cell (the part that contains your DNA).
メッセンジャーRNA(mRNA)はDNAとは異なり、DNAと結合して遺伝コードを変えることはできません。mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝コードのごく一部を使って、感染した場合に免疫反応を引き起こすタンパク質の作り方を免疫系に教えます。mRNAは細胞の核内には入りません。
3.MayoクリニックのHP[英語](外部サイトにリンクします)
Do COVID-19 vaccines cause cancer or make cancer harder to treat?
COVID-19ワクチンはがんを引き起こすか、またはがんの治療を困難にするのでしょうか?
No. COVID-19 vaccines are not linked to a rise in cancer or more aggressive cancer.This myth may be passed along as one person's experience. Or rarely, as a personal observation by a healthcare professional.
いいえ。COVID-19ワクチンは、がんの増加やより悪性のがんとの関連性は確認されていません。この誤った情報は、個人の経験として広まることがあります。または、まれに医療従事者の個人的な観察として伝えられることもあります。
Researchers looked at the large groups of people who got a COVID-19 vaccine, and
there is no evidence to support this myth.
研究者たちは、COVID-19ワクチンを接種した大規模な集団を調査しましたが、この誤った情報を支持する証拠は見つかっていません。
4.Blood Cancer UK(英国の血液がん患者団体)[英語](外部サイトにリンクします)
We are aware that claims have been made about a link between COVID-19 vaccines and cancer. There are no controlled, large-scale studies (studies with the most robust scientific evidence) that demonstrate an increased cancer risk following COVID-19 vaccination.
COVID-19ワクチンとがんの関連性を疑う意見がありますが、COVID-19ワクチン接種後にがんリスクが上昇することを示す、大規模な対照研究(最も信頼性の高い科学的証拠に基づく研究)は存在しません。
5.Global Vaccine Data Network(ニュージーランドのオークランド大学の非営利組織)[英語](外部サイトにリンクします)
‘Turbo Cancer’ and mRNA: The myth that defies biology and physics.
「ターボがん」とmRNA:生物学と物理学に反する神話
The invention that mRNA vaccines are causing an epidemic of aggressive cancers is unfounded, and cancer epidemiology provides no support for the "Turbo Cancer" narrative. mRNA.
mRNAワクチンが侵襲性の強いがんの流行を引き起こしているという主張は根拠がなく、がん疫学(がんの発生状況を研究する学問)も「ターボがん」という説を裏付けるものではありません。
Next time you hear "Turbo Cancer" remember it’s a theory in search of facts, and the facts just aren’t there.
次に「ターボがん」という言葉を聞いたら、それは事実を探しているだけの単なる「説」にすぎず、その事実が見つかっていない、ということを思い出してください。
主なファクトチェック
AP通信[英語](外部サイトにリンクします)
ロイター通信[英語](外部サイトにリンクします)
Factcheck.org[英語](外部サイトにリンクします)
USA TODAY[英語](外部サイトにリンクします)
AFP Fact Check[英語](外部サイトにリンクします)
以下は日本麻酔科学会の推奨となります。(参考外部サイトにリンクし、pdfが開きます。)
コロナワクチン接種後の手術時期
14日開けることが推奨されていますが、急ぐ場合は、ワクチン接種後の副反応が落ち着いていれば、接種後3日目(48時間経過後)に手術は可能とされています。(ただし、ワクチンによる抗体産生効果が低下するリスクあり。)
手術後のコロナワクチン接種時期
手術後の免疫機能の回復に1-2週間要することから、2週間あけることが推奨されています。
接種後・感染後の対応
現在のところワクチン接種後の抗体価とワクチン効果の関連性は未解明であり、研究目的以外での測定は推奨されていません。
新型コロナウイルス感染症にかかった患者さんもワクチン接種が推奨されています。最低限、感染隔離解除基準を満たしてからの接種が推奨されます。
米国臨床腫瘍学会は2024年のガイドラインで、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合は、接種を2-3ヵ月延期することを推奨しています。(外部サイトにリンクします)


