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手術予定の早期非小細胞肺がんを対象とした遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を開始~LC-SCRUM-Asiaが遺伝子スクリーニング基盤を早期肺がんまで拡大~

2022年11月18日
国立研究開発法人国立がん研究センター

注:記載の一部の情報(本文赤字部分)に誤りがございましたので訂正いたしました(2022年12月8日)。

発表のポイント

  • LC-SCRUM-Asia*1は、2022年8月29日より、手術予定の早期非小細胞肺がん患者さんを対象にした新たな遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM- Advantage/MRD」を開始しました。
  • これまでLC-SCRUM-Asiaは、「手術不能の進行肺がん」を中心に実施していましたが、今回対象になる患者さんを「手術可能な早期肺がん」まで拡大しました。
  • LC-SCRUM- Advantage/MRDでは、手術予定の早期非小細胞肺がんの遺伝子解析を行い、その遺伝子変化の特徴を明らかにしたうえで、手術前後の個別化医療を確立することを目指します。
  • 同時に、肺がんの治療中および治療後に、定期的に血液や尿を採取して遺伝子解析を行い、CTやMRIなどの画像検査より早期に微小残存病変(MRD)*2が検出可能か評価し、MRDが肺がん治療後の再発や治療効果予測につながるか検討します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市)は、肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)」の新たなプロジェクトとして、2022年8月29日より、手術予定の早期非小細胞肺がん患者さんを対象にした遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM- Advantage/MRD(エルシー・スクラム・アドバンテージ・エムアールディー」(研究代表者:東病院 副院長/呼吸器内科長 後藤 功一)を開始しました。

LC-SCRUM-Advantage/MRDでは、手術予定の早期非小細胞肺がんの遺伝子解析を行い、早期非小細胞肺がんにおける遺伝子変化の特徴を明らかにするとともに、手術前後に分子標的薬を用いた個別化医療を確立することを目指します。また、肺がんの治療中および治療後に、定期的に血液や尿を採取して遺伝子解析を行い、微小残存病変(MRD)の評価を行い、MRDで肺がん治療後の再発や治療効果予測が可能かどうか検討します。

今後も国立がん研究センター東病院は、日本およびアジアにおける肺がんの遺伝子スクリーニング基盤の構築を主導し、アジアにおけるゲノム医療の推進に取り組んでいきます。

背景

LC-SCRUM-Asiaでは、研究を開始した2013年2月から2022年8月までの約9年間で、17,000例を超える、肺がん患者さんの遺伝子解析を行い、国内における様々な分子標的薬や遺伝子診断薬の開発、臨床応用に貢献し、進行非小細胞肺がんのゲノム医療を推進してきました。2020年からは、進行・再発非小細胞肺がん患者さんを対象に、薬剤耐性遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-TRY(エルシー・スクラム・トライ)」*3も始動し、分子標的薬の耐性機序を明らかにして、薬物耐性を克服する新たな治療薬・診断薬の開発を推進しています。

現在、早期(ステージ1、2、および3の一部)非小細胞肺がんに対する標準治療は手術です。国内における約20,000例を対象とした肺がん手術例の検討では、手術前後に従来の点滴の抗がん剤治療を追加した場合でも、ステージ2や3の非小細胞肺がん患者さんの半数以上が再発し、5年生存率は40~50%と、大腸がん、胃がん、乳がんと比べて満足のいく治療成績が得られていません。そのため、遺伝子変化を有する進行非小細胞肺がんにおける分子標的薬の優れた効果をふまえて、最近では、早期非小細胞肺がんの手術前後に遺伝子変化に基づいた治療を追加し、治療成績の改善につなげる研究が行われています。しかし、遺伝子変化を有する早期非小細胞肺がんの特徴はまだ明らかではなく、十分な遺伝子解析も行われていません。

そこで今回、LC-SCRUM-Asiaでは、早期非小細胞肺がんにおける遺伝子変化の特徴を明らかにすることを目的に、手術予定の早期非小細胞肺がん患者さんを対象にした新たな遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を計画しました(図1)。

図1  LC-SCRUM-Asiaによる遺伝子スクリーニング事業の一覧

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研究概要

LC-SCRUM-Advantage/MRDでは、手術予定の早期非小細胞肺がん患者さんを対象にして、遺伝子変化のスクリーニング行います。2022年8月29日より登録を開始し、5年間で約10,000例の登録を目指します。

1.遺伝子変化に基づく手術前後の個別化医療(Advantage)

遺伝子スクリーニングには、複数の遺伝子変化を同時かつ迅速に調べることが可能なマルチ遺伝子検査を用い、Amoy Diagnostics社が開発したマルチPCR検査*4や、サーモフィッシャーサイエンティフィック社が開発した次世代シーケンサー(NGS)*5解析システム「Ion Torrent Genexus System/Oncomine Precision Assay (以下、Genexus/OPA)」を用いて遺伝子解析を行います。これら最新のマルチ遺伝子検査を用いることで、検体提出から1週間以内に遺伝子変化に関する情報を研究機関へ提供することが可能になります。もし、特定の遺伝子変化が見つかった場合、患者さんは、対応する分子標的薬の臨床試験への参加を検討できる可能性があります(図2)。

図2 早期非小細胞肺がんの遺伝子解析を行い、手術前後に分子標的薬の導入を検討する

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2.MRDによる再発リスクや治療効果予測の評価(MRD)

上記Advantageと同時に、手術、放射線治療、または薬物療法の治療予定の肺がん患者さんを対象にして、治療中や治療後、定期的に血液や尿を採取して遺伝子解析(リキッドバイオプシー*6)を行い、MRDが存在するか調べます。MRDの解析には、SeekIn社が開発した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を検査する技術やCraif社が開発した尿中マイクロRNA*7を検査する技術を用います。最新技術により、MRDの評価が肺がん治療後の再発や治療効果予測につながるか検討します。

  • 登録予定期間:2022年8月29日~2027年8月末(5年間)
  • 対象症例:主に手術予定の早期非小細胞肺がん
  • 目標症例数:10,000例
  • 解析方法:
    Advantage:Amoy Diagnostics社が開発した最新のマルチPCR検査、サーモフィッシャー サイエンティフィック社が開発したGenexus/OPAを用いたNGS解析
    MRD: ctDNAや尿中マイクロRNAを用いたMRDの解析
  • 予定参加医療機関:国内約200施設(施設情報は国立がん研究センター東病院のホームページ内にて順次公開予定)

用語解説

*1 LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)

LC-SCRUM.png

2013年より国立がん研究センターが全国の医療機関、製薬企業と協力して開始した国際的な遺伝子スクリーニング事業(代表:東病院 副院長/呼吸器内科長 後藤功一)。2019年よりその実施基盤を東アジアに拡大し、2022年8月までに17,000人以上の肺がんの患者さんが研究に参加。肺がんの新しい治療薬、診断薬の開発と臨床応用を目指して、大規模な遺伝子解析を行っている。今後も、肺がんのゲノム医療の発展を目指して、アカデミアと産業界が一体となり、新規の治療薬や診断薬の開発を推進する。

*2 微小残存病変(Minimal Residual Disease:MRD)

患者さんの体内にまだ残っているだろうと想定される微小ながん病変(細胞)のこと。現在の画像診断技術や腫瘍マーカー検査では検出困難な場合も多い。

*3 LC-SCRUM-TRY(エルシー・スクラム・トライ)

2020年9月より開始した、進行・再発非小細胞肺がん患者さんを対象にした、薬物耐性遺伝子スクリーニング研究。薬剤耐性後の検体(腫瘍組織または血液)を採取し、新たなNGS解析システム「Genexus/OPA」を用いて遺伝子解析を実施。本研究を通じて、薬物耐性を克服する新たな治療薬・診断薬の開発に貢献し、肺がん治療成績の更なる改善を目指している。

参考プレスリリース

2020年9月28日 薬剤耐性を克服する個別化医療の開発を目指して、新しい遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-TRY」を開始

*4 マルチPCR検査

同一の検体で複数の遺伝子変化を同時に検査するPCR検査法。 

*5 次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)

DNA(遺伝子)の塩基配列を、高速にかつ大量に読み取る解析装置。

*6 リキッドバイオプシー

患者さんの血液や尿などの体液を採取し、がん細胞やがん細胞由来の遺伝子を解析することにより、がんの遺伝子変化などを検出する技術。繰り返し測定可能であるため、患者さんの負担が軽減される。

*7 マイクロRNA

タンパク質の発現を抑制する機能を持つ、小さなRNA。細胞内には、多種類のマイクロRNAが存在し、様々なタンパク質の発現量を調節している。

問い合わせ先

患者さん・医療関係者・企業からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 LC-SCRUM-Asia研究事務局
電話番号:04-7133-1111(代表)
Eメール:LC-SCRUM-Asia●east.ncc.go.jp

取材・報道関係からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
電話番号:04-7133-1111(代表)  FAX:04-7130-0195  
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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