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転移性脳腫瘍に対する光線力学的療法の有効性を評価する第II相臨床試験を先進医療Bで開始治療法が限られた転移性脳腫瘍に対して選択肢の拡充を目指す

2026年6月30日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • がんが原発巣から脳に転移する転移性脳腫瘍は、がん患者さんの約10~40%に発生するとされ、毎年多数の患者さんが新たに診断されています。
  • 腫瘍が脳に転移した場合、転移性脳腫瘍に対する手術や放射線治療が必要となり、原発巣の治療が一時中断する場合があります。また、転移性脳腫瘍の治療後も一定割合で局所再発や、放射線治療に伴う副作用が生じることもあり、原発巣の治療を妨げる要因となっています。
  • 国立がん研究センター中央病院は、転移性脳腫瘍の術後再発を抑制する安全で有効な治療法を開発するため、転移性脳腫瘍の患者さんを対象に、腫瘍の摘出手術後に残存腫瘍を選択的に破壊する光線力学的療法を併用し、術後再発割合を評価する第II相臨床試験を先進医療Bで開始しました。
  • 光線力学的療法は、既に原発性悪性脳腫瘍等に対して保険適用されています。本試験により転移性脳腫瘍に対する有効性と安全性を確認できた場合は、治療法が限られた転移性脳腫瘍への適応拡大を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:間野 博行)中央病院(病院長:瀬戸 泰之)は、転移性脳腫瘍1で腫瘍の摘出手術を行う患者さんを対象に、周囲脳組織に残存している腫瘍を選択的に破壊する光線力学的療法を併用することの安全性と有効性を評価する第II相臨床試験を先進医療B注2で開始しました。
転移性脳腫瘍の治療は、腫瘍が大きい場合は摘出手術を行いますが、手術後も一定割合で局所再発や、放射線治療に伴う副作用が生じることもあります。再発や放射線障害などが起こると生活の質(QOL)が低下するだけでなく、原発巣の治療の中断や治療機会の喪失につながるため、転移性脳腫瘍の術後再発を抑制する安全で有効な治療が求められています。
本試験では、原発性悪性脳腫瘍等の治療として既に保険適用され、良好な治療成績が示されている光線力学的療法を、転移性脳腫瘍の腫瘍摘出手術に併用することの有効性と安全性を評価します。光線力学的療法は、腫瘍に選択的に集積する薬剤を用いて術中にレーザーを照射することで化学反応を起こし、薬剤が集積した腫瘍細胞を選択的に破壊する治療法です。
なお本試験は、転移性脳腫瘍における新たな治療選択肢の拡充を目的として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、先進医療B(技術名「光線力学療法)」として開始しました。

背景

転移性脳腫瘍は、がん患者さんの約10~40%に発生することが報告されており、その約半数が肺がんで、次いで乳がん、大腸がんなどが多いとされています(*1)。
転移性脳腫瘍の手術においては、腫瘍摘出後、全摘出が達成された場合は経過観察を行い、残存腫瘍がある場合には局所への放射線治療が実施されますが、手術での全摘出後に経過観察を行った場合、手術から半年後の局所再発割合は初発の患者さんで34~56%、再発の患者さんで36%と報告されています。手術後に放射線治療を行うことで再発リスクは低下しますが、一方で、約19%の患者さんに放射線脳壊死が生じる可能性が報告されています。これらは、生活の質(QOL)の低下を招き、さらには原発巣の治療機会の喪失につながるため、転移性脳腫瘍の摘出後の再発を減らす安全で有効な治療が求められています。
*1 出典:Aizer AA et al. Brain metastases: A Society for Neuro-Oncology (SNO) consensus review on current management and future directions. Neuro-Oncology. 2022;24(10):1613-1646.

図1図1 転移性脳腫瘍の浸潤パターンと摘出後の残存

光線力学的療法(Photodynamic therapy: PDT)は、腫瘍細胞に薬剤(光感受性物質)を選択的に集積させ、半導体レーザー装置を用いて特定の波長のレーザー光を照射し、光化学反応を生じさせて腫瘍細胞を破壊する治療方法です。光感受性物質を取り込んだ細胞に限局した作用を及ぼすため、正常脳組織への影響を最小限に抑えつつ、摘出腔周囲に浸潤した腫瘍細胞のみを破壊する腫瘍選択性に優れた治療効果をもたらす可能性があります。本試験で用いる光感受性物質タラポルフィン3は、1987年に報告された化合物(クロリン誘導体)第2世代の光感受性物質で、正常組織からの排泄速度が早いことが特徴です。血液中ではアルブミンと結合しているため血液脳関門を通過しないため正常脳への集積は少なく、腫瘍細胞に多く集積するとされています。
タラポルフィンを用いた光線力学的療法は、日本では2013年より原発性悪性脳腫瘍の治療として保険適用され、良好な治療成績が示されており、また早期肺がんや局所遺残再発食道がんでも高い奏効率が示されており、転移性脳腫瘍においての有効性が期待されています。なお、本試験では、Meiji Seikaファルマ株式会社が製造販売を行っている高度管理医療機器(一般名称:PDT半導体レーザ)およびタラポルフィン(製品名:注射用レザフィリン®、製造販売元:Meiji Seika ファルマ株式会社)を使用します。

図2図2 脳腫瘍に対する光線力学的療法

本試験の詳細

本試験では、初発および放射線治療後の再発転移性脳腫瘍の患者さんでの、腫瘍摘出術に光線力学的療法を併用することの安全性と有効性を評価します。有効性の主要評価項目は、6カ月間での摘出部局所再発割合とし、摘出術単独での6カ月摘出部局所再発割合(初発の転移性脳腫瘍患者さん34-55.6%、再発の転移性脳腫瘍患者さん29-35.9%)を参考とし、本試験での光線力学的療法との併用における6カ月摘出部局所再発割合の評価指標は、初発の転移性脳腫瘍患者さんでは50%、再発の転移性脳腫瘍患者さんでは35%と設定しました。

図3図3 本試験の概要

対象となる患者さん(主な適格規準)

  1. 初発および再発の転移性脳腫瘍患者(18歳-85歳)
  2. 腫瘍の全摘出が可能と予想されている
  3. 重篤な全身合併症が無く、通常の生活が可能

上記の適格規準は概要であり、試験参加には記載した以外の適格規準があります。上記に該当していてもこの試験に参加できないことがありますので、ご了承ください。

治療方法

光線力学的療法を行う22~26時間前にタラポルフィンを静脈に投与し、腫瘍摘出後に摘出腔へ半導体レーザー装置を用いてレーザー光を照射します。タラポルフィン投与後は500ルクス以下の遮光管理を行い、投与7~14日後に光線過敏性試験を行い、遮光解除の判断を行います。

予定登録患者数

本研究は次期試験の実現可能性の検討を目的とした探索研究であり、臨床的仮説を検証することを目的とした研究ではないため、統計学的仮説検定に基づく必要登録数の算出は行わず、参加施設における年間登録数等を考慮し設定しました。

初発転移性脳腫瘍:30例
再発転移性脳腫瘍:20例

研究期間

2026年5月1日から2028年12月31日(予定)

評価項目

  • 主要評価項目
    6か月摘出部局所再発割合
  • 副次評価項目
    腫瘍内タラポルフィン濃度、全生存期間、有害事象(有害反応)発生割合など

    費用

    本試験では先進医療に係る費用の自己負担はありませんが、手術、検査、入院に関する費用は、通常の保険診療と同様の自己負担が生じます。

    統括管理者

    国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科 医長 大野 誠

    その他

    本試験の詳細は、以下よりご確認ください。

    展望

    本試験では、今後、国立がん研究センター中央病院のほかにも実施施設を増やして行う予定です。治療選択が限られる転移性脳腫瘍の患者さんの治療の選択肢を拡充するため、本試験により光線力学的療法の有効性を確認できた場合は、転移性脳腫瘍に対する適応拡大を目指して、第III相臨床試験を計画する予定です。

    研究費

    • 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
      研究事業名:臨床研究・治験推進研究事業
      研究課題名:初発・再発転移性脳腫瘍への適応拡大を目指した光線力学的療法の実現可能性を探索する研究
      研究代表者名:大野 誠(国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科)

    用語解説

    注1 転移性脳腫瘍

    転移性脳腫瘍は、他の臓器で生じたがんが、血液の流れによって脳に運ばれ、そこで増えることによって発生したものです。

    注2 先進医療B

    先進医療は、保険診療として認められていない医療技術の中で、保険診療とすべきかどうかの評価が必要であると厚生労働大臣が定めた治療法(評価療養)のひとつです。効果や安全性を科学的に確かめる段階の高度な医療技術で、実施できる医療機関が限定されています。先進医療Bは、未承認の治療法を含む、または未承認の治療法を含まない場合でも臨床試験として、安全性および有効性の評価が特に必要とされる治療法で、保険外併用療養費制度のもと保険診療との併用が認められています。

    注3 タラポルフィン

    タラポルフィンは1987年Aizawaらによって報告された化合物(クロリン誘導体)で、第2世代の光感受性物質です。正常組織からの排泄速度が早いことが特徴で、血液中ではアルブミンと結合して存在するため、血液脳関門を通過せず正常な脳細胞へは取り込まれないとされています。一方で、腫瘍組織では血液脳関門が破綻・脆弱化していることと、腫瘍細胞への選択的取り込み効果により、腫瘍細胞に選択的に取り込まれ、集積するとされています。

    お問い合わせ先

    患者さんからのお問い合わせ

    国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 がん相談支援センター
    電話番号(平日9時~12時、13時~16時):
    中央病院の患者さん・ご家族 03-3547-5051
    中央病院の患者さん以外の方 03-3547-5293

    研究に関するお問い合わせ

    国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
    脳脊髄腫瘍科 大野 誠
    Eメール:ncch2501_office●ml.res.ncc.go.jp

    広報窓口

    国立研究開発法人国立がん研究センター
    企画戦略局 広報企画室
    電話番号:03-3542-2511(代表)
    Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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