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診療について

当科の起源である国立がんセンター中央病院頭頸科は病院の開設当時から存在しておりましたが、1992年に当センターの東病院が千葉県柏市に設立された後、病院間の分業化のため一旦中央病院の入院診療を中止しその機能を東病院にすべて移した経緯がありました。しかしながらその後中央病院での頭頸部診療の必要性が再度高まってきたため、再びスタッフを徐々に増員した結果、2024年4月現在では医師11名を擁し、非常に多くの頭頸部がんを扱う施設の一つになりました。また頭頸部がんの診療においては他科の医師や幅広いメディカルスタッフによるチーム医療が必須でありますが、当院では頭頸部・食道内科、放射線治療科、形成外科、歯科など関連する多くの科と密接な協力関係を築いており、また嚥下障害の専門看護師を中心とする看護師を始め、薬剤師・言語療法士・栄養士・社会福祉士などを加えた総合的な医療が行われております。

当科の特徴

年間400件を超える全身麻酔下手術件数のうち01月04日は遊離組織移植を必要とする拡大切除が必要な進行がんを扱っています。遊離組織移植においては形成外科に協力いただき、良好な機能再建を行っています。(図1)

図1 :進行口腔がんの術前(上)後(下)。
図1 :進行口腔がんの術前(上)後(下)

初回治療例のみならず、他院では手術不能とされた患者さんへの救済手術も適応があれば行っています。また、希少な病理組織型の多い鼻副鼻腔がんについては、頭蓋底手術による拡大切除(図2)に加えて、病理診断科、内科、放射線科等とのチーム連携にて集学的治療を行っています。甲状腺がんなど一部の縦隔進展症例についても可能な限り切除を行っています。

図2 :進行上顎洞がん 頭蓋底手術症例のCT(左)、頭蓋底手術の様子(右)
図2 :進行上顎洞がん 頭蓋底手術症例のCT(左)、頭蓋底手術の様子(右)

ロボット支援下手術について

がんを治すと同時に患者様の負担を減らすため、早期癌に対する低侵襲手術を積極的に行っています。特に最近では、ロボットを用いた咽喉頭がんに対する経口的ロボット支援手術(TORS= Transoral robotic surgery)を2023年7月より開始しました。手術支援ロボットの利点としては、多関節機構を持ち精細な手術が可能であること、カメラや手術器具にブレがないため安定した視野が確保できることなどが挙げられます。従来型のダヴィンチ Xiに加えてダヴィンチ SPによるTORSを2024年4月より開始しました。耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域では本邦で3施設目、がん専門施設では初の導入となります。従来型のダヴィンチXiは、アームが4本あるのに対し、ダヴィンチSPはシングルポート(アームが1本)となり、狭い口の中から操作がしやすくなり、より多くの患者さんで使用が見込まれます。(図3)

図3:ダヴィンチを用いた経口的ロボット支援手術(TORS= Transoral robotic surgery)の様子
図3:ダヴィンチを用いた経口的ロボット支援手術(TORS= Transoral robotic surgery)の様子

診療実績

外科的治療実績
  2019 2020 2021 2022 2023
開頭による頭蓋底手術
(内視鏡下頭蓋底手術を含む)
13 15 12 8 10
外耳腫瘍手術
(開頭手術を除く)
4 3 1 1
鼻副鼻腔腫瘍手術 12 16 12 36 12
口腔腫瘍手術 112 100 125 108 110
上咽頭腫瘍手術 2 1 1 0
中咽頭腫瘍手術(ロボット手術) 45 47 38 33 53(11)
喉頭・下咽頭・頸部食道腫瘍手術(内視鏡手術) 8 3 10 11 7
喉頭・下咽頭・頸部食道腫瘍手術(経口的切除) 49 50 71 82 63
喉頭・下咽頭・頸部食道腫瘍手術(喉頭温存手術) 6 17 15 6 7
喉頭・下咽頭・頸部食道腫瘍手術(喉頭全摘を含む手術) 48 38 52 43 38
甲状腺腫瘍手術 27 36 27 38 27
副甲状腺腫瘍手術 1 0 0 0 0
耳下腺腫瘍手術 25 16 23 25 20
頸部郭清術(単独) 34 43 36 64 43
その他の悪性腫瘍手術 12 4 4 5 7
副咽頭間隙腫瘍手術 2 0 0 3 3
その他の良性腫瘍手術
(良性腫瘍、生検、気切、瘻孔閉鎖など)
18 18 14 8 15
全身麻酔手術の合計
(遊離皮弁による再建手術)
418(95) 406(101) 443(118) 472(102) 416(104)
局所麻酔手術の合計 83 56  61 68 52