小児・AYA世代に多いユーイング肉腫に対する世界14か国での国際共同第III相臨床試験に日本が参加
国立がん研究センター中央病院が先進医療Bで開始
国立研究開発法人国立がん研究センター
発表のポイント
- ユーイング肉腫は、小児・AYA世代に多く、日本での年間発生数は約50人と患者数が少ない希少がんのため、企業による新薬開発が進みにくく、アカデミア主導の国際協働による開発推進が必要とされています。
- 欧州、豪州を中心とした14か国の研究機関・医療機関が参加する国際共同第III相試験に、アジア地域から初めて国立がん研究センター中央病院が参加します。
- 本試験では、初発のユーイング肉腫の患者さんを対象に、分子標的薬の追加、放射線治療の最適化、維持療法の導入など、4つの治療戦略の有用性をランダム化比較試験によって検証し、国際的な標準治療の確立を目指します。
- 本試験は、先進医療Bの制度下で実施します。今後は、国内参加施設を拡大し、臨床試験の成果を基に、日本国内での保険収載を目指します。
- アカデミアが主導する国際共同臨床試験への参画が、小児・AYA世代がんおよび希少がんのドラッグ・ラグを回避する、新たな開発手法となることが期待されます。
概要
国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:間野 博行)中央病院(病院長:瀬戸 泰之)は、小児・AYA(Adolescents and Young Adults:思春期・若年成人注1)世代に発生することが多いユーイング肉腫の国際共同第III相臨床試験(INTER-EWING-1)に参加し、先進医療B注2で開始しました。
ユーイング肉腫は希少がん注3の一種であり、国内年間発生数は約50人と少ないことから、日本だけでは大規模な臨床試験の実施が難しいとされてきました。近年、世界各国が連携し、ユーイング肉腫の新たな国際的標準治療の確立と治療成績の向上を目的とした国際共同臨床試験が開始されました。本試験に日本の施設が参加することにより、日本の患者さんに世界標準の治療開発への参加機会を創出し、将来的には日本国内での保険収載に向けた重要な科学的根拠となり、ドラッグ・ラグのない臨床実装につながることが期待されます。
本試験は、全ての病期の初発のユーイング肉腫患者さんを対象とした包括的な臨床研究プログラムで、分子標的薬の追加、放射線治療の最適化、維持療法の導入など、4つの治療戦略の有用性をランダム化比較試験注4によって検証します。本試験には、ヨーロッパ各国、オーストラリア、ニュージーランドなど14か国の施設が参加し、日本からは国立がん研究センター中央病院が先駆けて参加します。今後、約10年間かけて、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて本試験を実施します。
背景
ユーイング肉腫は、主に小児・AYA世代の骨や軟部組織に発生する悪性腫瘍で、日本では年間発生数が約50人と少ないため、希少がんの一つとされています。10歳代の思春期(中学生や高校生くらいの年齢)に発症する患者さんが全体の約3分の2を占めるほか、5歳から30歳までの患者さんで全体の約90%を占めることが知られています。*1
ユーイング肉腫に対する治療としては、まず抗がん剤による化学療法で腫瘍を縮小させ、その後、手術や放射線治療によって原発巣を治療し、さらにその後にも化学療法を行う方法が標準的です。しかし、特に初診時に遠隔転移を有する患者さんの治療成績は不良であり、新たな治療開発が求められています。また、ユーイング肉腫は希少がんであることから、企業による新薬開発が進みにくく、アカデミア主導の国際協働による開発推進が必要とされています。
*1 出典:小児慢性特定疾病情報センター「ユーイング(Ewing)肉腫」
https://www.shouman.jp/disease/details/01_05_040/(外部サイトにリンクします)
本試験の詳細
本試験は、初発のユーイング肉腫またはユーイング肉腫類似の円形細胞肉腫に対し、日本では未承認の薬剤(レゴラフェニブ)や維持療法(ビノレルビン+シクロホスファミド)の有効性を国際共同第III相臨床試験として検証します。
ランダム化A: レゴラフェニブ併用多剤化学療法
転移性ユーイング肉腫患者さんを対象に、標準的な化学療法である VDC/IE療法注5に分子標的薬レゴラフェニブを追加することで、VDC/IE単独療法と比較して予後改善につながるかどうかを評価します。
ランダム化B1: 切除不能例に対する根治的放射線療法
放射線治療はユーイング肉腫における重要な治療法ですが、治療効果と晩期合併症注6の抑制とのバランスが課題となっています。本試験では、切除不能例に対する根治的放射線療法として、標準線量群と高線量群を比較することで、治療効果の向上の検証を行います。
ランダム化B2: 切除例に対する補助放射線療法
本試験では、手術後の補助放射線療法において、従来行われてきた標準線量群と、放射線照射量を減量した減量線量群とを比較することで、治療効果を維持しながら副作用の軽減や生活の質(QOL)の維持につながる、最適な放射線線量を検証します。
ランダム化C: 維持化学療法
維持療法注7としてのビノレルビン+シクロホスファミド併用療法は、忍容性が比較的高く、生存期間延長への効果が期待されています。本試験では、ビノレルビン+シクロホスファミドによる維持療法群と、維持療法なし群を比較し、地固め療法注8終了後に維持療法を追加することで予後が改善するかどうかを評価します。

試験名
初発ユーイング肉腫の成績向上のための国際臨床研究プログラム – Trial 1 (NCCH2411)
対象となる患者さん(主な適格規準)
- 初発の骨・軟部組織発生のユーイング肉腫、またはEWSR1-FLl1遺伝子再構成が陰性で"Ewing-like tumors"と診断される円形細胞肉腫
- 年齢が2歳以上
上記の適格規準は概要であり、試験参加には記載した以外の適格規準があります。上記に該当していてもこの治験に参加できないことがありますので、ご了承ください。
予定登録患者数
試験全体で900名
研究期間
2026年5月1日から2037年12月31日
評価項目
- 主要評価項目
無イベント生存期間 - 副次評価項目
ランダム化A:寛解導入/強化療法の全生存率(OS)、毒性、QOL、組織学的効果判定(手術を行った場合)
ランダム化B1:放射線療法の無局所再発生存期間(LVFS)、全生存率(OS)、毒性、局所制御達成割合、放射線治療後の急性毒性、晩期毒性、QOL
ランダム化B2:放射線療法の無局所再発生存期間(LVFS)、全生存率(OS)、毒性、局所制御達成割合、放射線治療後の急性毒性、晩期毒性、QOL
ランダム化C:維持療法の全生存率(OS)、毒性、QOL
費用
本試験では先進医療に係る費用の自己負担はありませんが、検査、入院に関する費用は、通常の保険診療と同様の自己負担が生じます。
統括管理者
国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科 科長 荒川 歩
その他
本試験の詳細は、以下よりご確認ください。
-
jRCT 臨床研究実施計画・研究概要公開システム
jRCT 番号:jRCTs031260085
URL:https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCTs031260085(外部サイトにリンクします)
展望
本試験は、国立がん研究センター中央病院で実施し、今後は参加施設を拡大する予定です。本試験への取り組みを通じて、日本における小児・AYA世代がんや希少がん領域の研究・診療基盤を国際水準で強化するとともに、その領域の薬剤開発の加速と将来の保険適用に向けたエビデンスの創出、ドラッグ・ラグの解消を目指してまいります。
研究費
- 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
研究事業名:臨床研究・治験推進研究事業
研究課題名:初発ユーイング肉腫に対する標準治療に新規医薬品を導入した国際多施設共同ランダム化試験(INTER-EWING-1)
研究代表者名:岩田 慎太郎(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
用語解説
注1 AYA世代
AYA(アヤ)世代とは、Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、概ね15歳から39歳の患者さんに当たります。小児に好発するがんと成人に好発するがんがともに発症する可能性がある年代であり、肉腫など、AYA世代に多い特徴的ながんも存在します。従って、この年代のがんの診療には、小児および成人専門の医師、看護師をはじめ、多職種が連携して診療を行うことがとても重要です。また患者さんも中学生から社会人、子育て世代とライフステージが大きく変化する年代であり、患者さん一人ひとりのニーズに合わせた支援が必要となってきます。
注2 先進医療
先進医療は、保険診療として認められていない医療技術の中で、保険診療とすべきかどうかの評価が必要であると厚生労働大臣が定めた治療法(評価療養)のひとつです。効果や安全性を科学的に確かめる段階の高度な医療技術で、実施できる医療機関が限定されています。先進医療Bは、未承認の治療法を含む、または未承認の治療法を含まない場合でも臨床試験として、安全性および有効性の評価が特に必要とされる治療法で、保険外併用療養費制度のもと保険診療との併用が認められています。
注3 希少がん
一般に人口 10 万人当たり6例未満で、数が少ないため診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きい疾患を指します。希少がん全体では全がん患者推定罹患率の9~22%を占めますが、それぞれの希少がん疾患は、非希少がんの8~10分の1の推定罹患率であり、研究・薬剤開発がなかなか進まない状況にあります
注4 ランダム化比較試験
登録された患者さんをランダムに各治療群に割り付け治療成績を比較する、検証的な臨床試験のことです。
注5 VDC/IE療法
VDC/IE療法は、複数の抗がん剤を組み合わせて使う治療法で、ユーイング肉腫などに対して行われます。2つの治療(VDC療法とIE療法)を交互に繰り返すことで、異なる仕組みでがん細胞を攻撃し、治療効果を高めることを目指します。
注6 晩期合併症
がん治療(手術、放射線治療、化学療法など)を受けた後、治療終了から一定期間を経てから発現するさまざまな健康上の問題を指します。具体的には、心機能障害や内分泌異常、神経障害、二次がんの発生などが含まれ、長期的な経過観察や適切なフォローアップが重要となります。
注7 維持療法
初期治療により病状の安定が得られた後、その状態を長期間維持し、再発や病勢の進行を抑制することを目的として継続的に行われる治療です。一般に、長期投与を前提として副作用に配慮した治療法が選択されます。
注8 地固め療法
寛解導入療法により病状の改善が得られた後、体内に残存する可能性のあるがん細胞を排除し、再発リスクの低減を目的として実施される治療です。主に化学療法などにより治療強度を維持しつつ、治療効果の持続性向上を図ります。
お問い合わせ先
患者さんからのお問い合わせ
国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 がん相談支援センター
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中央病院の患者さん・ご家族 03-3547-5051
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研究に関するお問い合わせ
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小児腫瘍科 荒川 歩
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