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HER2陰性胃がんに対する一次治療としての、ONO-4578、ニボルマブ及び化学療法の併用が無増悪生存期間を有意に延長

2026年6月3日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 本研究では、HER2陰性の切除不能または転移性胃・食道接合部・食道腺がん (以下胃がん)に対し、EP4阻害剤ONO-4578+抗PD-1抗体ニボルマブと化学療法併用が、従来の標準治療であるニボルマブ+化学療法と比較して無増悪生存期間を有意に延長することを確認しました。
  • 無増悪生存期間の中央値は、EP4阻害剤ONO-4578+ニボルマブ+化学療法群は9.0か月で、プラセボ+ニボルマブ+化学療法群の6.9か月と比較して有意に良好であり、増悪もしくは死亡までのリスクを33%軽減したことが確認されました。
  • 全生存期間も、ONO-4578+ニボルマブ+化学療法群で中央値未到達と、プラセボ+ニボルマブ+化学療法群の12.7か月よりも良好な傾向を示しました (死亡リスクを40%軽減)。
  • ONO-4578を含む治療群では貧血や下痢などが多く認められましたが、多くは早期に発現し管理可能であり、新たな安全性上の懸念は確認されませんでした。
  • 本研究は、日本・韓国・台湾で行われた多施設共同ランダム化第II相試験としてHER2陰性胃がんに対する新たな療選択肢の可能性を示した意義が評価され2026年6月1日に科学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載されました。
  • 本試験は東アジアで行われたランダム化第II相試験であり、探索的な位置づけとなります。承認に至るためには、今後、グローバルでのランダム化第III相試験での検証が必要となります。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:間野 博行、東京都中央区)東病院(病院長:土井 俊彦、千葉県柏市)設楽 紘平消化管内科長、中山厳馬医員らの研究グループは、HER2陰性注1の切除不能または転移性胃・食道接合部・食道腺がん(以下胃がん)に対する一次治療として、経口EP4阻害剤ONO-4578を用いた治療の有効性と安全性を検討するため、小野薬品工業株式会社が実施した東アジアでの第II相無作為化比較試験「ONO-4578-08試験」に参加しました。

本試験では、未治療のHER2陰性進行胃がん患者さんを対象に、ONO-45782ニボルマブ (抗PD-1抗体) 3+化学療法、またはプラセボ+ニボルマブ+化学療法の2群に無作為に割り付け、主要評価項目である無増悪生存期間を比較しました。その結果、ONO-4578を含む試験治療群は無増悪生存期間を有意に延長し、全生存期間でも良好な傾向が確認されました。安全性については、ONO-4578併用群で貧血や下痢が増加することが認められたものの、大部分は低グレード4で管理可能であり、新たな安全性上の懸念は確認されませんでした。

本研究は、HER2陰性胃がんに対する新たな一次治療選択肢の可能性を示した意義が評価され2026年6月1日に科学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載されました。

背景

胃がんは世界的に依然として予後不良な疾患であり、HER2陰性の胃がんは全体の80%程度を占めます。一次治療では化学療法に抗PD-1抗体であるニボルマブまたはペムブロリズマブを加えた療法が標準治療とされてきました。これらの免疫チェックポイント阻害薬の併用により治療成績の改善がみられる一方で、依然として治療効果には限界があり、より有効な治療薬の開発が求められていました。

EP4は免疫療法に抵抗性を示す細胞集団(骨髄由来抑制細胞や抑制性マクロファージ、リンパ球)の細胞表面に発現する受容体の一つです。がん細胞は、プロスタグランジンE2(PGE2)と呼ばれる生体内で作り出される脂質を分泌し、PGE2がEP4に結合すると、免疫抑制性細胞が活性化して、がん細胞を攻撃するリンパ球の働きを抑制することが知られています。ONO-4578はEP4に結合することで、リンパ球の働きが抑制されることを防ぎます。ニボルマブと併用することで、免疫療法の効果をさらに高めることが期待されています。これまでに、第I相試験において、ONO-4578とニボルマブを併用することで有望な治療効果と管理可能な安全性を示しました。その結果、プラセボ+ニボルマブ+化学療法を対照群として、ONO-4578+ニボルマブ+化学療法の効果と安全性を検討するランダム化比較第II相試験(ONO-4578-08)が行われました。

研究成果(方法・結果)

ONO-4578-08試験では、2024年1月から2024年9月までに日本、韓国、台湾の主要施設でHER2陰性胃がんを有する計226例の患者さんが登録され、ONO-4578+ニボルマブ+化学療法群(150例)、プラセボ+ニボルマブ+化学療法群(76例)に2:1の割合で無作為に割り付けられました。主要評価項目は無増悪生存期間でした。解析時点で治療継続をしていた割合は、ONO-4578+ニボルマブ+化学療法群32.0%、プラセボ+ニボルマブ+化学療法30.3%であり、後治療は、ONO-4578群で47.3%、プラセボ群の48.7%に行われていました。

主要評価項目である無増悪生存期間(図1)において、ONO-4578+ニボルマブ+化学療法群の中央値は9.0か月(95%信頼区間:7.1–11.1か月)であり、プラセボ+ニボルマブ+化学療法群の 6.9か月 (95%信頼区間:4.4–8.4か月)を有意に上回りました (増悪もしくは死亡リスクのハザード比0.67, P=0.040)。

図1. 無増悪生存期間の生存曲線
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副次評価項目の一つである生存期間中央値は、ONO-4578群は未到達であったのに対してプラセボ群では12.7か月でした(図2)。フォローアップ期間を延長した追加解析においても、生存期間の中央値がONO-4578群で18.6か月、プラセボ群で14.2か月とONO-4578群で良好な傾向が維持されていることを確認しました(死亡リスクのハザード比0.68)。奏効割合はONO-4578群で62.0%、プラセボ群では48.7%で、そのうち完全奏効が得られた割合はそれぞれ2.7%と0%でした。奏効期間の中央値は、それぞれ8.5か月、6.6か月と、ONO-4578を含む治療群でより長い傾向を示しました。

図2.生存期間の生存曲線
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探索的な解析ではあるものの無増悪生存期間においてONO-4578併用の効果はPD-L1発現 (Combined Positive Score; CPS)5が1以上の症例で特に良好であることが示唆されました。

有害事象については、グレード3以上の有害事象はONO-4578+ニボルマブ+化学療法群、プラセボ+ニボルマブ+化学療法群において、それぞれ79.2%、69.3%に認められました。ONO-4578を中止するに至った有害事象は8.1% (プラセボ群:1.3%) に発生しました。ONO-4578併用群では貧血や下痢が重要な毒性で、グレード3以上の貧血、下痢はそれぞれのONO-4578群で36.9%、10.1%に認められましたが管理可能でした。ONO-4578併用群では消化管潰瘍が軽微なものも含めると7.4%(プラセボ群:1.3%)、重篤な有害事象が2.7%(プラセボ群:0%)に認められましたが、予防的なプロトンポンプ阻害剤の内服を行うことで管理可能であると考えられます。

展望

本研究は、HER2陰性胃・食道接合部腺がんの一次治療において、ONO-4578を含む治療が無増悪生存期間を改善し、さらに全生存期間においても良好な傾向を示しました。しかしながら、本研究は東アジアで行われたランダム化第II相試験であり、探索的な位置づけです。今後は、より大規模な国際共同ランダム化第III相試験において、ONO-4578の上乗せ効果の検証が予定されています。

論文情報

雑誌名

Journal of Clinical Oncology

タイトル

EP4 Antagonist ONO-4578 Plus Nivolumab and Chemotherapy in HER2-Negative Unresectable Advanced or Recurrent Gastric or Gastroesophageal Junction Cancer

著者

Izuma Nakayama, Min-Hee Ryu, Sung Hee Lim, Jong Gwang Kim, Takeshi Omori, Sang Cheul Oh, Jin Young Kim, Sun Young Rha, Keun-Wook Lee, Nozomu Machida, Sun Jin Sym, Yukiya Narita, Young-Iee Park, Hiroki Hara, Hisashi Hosaka, Beodeul Kang, In-Ho Kim, Li-Yuan Bai, Yoshinori Hirashima, Shunsuke Hagihara, Takanori Yamamoto, Kohei Shitara

DOI

10.1200/JCO-26-01072

掲載日

2026年6月1日

URL

https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO-26-01072 (外部サイトにリンクします)

研究費

研究費名(支援先)

小野薬品工業株式会社

研究課題名

ONO-4578-08:HER2 陰性で化学療法未治療の切除不能な進行又は再発胃がん(食道胃接合部がんを含む)を有する被験者を対象とした ONO-4578、ニボルマブ、及び化学療法の併用療法の有効性及び安全性をプラセボ、ニボルマブ及び化学療法の併用療法と比較する試験

研究代表者名

小野薬品工業株式会社

用語解説

注1 HER2陰性胃がん

HER2発現を認めない胃がんのこと。免疫染色でHER2蛋白発現を分類し、発現がない(0)または弱陽性(1+)の場合か、中等度陽性(2+)かつ遺伝子増幅(ISH法による)を認めない場合のこと。

注2 ONO-4578

活性化した免疫細胞の作用を抑制する働きを担う、骨髄由来の免疫抑制性細胞に発現する受容体EP4に結合する経口剤。ONO-4578がEP4に結合することで、免疫抑制細胞によるリンパ球の抑制を防ぎ、免疫チェックポイント阻害剤の効果を高めることが期待されています。

注3 ニボルマブ(Nivolumab)

プログラム細胞死1(PD-1)受容体を標的とする免疫チェックポイント阻害抗体。がん細胞はPD-L1を発現し、リンパ球表面のPD-1と結合すると、リンパ球の活性化にブレーキをかけることができます。このようにして、がん細胞がリンパ球からの攻撃を逃れている際に、免疫チェックポイント阻害剤を用いると、リンパ球活性化のブレーキを解除し、リンパ球が再びがん細胞を攻撃できるようになります。

注4 グレード

副作用はCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)の規準に従って判断される。これは、がん治療や薬剤使用による有害事象の重症度を評価するための国際的に用いられる基準である。グレード1から5までの5段階で分類され、グレードが高いほど重症度が高いことを示す。

注5 PD-L1(CPS:Combined Positive Score)

PD-L1発現を評価する指標の一つで、がん細胞だけでなくがん細胞周囲の免疫細胞に発現するPD-L1陽性領域の割合。本試験では前向きに評価された。

お問い合わせ先

  • 研究に関するお問い合わせ
    国立研究開発法人国立がん研究センター東病院
    消化管内科 中山 厳馬
    電話番号:04-7133-1111(代表)
    Eメール:iznakaya●east.ncc.go.jp
  • 広報窓口
    国立研究開発法人国立がん研究センター
    企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
    電話番号:04-7133-1111(代表)
    Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp 

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