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糖鎖間相互作用が細胞膜を組織化する新原理を発見~糖脂質が微小膜領域を形成し、がんに関わるEGF受容体の活性を抑制~

2026年8月27日
岐阜大学
国立がん研究センター
沖縄科学技術大学院大学

本研究のポイント

  • 本研究では、これまで確認されてこなかった、同じ細胞膜上の糖鎖同士が弱く一時的に結合する現象「cis糖鎖間相互作用」を、生きた細胞膜上で直接捉えることに成功しました。
  • 糖脂質の一種であるガングリオシドは、この相互作用によって同種2分子からなる短寿命の二量体を形成し、コレステロールによって安定化された微小な膜領域をつくることを明らかにしました。
  • ガングリオシドGM3の二量体は、がんに関わるEGF受容体(EGFR)の糖鎖と相互作用し、EGFRの二量体化と活性化を抑制することが分かりました。
  • 本研究は、これまで主にタンパク質と脂質の相互作用によって説明されてきた細胞膜の組織化に、「糖鎖間相互作用」という新たな基本原理を加えるものです。さらに、一回ごとの結合は短寿命であっても、形成と解離を繰り返すことで、細胞膜の構造と受容体シグナルを持続的に制御できることを示しました。本成果は、糖鎖生物学に留まらず、膜生物学、受容体シグナル研究、がん研究、創薬研究への波及が期待されます。

本研究のポイント

研究概要

岐阜大学糖鎖生命コア研究所/国立がん研究センター研究所先端バイオイメージング研究分野の鈴木健一教授/分野長、岐阜大学糖鎖生命コア研究所の安藤弘宗教授、河村奈緒子准教授、沖縄科学技術大学院大学の楠見明弘教授らの研究グループは、京都大学、名古屋大学、神戸大学、中部大学との共同研究により、同じ細胞膜上の糖鎖同士が直接相互作用し、細胞膜を組織化する新たな原理を発見しました。さらに、この糖鎖間相互作用が、がんに関わるEGF受容体(EGFR)の二量体化と活性化を抑えることを明らかにしました。EGFRは細胞の増殖や生存を制御する受容体であり、その過剰な活性化は多くのがんの発生や進展に関係します。
細胞の表面は、多種多様な糖鎖で覆われていますが、同じ細胞膜上で糖鎖同士が直接相互作用し、膜の構造や情報伝達を制御するかどうかについては、長年、直接的な証拠が得られず、未解明のままでした。
本研究では、39種類の蛍光標識ガングリオシドを全化学合成し、1分子イメージングを用いることで、糖鎖同士が弱く一時的に結合する「糖鎖間相互作用」を生きた細胞膜上で直接捉えることに成功しました。さらに、この相互作用によって微小な膜領域が形成され、GM3の糖鎖とEGFRの糖鎖との相互作用が、EGFRの二量体化と活性化を抑えることを明らかにしました。一回の相互作用は約0.1秒と短寿命ですが、GM3ホモダイマーは形成と解離を繰り返しながらEGFRに何度も結合することで、受容体の不要な活性化を持続的に抑えていました。
本成果は、細胞膜の構造と情報伝達が、タンパク質や脂質だけでなく、糖鎖同士の弱く一時的な相互作用によっても組織化されることを示すものです。膜生物学と受容体シグナル研究の基本概念を広げるとともに、がんに関わるEGFRの新たな活性制御機構を明らかにしたことで、糖鎖を標的とする創薬研究への展開が期待されます。
本研究成果は、日本時間2026年8月27日にNature Communications誌のオンライン版で発表されました。

論文情報

雑誌名

Nature Communications

論文タイトル

Cis glycan-glycan interactions organize membrane nanodomains that tune receptor signaling

著者

Kenichi G. N. Suzuki†*, Naoko Komura†, Sachi Asano, Maina Takahashi, Eriko Yamaguchi, Ayano Yamazaki, Akihiro Imamura, Shusaku Shibutani, Rahul Chadda, Taka A. Tsunoyama, Takahiro K. Fujiwara, Koichiro M. Hirosawa, Kenichi Morigaki, Koichi Furukawa, Keiko Furukawa, Yoshio Yamauchi, Yukichi Kitamura, Masataka Nagaoka, Hiromune Ando*, Akihiro Kusumi*
†共同筆頭著者, *責任著者

DOI

10.1038/s41467-026-76857-x

URL

https://www.nature.com/articles/s41467-026-76857-x(外部サイトにリンクします)

詳細

詳細は関連ファイルのPDFをご覧ください。

問い合わせ先

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

 

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