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食道がんに対するニボルマブ併用療法の長期治療成績を確認~CheckMate 648試験長期追跡結果~

2026年10月1日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 食道がんの進行・再発例は予後不良であり、従来の化学療法単独治療では長期生存が難しい状況が続いていました。
  • 国際共同第III相試験(CheckMate 648試験)により、ニボルマブ+化学療法およびニボルマブ+イピリムマブが有効であることが示され、現在は食道がんの標準治療として広く用いられています。
  • 本研究では、これらのニボルマブ併用療法について5年間の追跡結果を解析し、化学療法単独群と比較して全生存期間の改善が5年後も維持されることを確認しました。
  • 本研究成果は、現在の標準治療として用いられているニボルマブ併用療法の長期的な有効性を裏付けるものです。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:間野 博行)中央病院(病院長:瀬戸 泰之)頭頸部・食道内科長の加藤 健らの国際共同研究グループは、食道がんに対する現在の標準治療であるニボルマブ注1併用療法の長期的な有効性を、国際共同第III相試験(CheckMate 648試験)の長期追跡解析により確認しました。

進行・再発食道がんは予後不良であり、従来の化学療法単独治療では生存期間中央値が約10か月、5年生存割合は5%未満と報告されていました。その後、CheckMate 648試験において、ニボルマブ+化学療法およびニボルマブ+イピリムマブ注2が化学療法単独と比較して全生存期間注3を改善することが示され、現在は食道がんの一次治療の標準治療として広く用いられています。しかし、これらの治療による効果が長期間維持されるかについては十分な検証が求められていました。

本試験では、治療歴のない切除不能進行・再発または転移性食道扁平上皮がん注4の患者さん970人を、ニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法単独群の3群に無作為に割り付け、全生存期間、無増悪生存期間注5および安全性を評価しました。

その結果、ニボルマブを含む2つの治療群は、化学療法単独群と比較して全生存期間の改善を5年追跡時点でも維持しました。腫瘍細胞のPD-L1注6発現が1%以上の患者さんにおける5年生存割合は、ニボルマブ+化学療法群12%、ニボルマブ+イピリムマブ群18%、化学療法単独群7%でした。また、長期追跡による新たな安全性上の懸念は認められませんでした。

今回の結果は、現在標準治療として用いられているニボルマブ併用療法の長期的な有効性を裏付けるものであり、食道がん患者さんにおける長期生存の可能性を示す重要な成果です。

本研究成果は、2026年8月10日付で国際医学誌「Annals of Oncology」にオンライン掲載されました。

背景

食道がんは日本を含むアジアで多くみられるがんであり、本研究の対象である食道扁平上皮がんは、日本人の食道がんで最も多い組織型です。進行・再発食道がんは予後不良であり、従来の化学療法による生存期間中央値は約10か月、5年生存割合は5%未満と報告されています。

CheckMate 648試験では、進行・再発食道扁平上皮がんに対し、ニボルマブ+化学療法およびニボルマブ+イピリムマブが、化学療法単独と比較して全生存期間を改善することが示されました。その結果、ニボルマブ併用療法は、現在は食道がんに対する標準的な一次治療として広く用いられています。

一方、これらのニボルマブ併用療法による治療効果が長期間維持されるかについては十分なデータがなく、長期的な有効性を確認することが重要な課題となっていました。そこで本研究では、CheckMate 648試験の5年追跡解析を実施し、長期治療成績を評価しました。

研究成果(方法・結果)

本研究は、治療歴のない切除不能進行・再発または転移性食道扁平上皮がんの患者さん970人を対象とした国際共同第III相試験です。患者さんをニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法単独群の3群に無作為に割り付け、全生存期間、無増悪生存期間および安全性を評価しました。

本試験では、腫瘍細胞におけるPD-L1陽性細胞が1%以上の患者さんを対象とした全生存期間および無増悪生存期間を主要評価項目として解析するとともに、全患者集団における有効性についても評価しました。

図1 CheckMate 648試験デザイン

腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞が1%以上の患者さんにおいて、死亡リスクは化学療法単独群と比較してニボルマブ+化学療法群で38%低下しました(ハザード比0.62、95%信頼区間0.48~0.79)。さらに、全患者集団においても、ニボルマブ+化学療法群は、化学療法単独群と比較して死亡リスクを23%低下させました(ハザード比0.77、95%信頼区間0.65~0.92)。(図2-1)。

また、腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞が1%以上の患者さんにおいて、死亡リスクは化学療法単独群と比較してニボルマブ+イピリムマブ群は、38%低下しました(ハザード比0.62、95%信頼区間0.48~0.80)。さらに、全患者集団においても、ニボルマブ+イピリムマブ群は、化学療法単独群と比較して死亡リスクを23%低下させました(ハザード比0.77、95%信頼区間0.65~0.92)。(図2-2)

ハザード比:ある時点における事象発生リスクを2群間で比較した指標です。治療群と対照群を比較する場合、1未満の値は治療群のリスクが低いことを示します。

図2-1 化学療法単独群と、ニボルマブ+化学療法群の比較
~全患者集団および、腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞が1%以上の集団における全生存期間
全生存期間の比較

図2-2 化学療法単独群と、ニボルマブ+イピリムマブ群の比較
~全体集団および、PD-L1>1%集団における全生存期間
全生存期間の比較

ニボルマブ+化学療法群における5年生存割合は、腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞が1%以上の集団で12%、全患者集団では13%、ニボルマブ+イピリムマブ群における5年生存割合は、腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞が1%以上の集団で18%、全患者集団では7%でした。化学療法単独群における5年生存割合は、腫瘍細胞のPD-L1陽性細胞が1%以上の集団で7%、全患者集団では9%でした。ニボルマブ+化学療法群および、ニボルマブ+イピリムマブ群は、化学療法単独群と比較して、5年時点でも全生存期間の改善を維持していました。

無増悪生存期間については、ニボルマブ+化学療法群は化学療法単独群と比較して改善を示しました(ハザード比0.67、95%信頼区間0.51~0.88)。一方、ニボルマブ+イピリムマブ群では改善を認めませんでした(ハザード比1.03、95%信頼区間0.78~1.35)。

グレード3または4の治療関連有害事象は、ニボルマブ+化学療法群49%、ニボルマブ+イピリムマブ群33%、化学療法単独群37%でした。安全性プロファイルはこれまでの報告と一致し、長期追跡による新たな安全性上の懸念は認められませんでした。

本試験の結果は、現在標準治療として用いられているニボルマブ併用療法の長期的な有効性を裏付けるものであり、食道がん患者さんにおける長期生存の可能性を示しました。

展望

ニボルマブ+化学療法およびニボルマブ+イピリムマブは、食道がんに対する一次治療の標準治療として用いられています。今回の結果は、これらの治療による全生存期間の改善効果が5年後も維持されることを示し、現在の標準治療の長期的な有効性を裏付けるものです。

今後は、免疫療法によって長期生存が期待できる患者さんを予測するバイオマーカーの探索や、さらなる治療成績向上に向けた研究開発が期待されます。国立がん研究センターは引き続き、食道がん患者さんの治療成績向上を目指した研究開発を推進します。

論文情報

雑誌名

Annals of Oncology

タイトル

Nivolumab plus chemotherapy or ipilimumab versus chemotherapy as first-line treatment for advanced esophageal squamous cell carcinoma: 5-year follow-up results from CheckMate 648

著者

Ken Kato, Jaffer A. Ajani, Yuichiro Doki, Jianming Xu, Lucjan Wyrwicz, Satoru Motoyama, Takashi Ogata, Hisato Kawakami, Chih-Hung Hsu, Antoine Adenis, Farid El Hajbi, Maria Di Bartolomeo, Maria Ignez Braghiroli, Eva Holtved, Tomoki Makino, Mariela Blum Murphy, Jinpu Zhang, Padmanee Sharma, Bowen He, Ming Lei, Yasuhiro Matsumura, Yuko Kitagawa, Ian Chau

DOI

10.1016/j.annonc.2026.08.001

掲載日

2026年8月10日(オンライン掲載)

URL

https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(26)01455-9/fulltext

研究費

本試験は、Bristol Myers Squibb(Princeton, NJ, USA)の支援を受けて実施されました。
治療歴のない切除不能進行・再発または転移性食道扁平上皮がん患者を対象に、ニボルマブ+化学療法またはニボルマブ+イピリムマブと化学療法を比較した国際共同第III相試験(CheckMate 648試験、NCT03143153)

用語解説

注1 ニボルマブ

免疫チェックポイント阻害薬の一つで、免疫細胞に発現するPD-1と、そのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との結合を阻害します。PD-1を介した免疫抑制を解除し、がん細胞に対する免疫反応を回復させます。

注2 イピリムマブ

免疫チェックポイント阻害薬の一つで、免疫細胞の活性化を抑制するCTLA-4を標的とします。CTLA-4を介した抑制を解除することで、免疫細胞の活性化と増殖を促します。

注3 全生存期間(Overall Survival:OS)

治療開始または試験登録から、原因を問わず死亡するまでの期間です

注4 食道扁平上皮がん

食道の内側を覆う扁平上皮から発生するがんです。日本を含むアジアでは、食道がんの多くを占める組織型です。

注5 無増悪生存期間(Progression-Free Survival:PFS)

治療開始または試験登録から、がんの増悪または原因を問わない死亡までの期間です。

注6 PD-L1

がん細胞などに発現するタンパク質です。PD-L1が免疫細胞に発現するPD-1と結合すると、免疫反応が抑制されます。本試験では、腫瘍細胞におけるPD-L1発現割合1%以上の患者さんを対象とした主要解析を行いました。

お問い合わせ先

研究に関するお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
頭頸部・食道内科 加藤 健
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:kenkato●ncc.go.jp

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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