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JCOG1111試験:患者さん・ご家族の方へ

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)について

ATLとは

成人T細胞白血病・リンパ腫(がん情報サービスにリンクします)(Adult T-cell Leukemia-lymphoma:ATL) とは、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)によって引き起こされる血液のがんの一種です。

HTLV-1キャリア(HTLV-1に感染しているものの、特に症状のない健康な人)は、九州・沖縄地方など、西・南日本の沿岸部に多くみられ、ATLもこれらの地域を中心に多発します。近年では人口の移動に伴い、その他の地域での発生も以前より増えています。

発症する人の数は30歳代ぐらいから徐々に増え始め、60歳代でピークに達し、その後徐々に減少していきます。HTLV-1キャリアの人のうち、年間1,000人に1人がATLを発症し、母乳で感染したキャリアの人が生涯にATLを発症する確率は5%程度といわれています。

ATLの臨床病態は非常に多彩ですが、大きく「急性型」、「リンパ腫型」、「慢性型」、「くすぶり型」の4つのタイプに分けられます(図1参照)。このうち、慢性型は血液生化学検査の結果にもとづいて「慢性型(予後不良因子あり)」と「慢性型(予後不良因子なし)」に分けられます。

これらのタイプは、病気の進行の早さや予後によって、「高悪性度ATL:急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型」と「低悪性度ATL:予後不良因子を有さない慢性型、くすぶり型」の2つに大別されます。

図1:ATLの分類
図1:ATLの分類

本邦でのATLの治療

現在日本では、進行の早い高悪性度ATLに対しては、強力な化学療法を行うことが標準治療とされています。さらに可能な場合には、同種造血幹細胞移植が行われています。

一方、進行がゆるやかな低悪性度ATLは、通常の抗がん剤による治療では予後は改善しないと考えられており、全身化学療法はせず、定期的に経過を観察する「無治療経過観察」が一般的でした。

しかし、無治療経過観察では、高悪性度ATLへの進行を防ぐことができず、低悪性度ATLと診断されてから5年後に生存されている患者さんは約半数と報告されています。また、低悪性度ATLから高悪性度ATLへの進行を予防したり、遅らせたりする治療法はまだ確立されていません。そこで私たちは、低悪性度ATLに対するよりよい新たな治療法の開発が必要であると考えています。

海外での低悪性度ATLの治療

ATLは、日本のほか、中央アフリカや中南米、これらの地域からの移民が多いフランスや米国でも発生します。海外ではATLの治療として、「インターフェロンα」と抗HIV薬である「ジドブジン」の併用療法が広く行われています。特に近年、これらの国々での後ろ向き調査の結果、低悪性度ATLに対してインターフェロンα/ジドブジン併用療法が有用であるという報告がなされました。

この報告によると、インターフェロンα/ジドブジン併用療法は、無治療経過観察よりはるかに優れた治療法であることが期待されますが、あくまで少数の後ろ向き調査の結果であり、科学的な検証が必要です。また、インターフェロンα/ジドブジン併用療法は、効果が期待できる反面、一定のデメリットもあります。

これまで、無治療経過観察とインターフェロンα/ジドブジン併用療法について、治療効果や副作用などの長所・短所を総合的に比較したことは、国内でも海外でもありません。そのため現時点では、どちらが優れた治療であるかはわかっていません。

本試験の概要(患者さん向け)

インターフェロンα/ジドブジン併用療法について

JCOG1111(ジェイコッグ クワドワン)試験は、低悪性度ATLに対するインターフェロンα/ジドブジン併用療法の有用性を、現在の標準治療である無治療経過観察と比較・検討する第III相臨床試験です。インターフェロンαとジドブジンは、本邦ではATLに対する適応がないことから、「先進医療」という制度を利用して実施します。本試験に参加される患者さんは、インターフェロンαとジドブジンの薬剤費を負担する必要はありません。それ以外の医療費は保険診療となりますので、医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の対象になります。

JCOG1111試験は、先進医療として実施が承認された国立がん研究センター中央病院東病院の2施設で開始されました。将来的には日本全国のJCOG1111リンパ腫グループの施設で本試験に参加できる予定です。最新の実施医療機関リストは下記のページをご覧ください。

JCOG1111試験にご参加いただくためには

本試験の対象は、「低悪性度ATLと診断され、これまでに抗がん剤(内服薬、注射薬とも)の投与を受けたことのない患者さん」です。本試験にご関心をもたれた方は、まずはかかりつけの先生にご相談ください。また、下記のお問い合わせ先でもご連絡を受け付けております。

ただし、ここでご理解いただきたいのは、本試験は「現在の標準治療で、副作用のない無治療経過観察」と、「有望であるが、副作用のあるインターフェロンα/ジドブジン併用療法」のランダム化比較試験(がん情報サービスにリンクします)である、ということです(図2参照)。

約80名の患者さんにご協力をいただきますが、無治療経過観察を受けた患者さんと、インターフェロンα/ジドブジン併用療法を受けた患者さんの予後を直接比較するために、試験登録時にどちらの治療法を受けていただくかを、"ランダムに"(五分五分の確率で)決定します。

患者さんご自身や担当医が治療法を選ぶと、その意思が影響して、比較したい治療法の患者さんの特徴に偏りが生じてしまい、正しい結果を得ることができません。この方法は、どちらがよいかわかっていない治療法を比べるには最もよい方法と考えられており、世界中の臨床試験で採用されています。ですから、もしあなたがインターフェロンα/ジドブジン併用療法を希望されても、50%の確率で、無治療経過観察を受けることになります。

将来同じ病気を発症された方が、より有効で安全な治療を受けられるようにするためにも、このような臨床試験が必要であることをご理解ください。

図2:低悪性度ATLに対するインターフェロンα/ジドブジン併用療法と無治療経過観察のランダム化比較試験


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jcog1111●east.ncc.go.jp(●を@に置きかえてください)

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電話番号:04-7133-1111(代表)(内線:5200)

更新日:2017年11月10日