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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第21回 がん治療とこころのケアについて

2023年1月28日

がん治療の進歩により、がんと診断されても多くの方が治療により治る時代になってきました。しかし、いかに治癒する割合が高まったとはいえ、がんの診断を告げられたり、再発や悪化したことを伝えられた時の患者さんやご家族の受ける衝撃は非常に大きいです。

「残念ながら検査の結果、がんと診断されました」と担当医から告げられ、「頭が真っ白になってしまった」、「今後の治療の話をしたが一体どのような話があったのか全く記憶に残っていない」、「どのように家に帰ったのかすら覚えていない」、という体験はごくごく一般的なことです。

がんの診断の場面では、多くの方が強いストレスを受け、身体面でも精神面でも大きなゆれが生じます。患者さん・ご家族は、「頭が真っ白になった」「自分のことなのに周りに幕が張られたようで実感がない」などの強い衝撃に続いて、「まさか自分が。何かの間違いに違いない」「なぜ自分だけがこのような目に遭わなければならないのか」など、怒りや自分を責める気持ちなどが混ざった気持ちのアップダウンを経験します。
あわせて、眠れなくなったり、食欲が落ちたりし、不安が増し落ち着かなくなったりもします。家族とも話せず、孤独を感じる方もおられます。

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このようななかで、安心して治療を進めるためには、身体やこころの面で本来のペースを取り戻し、一歩一歩確実に治療を進めることが大事です。不安や家族や友人との接し方、仕事のペース作り、家事などの負担を減らすサポートなど、治療とあわせてこころや人間関係、暮らしを支えることも治療の一環です。

国立がん研究センター東病院では、医師や看護師、医療ソーシャル・ワーカーなど幅広い専門職が協力して、患者さん・ご家族が安心して確実に治療を受けられるような体制を用意しています。特に、「眠れない」「だるい、しんどい」「不安で仕方がない」などの困りごとに、外来では精神腫瘍科が、入院中は支持療法チームが、窓口となり、検査の段階から治療後まで、一貫してサポートしています。特にご家族の方の相談・受診にも対応し、患者さん・ご家族それぞれが無理なく過ごせることを目指しています。

加えて近年では社会の高齢化にあわせて、高齢でもがん治療を受けられる方が多くなりました。中には認知症を持ちながらも手術などを受ける方も増えています。

国立がん研究センター東病院では、認知症などがあっても身体・こころの機能を保ちながら、治療を安全に提供できる体制も整えています。特に治療中に認知機能が低下するせん妄の対策では、治療前の予防から一貫した対応を行っています。若い方から高齢の患者さん、そしてご家族を含めてどの課題にも対応できる体制を用意していると自負しております。

執筆者

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  • 小川朝生(おがわ・あさお)
  • 1973年、埼玉県出身。1999年大阪大学医学部卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科修了。2004年国立病院機構大阪医療センター神経科、緩和ケアチーム専従医師を経て2007年より国立がん研究センター東病院精神腫瘍科勤務。

更新日:2023年2月24日