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共同研究開発の提案

基礎研究者、臨床医、病理医、民間企業の方々へ
近藤 格
希少がん研究分野 国立がん研究センター研究所
takondo●ncc.go.jp(●を@に置き換えてください)
(平成29年6月更新)

1.はじめに

希少がん研究分野では、希少がんの新しい治療法の開発を目指しています。希少がん研究分野で行われている研究の現状と、提案する共同研究開発の概要をご説明いたします。

2.希少がん研究分野の患者由来がんモデル

患者由来がんモデルの樹立

新しい治療法の開発のためには、モデル系は必須のツールです。私どもは肉腫など希少がんの患者さんの臨床検体を用いて、モデル系を開発しています。患者由来がんモデルとして、patient-derived xenograft (PDX)やpatient-derived cell (PDC)を数多く樹立しました。希少がんの PDXやPDCは入手し難く新しい治療法の開発が滞りがちになる原因になっている状況を改善しようとしています。現在、樹立したモデル系を用いて、既存の抗がん剤の適応拡大の対象になる希少がんを調べています。私どもの研究資産を活かした共同研究にご興味のある 方はご一報ください。

3.基礎研究者の方々への提案

希少がんの研究を推進するためには、臨床検体の網羅的解析から始まるトップダウン型の研究と、個々の遺伝子・タンパク質の機能を深く掘り下げて疾患研究にもっていくボトムアップ型の研究と、両方が必要です。ご自身の研究成果を希少がん研究につなげる基礎研究者の方々の参加をお待ちしています。

進行中の研究

臨床検体を用いて、さまざまな目的のバイオマーカーの開発、適応拡大のための研究、創薬標的探索、を進めています。それぞれの研究テーマに臨床医と病理医が深く関与しています。肉腫を主な研究対象としてきましたが、悪性腫瘍の対象はとくに限定していません。臨床医、病理医の方と共同でこれからも新たな研究テーマを開拓していきたいと考えています。

私どもの技術的な特色として、プロテオーム解析の技術を駆使しているという点が挙げられます。大型蛍光二次元電気泳動、電気泳動からの質量分析、抗体ライブラリーを用いた解析など、さまざまな技術を開発し、臨床検体を用いた解析を行ってきました。新しい技術の開発にも鋭意取り組んでいます。プロテオーム解析にご興味がある方との共同研究を募集しています。

プロテオーム解析の技術基盤

私どもは2001年より蛍光二次元電気泳動法(2D-DIGE法)を中心としたプロテオーム解析を開始しました。さまざまな技術的工夫を加えた結果、今では細胞内タンパク質を約5000個のタンパク質スポットとして定量的に安定して観察できるようになりました。対応する遺伝子の種類としては約2500種類を見込んでいます。また、レーザーマイクロダイセクション法で得られる微量な検体を超高感度の蛍光色素で標識するアプリケーションを開発し、レーザ-マイクロダイセクションを用いたプロテオーム解析を行っています。バイオプシーで得られるような微量な検体からも十分プロテオーム解析が可能です。2D-DIGE法に最適化したデータマイニングのソフトや、得られたプロテオーム解析の結果を整理し公開するためのデータベースソフトも開発しました。また、リン酸化酵素の活性を網羅的に調べる技術を導入し、阻害剤への感受性の分子背景を調べています。新しいプロテオーム解析技術も鋭意開発中です。 

4.臨床医、病理医の方々への提案

臨床の現場で役立つバイオマーカーを開発するためには、現役の臨床医や病理医の発想が必要不可欠です。また、実際の研究開発にあたっては臨床データの解析に臨床の知識が必要です。臨床現場での問題の解決に私どもの研究環境をどのように活かすことができるか、一緒に考える機会を与えていただければ幸いです。

5.民間企業の方々への提案

私どもは、患者由来がんモデルを用いた薬効評価を行っています。臨床検体を用いた研究以外にも、プロテオーム解析を活用したバイオマーカー開発、プロテオーム解析の技術開発など、さまざまなレベルで民間企業との共同研究開発を行っています。ご興味のある方はご一報ください。

6.最後に

がんの研究は学際的に推進することが重要であり、異なる分野の研究者間、産官学間の密接な交流が必要です。研究内容について詳しいことをお聞きになりたい方は、分野長の近藤格までご一報ください。よろしくお願いします。