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再発・転移甲状腺がん
いずれの組織型においても、外科切除が基本となる治療方針ですが、特に未分化がんでは初診時に根治切除が困難な場合もあります。以下に、甲状腺がんの代表的な治療戦略を示します(図6)。
図6.再発・転移甲状腺がんの治療戦略
分化型甲状腺がん
再発・転移または根治切除不能となった場合には、まず放射性ヨード内用療法の適応が検討されます。放射性ヨード非適応もしくは抵抗性の場合には、以下の分子標的薬が治療選択肢となることがあります:
- マルチキナーゼ阻害薬(レンバチニブ、ソラフェニブ)
- RET阻害薬(セルペルカチニブ)
- TRK阻害薬(ラロトレクチニブ、エヌトレクチニブ)
NCCNガイドラインでもレンバチニブが推奨されており、標的となる遺伝子異常は比較的高頻度に認められるとされています。たとえば、乳頭がんでは75%、未分化がんでも約48%に認められたとの報告があります(Yamazaki H et al., Endocrine 2024)。
当院での治療
薬物療法の適応があると判断された場合には、オンコマインDx Target TestマルチCDxシステムおよびMEBGEN BRAFキットを用いて、標的遺伝子の有無を確認します。RET融合遺伝子陽性の場合はセルペルカチニブ、BRAF変異やNTRK融合が認められた場合は、それぞれの標的に応じた治療の適応を検討します。標的遺伝子が確認されない場合は、レンバチニブを第一選択としています。
甲状腺髄様がん
甲状腺髄様がんではRET遺伝子変異の頻度が高く、近年、RET阻害薬であるセルペルカチニブがマルチキナーゼ阻害薬(バンデタニブやカボザンチニブ)と比較して、奏効率・無増悪生存期間・全生存期間において優れていたと報告されています。
当院での治療
根治切除不能な再発・転移例では、RET遺伝子変異の有無をオンコマインDx Target TestマルチCDxシステムで確認し、変異陽性であればセルペルカチニブの適応を検討します。RET変異が血液検査で既に確認されている場合は再検査を省略することがあります。セルペルカチニブに効果が見られなくなった場合には、バンデタニブやレンバチニブへの切り替えを検討します。
甲状腺未分化がん
進行が速く、外科切除を行っても再発リスクが高いとされ、予後も不良な腫瘍です。初診時よりがん遺伝子検査による標的異常の検索が推奨されており、該当する遺伝子異常が認められた場合には、外科切除前に分子標的薬を導入する可能性があります。
当院での治療
当院では、分化型と同様にオンコマインDx Target TestマルチCDxシステムおよびMEBGEN BRAF3キットを用いて標的遺伝子の有無を確認します。該当する標的が認められた場合には、対応する分子標的薬の導入を検討します。保険適用外の場合は、治験または患者申出療養などの制度を活用して治療選択肢を提供できるかどうかを判断します。