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国立がん研究センター 東病院

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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第5回 肝臓がんに対する傷の小さな腹腔鏡手術

2021年9月29日
国立がん研究センター東病院 肝胆膵外科 科長 後藤田 直人

肝臓がんはB型、C型肝炎といった肝炎ウイルスに感染していると発生リスクが高いと言われています。また、過度な飲酒によって肝臓を傷めていてもアルコール性肝炎から肝臓がんになるリスクは高いとされています。さらに飲酒の習慣がなくても糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症、高脂血症など)、高血圧といった持病のある方も「NASH(ナッシュ)」と呼ばれる非アルコール性脂肪肝炎から肝臓がんになるリスクがありますので注意が必要です。

肝臓は「沈黙の臓器」と称されることで有名ですが、がんが出来ていても自覚症状はほとんどないことが普通です。また、肝臓がんを採血検査で見つけることも難しく、肝臓の数値や肝臓がんの腫瘍マーカーが正常であっても、肝臓がんは出来ている可能性がありますので、特に上記のような持病のある方は肝臓がんの定期検診として、腹部超音波検査も行っておくことをお勧めします。

肝臓がんは肝臓から発生した「原発性肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん)」と他の臓器に発生したがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」に分けられます。「転移性肝がん」の発生源として多いのは大腸がんです。肝細胞がん、肝内胆管がん、そして大腸がんからの転移性肝がんに対しての治療は病気が違いますので使うお薬、抗がん剤も少し違ってきますが、いずれのがんであっても切除可能であれば手術が有効な治療とされています。大腸がんの転移性肝がんに対しては抗がん剤と組み合わせながら手術を行うこともあります。手術が可能かどうかというのはがんの進行状況(数や出来た場所)によりますが、切除する肝臓がその手術に耐えられるかどうかということ(肝機能)も、治療に関わる重要な要素になりますので、日頃より肝臓を労わった生活習慣は非常に大事です。

肝臓は多くの血管から成り立っているため肝臓の手術中は出血リスクが高く、開腹手術では視野を確保するため大きなお腹の傷が必要となります。しかし近年は手術器具の開発や、私たち外科医の技術の向上によって傷の小さい腹腔鏡手術(内視鏡手術)で肝臓の手術が可能となってきています。映像技術の向上から内視鏡を通してもクリアな手術映像を見ることができ、肝臓内の小さな血管も視認し、丁寧に対処していく精細な手術が行えます。傷が小さいと手術後の痛みも少ないことが期待できます。私が勤務している国立がん研究センター東病院ではこの手術を早くから導入しており、2020年度に行った肝臓の手術のうち約8割はこの腹腔鏡手術で行っています。しかしながら、腹腔鏡手術は高度な技術を必要としますので、どこの病院でも行われているのではなく、また国立がん研究センター東病院でも全ての肝臓がんに対してこの腹腔鏡手術が可能になっているわけではありません。現在は肝臓に対してこの腹腔鏡手術を行っている病院が全国的に少しずつ増えている状況です。

image1.jpg腹腔鏡手術のイメージの図

執筆者

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  • 後藤田直人(ごとうだ・なおと)
  • 徳島県出身。1997年岡山大学医学部卒。岡山大学病院勤務などを経て2000年より国立がん研究センター東病院レジデント、2004年同院肝胆膵外科医員、2010年医長、2017年より科長(現職)。