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国立がん研究センター 東病院

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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第14回 肺がんに対するからだに優しい手術

2022年6月25日

国立がん研究センター東病院 呼吸器外科長 坪井正博

肺がんに対して、多くの人が、こわい病気というイメージを抱いていることでしょう。一口に肺がんといっても「十人十色」で、いろいろなタイプがあります。

がんという重みに押しつぶされないで、今の体力で何ができるか、どんな種類の治療があり、それぞれのメリット・デメリットは何なのかを医師から冷静に聞いて、自分の受けたい治療を選択し、それを受けることが大切だといえます。最近の医療の進歩で、肺がん全体の5年生存率は大きく、そして確実に延びてきています。

肺がんの主な治療法は、他のがんと同様にがんを直接たたく手術と放射線療法、全身に作用を及ぼす抗がん剤を使った薬物療法です。治療法はがん細胞の種類、遺伝子異常の状態や病気の進み具合(病期)などにより、個々の患者さんの状態、社会環境などを加味して、これらを単独あるいは組み合わせて最適な治療を選びます。

最近の医療は身体に負担の少ない低侵襲の方向に進んでいます。肺がんの手術も同様で、切る範囲がより少ない手術、いわゆる縮小手術の機会が増えています。肺葉という大きなブロックごとに肺がんを取るのが手術の主流ですが、肺を切る範囲が広くなれば、特に、手術後間がない時期に呼吸機能が低下することは確かです。

ですから、手術後のQOL(生活の質)を考えると、がんが小さい場合には縮小手術は患者さんにとって意味のある方法です。縮小手術には、大別してがんのある肺区域だけを切る区域切除、がんとその周辺を楔型に切る部分切除があります(図)。

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しかし、縮小手術では、周囲のがん細胞のとり残しから局所再発するリスクが高くなるとされていますので、対象となる患者さんは限定されます。最近は手術前の画像検査で、転移しやすいタチの悪いがんか、転移しにくいおとなしいがんかを9割ほど推定できるようになりました。

タチの悪いがんを縮小手術した場合には15%前後再発リスクがあるので、一般的におとなしいタイプのがんに対して積極的に縮小手術を行います。加えて、当院も参加した日本の研究から、肺の外側にできた画像でタチの悪そうな顔つきをした2センチメートル以下の小型肺がんに対して、区域切除が肺葉切除よりも生存期間全体を有意に延ばすことが世界で初めて明らかになりました。区域切除術は局所再発が多い一方で、再発した後の手術、薬物療法など何らかの救済治療を行うことで約35%弱の患者さんの死亡リスクを減らしてより長生きできることが示され、区域切除はこの対象の標準治療の一つです。

また、肺がんの手術では、胸の中に直接手を入れることなく、内視鏡(カメラ)や細長い手術器具を体内に入れて行う胸腔鏡手術、ロボット支援下手術が胸の中に入る方法(アプローチ)の主流になっています。当院では、がんの進み具合と患者さんのニーズに合わせてこのアプローチを選択しています。

このように、肺がんの手術も、他のがんと同様にがんを治すことともに、患者さんの体への負担をできるだけ減らしていくことを考えなければいけない時代になってきたと言えるでしょう。

執筆者

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  • 坪井正博(つぼい・まさひろ)
  • 1987年東京医科歯科大学医学部を卒業。国立がんセンター中央病院などの勤務を経て、2008年神奈川県立がんセンター、2012年横浜市立大学附属市民総合医療センター、2014年から現職。横浜市立大学医学部外科治療学客員教授兼任。手術前後の薬物療法、集学的治療の開発にも尽力し、患者さん個々にベストな治療法を提案している。
    一般向けの啓蒙活動にも注力している。