コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター 東病院

トップページ > 取り組み > 荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治療最前線」 > 第13回 消化器がんに対する内視鏡治療の進歩

荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第13回 消化器がんに対する内視鏡治療の進歩

2022年5月28日

国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科 矢野 友規

がんは、早期で発見されれば治る可能性が高いため、がんを早期に発見することは大変重要です。

消化器がんを早期発見するために発明された内視鏡の研究開発において、日本の研究者や企業の貢献は大きく、消化器内視鏡は国産機器が世界のシェアの殆どを占めています。

日本では、全国に最新の消化器内視鏡機器が普及しており、各地の先生方が保険診療で質の高い内視鏡検査を提供されています。

 

さらに、現在は自治体によっては住民検診にも内視鏡検査が取り入れられています。これらの状況から、日本は世界中の研究者の間で、内視鏡先進国と認識されています。内視鏡には、直接体の中を見ることができること以外に、組織を採ることができる、さらにはがんの治療までできるという特徴があります。

医師は、消化管の中に入れた内視鏡でがんが疑わしいと思われる病気を発見したら、拡大機能を使って病気を精密に観察してその性状を明らかにし、病気から組織を採ってきます。内視鏡で採ってきた組織は、顕微鏡診断の専門家である病理医によって、がんか否かの最終診断がなされます。消化管にできたがんをリアルタイムに観察しながら組織を採って最終診断できる点が内視鏡の最大の強みであり、早期がんの発見に貢献できる理由です。

最近では、がんの発見や診断への人工知能を活用する研究が盛んに行われており、国内でも臨床現場に導入され始めました。

 

消化器がんに対する治療の基本は、手術でがんができた臓器とその周辺リンパ節を取り除くことです。しかし、食道や胃などの消化管を取り除くと摂取できる食事の量や質が変化し、体重が減ることが知られています。過去に手術を受けた患者さんのデータで殆ど転移しないことが明らかになった粘膜内がんに対して内視鏡でがんだけを切除する治療の開発が進みました。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection:図)は、内視鏡を使って特殊な電気メスでがんの周囲を全周で切開し、剥離する方法で、がんだけを臓器温存したままきれいに切除することが可能になりました。ESDは、早期胃がんに対する保険適用が得られ、その後食道がん、大腸がんの治療にも応用されました。ESDは、早期消化管がんの標準的治療として普及し、日本中で外科手術より多い件数の治療が行われています。


Image1.png

内視鏡治療は、さらに進行したがんに対する治療にも適応を拡大しています。光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は、がんに集まりやすい薬剤と薬剤を励起する波長のレーザー光を用いた内視鏡治療で、消化管のがんでは放射線治療後再発食道がんに対して保険適用になっています。放射線治療後再発食道がんは、悪化のスピードが早く、手術が難しいため、治療が難しいがんとして知られています。PDTが持つ高い効果と安全性が期待され、医師主導治験が実施され88%の患者さんで再発食道がんが治るという良好な結果で、2015年に保険適用が得られ、現在普及が進んでいます。

がんを早期発見するために開発された内視鏡は、早期消化器がんに対する標準的な治療から、より進行したがんに対する治療にまで、臨床現場で広く活用されています。

執筆者

2020NEXT_Dr_yano.png

矢野 友規(やの・とものり)
大分県出身、1997年関西医科大学卒、国保旭中央病院勤務を経て2000年より国立がん研究センター東病院内視鏡部、2016年12月より同院消化管内視鏡科科長、2018年10月より内視鏡センター長併任