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図について

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図1 2D-DIGE法によるプロテオーム解析

Two-dimensional difference gel electrophoresis (2D-DIGE)法は、タンパク質を蛍光色素で標識し、等電点と分子量で分離する技術です。超高感度の蛍光色素を使用することで、レーザーマイクロダイセクションで得られるようなごく少数の細胞からでもプロテオーム解析をすることができます。超高感度の蛍光色素の応用や、巨大ゲルとインフォマティクスを使ったシステマティックな解析が、私たちの研究室で考案されがん研究に活用されてきました。

文献

  • Kondo T, Seike M, Mori Y, Fujii K, Yamada T, Hirohashi S. Application of sensitive fluorescent dyes in linkage of laser microdissection and two-dimensional gel electrophoresis as a cancer proteomic study tool. Proteomics. 2003 Sep;3(9):1758-66. [PubMed](外部サイトにリンクします)
  • Kondo T, Hirohashi S. Application of highly sensitive fluorescent dyes (CyDye DIGE Fluor saturation dyes) to laser microdissection and two-dimensional difference gel electrophoresis (2D-DIGE) for cancer proteomics. Nat Protoc. 2006;1(6):2940-56. [PubMed](外部サイトにリンクします)

図2 CIC-DUX4融合遺伝子をもつ肉腫の細胞株の樹立

CIC-DUX4肉腫は、小児に好発するきわめて難治な肉腫です。治療法は確立されていません。私たちは2017年に世界で初めて患者さんの手術検体から患者由来がんモデル(ゼノグラフトと培養細胞株)を樹立することに成功し(文献1)、その後さらに別の症例でも細胞株の樹立に成功しました(文献2)。樹立した細胞株やゼノグラフトは、研究者からのリクエストに応えて無償で配布したり、共同研究で使用したりしています(文献3)。また、国内外の民間企業にも提供してきました。私たちの樹立した細胞株が世代を超えて世界中で使われ、いつの日か新しい治療法につながることを願っています。

文献

  1. Yoshimatsu Y, Noguchi R, Tsuchiya R, Kito F, Sei A, Sugaya J, Nakagawa M,Yoshida A, Iwata S, Kawai A, Kondo T. Establishment and characterization of NCC-CDS2-C1: a novel patient-derived cell line of CIC-DUX4 sarcoma. Hum Cell. 2020 Jan 2. doi: 10.1007/s13577-019-00312-x. [Epub ahead of print] PubMed PMID:31898195.(外部サイトにリンク)
  2. Oyama R, Takahashi M, Yoshida A, Sakumoto M, Takai Y, Kito F, Shiozawa K, Qiao Z, Arai Y, Shibata T, Araki Y, Endo M, Kawai A, Kondo T. Generation of novel patient-derived CIC- DUX4 sarcoma xenografts and cell lines. Sci Rep. 2017 Jul 5;7(1):4712. doi: 10.1038/s41598-017-04967-0. PubMed PMID: 28680140; PubMed Central PMCID: PMC5498486.(外部サイトにリンク)
  3. Okimoto RA, Wu W, Nanjo S, Olivas V, Lin YK, Ponce RK, Oyama R, Kondo T, Bivona TG. CIC-DUX4 oncoprotein drives sarcoma metastasis and tumorigenesis via distinct regulatory programs. J Clin Invest. 2019 Jul 22;129(8):3401-3406. doi: 10.1172/JCI126366. eCollection 2019 Jul 22. PubMed PMID: 31329165; PubMed Central PMCID: PMC6668665. (外部サイトにリンク)

図3 エキシマレーザーを用いたプロテオミクスの新しい手法

近視の矯正にエキシマレーザーが使われています。すなわち、角膜をエキシマレーザーで削り、角膜のカーブを変えることで屈折異常を矯正するのです。私たちは、このエキシマレーザーを用いて、がん細胞の浸潤突起を切り取り回収する技術を開発しました。回収した浸潤突起のプロテオーム解析によって、α-parvinというタンパク質が乳がんの転移に関わることを突き止めました。

文献

  • Ito M, Hagiyama M, Mimae T, Inoue T, Kato T, Yoneshige A, Nakanishi J, Kondo T, Okada M, Ito A. α-Parvin, a pseudopodial constituent, promotes cell motility and is associated with lymph node metastasis of lobular breast carcinoma. Breast Cancer Res Treat. 2014 Feb;144(1):59-69. doi: 10.1007/s10549-014-2859-0. Epub 2014 Feb 5. [PubMed](外部サイトにリンクします)
  • Mimae T, Ito A, Hagiyama M, Nakanishi J, Hosokawa Y, Okada M, Murakami Y, Kondo T. A novel approach to pseudopodia proteomics: excimer laser etching, two-dimensional difference gel electrophoresis, and confocal imaging. Protoc exch. 2014 Mar 4;2014. pii: 2014.007. PubMed Central PMCID: PMC4192725. [PubMed](外部サイトにリンクします)

図4 肉腫のPDX (Patient-derived cancer model)の樹立

肉腫は、症例が少なく手術検体が得難いことから、研究に使うためのモデルが不足しています。モデルがないと、新しい治療法の開発を前臨床試験として実施することができません。私たちは患者さんの手術検体から多数の細胞株やゼノグラフトを樹立しました。樹立した細胞株やゼノグラフトは、多くの研究者に新しい治療法の開発のために使っていただきたいと考えています。
 pdx
図 腫瘍組織から細胞株やゼノグラフトを樹立しています。

図5 プロテオーム解析におけるバイオインフォマティクスの活用

プロテオーム解析では多くのタンパク質の様々なデータを一度に得ることができます。そのようなデータを、臨床病理情報と共に、多数の臨床検体の間で比較解析をすることで、バイオマーカーや治療標的となる少数のタンパク質を同定します。そのような解析では、DNAマイクロアレイの解析に用いられるようなバイオインオマティクスの手法が必要です。

プロテオーム解析に今では当たり前のことですが、私たちがプロテオーム解析を始めた2001年当時は、プロテオーム解析ではこのような手法をとる研究グループは世界的にほとんど存在しませんでした。プロテオーム解析のデータを解析しやすいように変換したり、既存のアルゴリズムを使ったり、私たちがいろいろ工夫して成果を発表しているうちにこのような手法は普及し、今では市販の解析ソフトにも実装されるようになってきました。

図6 プロテオーム解析で得られるタンパク質リストの解釈

プロテオーム解析で得られる多量のデータを、人間がわかりやすい形に整理することは重要な工程です。統計的なアプローチで正解を見つけるには多数のサンプルが必要です。しかし、臨床検体を用いた解析ではもともとサンプル数が限られています。さらに、臨床病理情報をもとにサンプルを層別化すると、一群に含まれるサンプルの数はせいぜい10−20個になってしまいます。解析の後半のステプで標的タンパク質を決める段階では、理屈だけで押し通すことはできず、研究者の主観的な判断が必要になります。そのような時に必要なことは、データを可視化し、研究者が直感的に理解しやすく表現することです。

ここに示したのは「Treemap」と呼ばれるデータ解析の手法です。Treemapでは、プロテオーム解析で同定されたタンパク質には、それぞれに可能性のある分類(パスウェイ、機能、役割など)のタグがつけられます。そして分類ごとに四角に囲われます。四角の大きさは、それぞれの分類に所属するタンパク質の数を表し、色はどれだけ統計的な有意性をもってそこに分類されているかを示します。

Treemapだけでなく、いろいろなデータ解析法を応用することで、私たちはプロテオームのデータをがん研究に役立てています。

文献

Treemaps for space-constrained visualization of hierarchies
URL: http://www.cs.umd.edu/hcil/treemap-history/