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肝臓の手術について

 

肝臓は下図のように、肝臓内の血液や胆管の流れる場所ごとに、区域名が決められています。肝臓を切除する場合、肝臓のどの区域に腫瘍があるか、どの区域を切除するかによって、切除する範囲や切除のやり方が変わります。肝右葉は前区域と後区域を含みます。肝左葉は内側区域と外側区域を含みます。前区域は5番と8番の亜区域を合わせたもの、後区域は6番と7番の亜区域を合わせたもの、内側区域は4番の亜区域のこと、外側区域は2番と3番の亜区域を合わせたものです。尾状葉(びじょうよう) は右葉と左葉の間にあって、肝臓の裏側に走っている下大静脈という非常に太い血管をとりまく肝臓の一部になります。

 

もともと、右葉は肝臓全体の約50パーセントから60パーセント、左葉は約30パーセントから40パーセントを占めます。肝機能が正常であれば、約60パーセントまでの範囲の肝臓を切除することができます。血流に沿って区域ごとに肝臓を切除するやり方を「系統的切除」といいます。

肝臓の比較的表面にある小さめの腫瘍に対しては、区域に関係なく「部分切除」という形で、がんの部分を含めてくり抜くように、比較的小さめに切除します。

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        肝臓の区域名と場所  (国立がん研究センターがん情報サービスより引用)

 

肝臓は血流がとても豊富な臓器であるため、肝臓の手術では手術中の出血が多くなるリスクが他の消化器(胃や大腸など)の手術より高くなります。系統的肝切除は、外側区域切除を除き、日本肝胆膵外科学会では高度な技能を要する高難度肝胆膵外科手術に分類されています。

 

国立がん研究センター東病院ではCTMRI、超音波など精密検査でのがんの個数、大きさ、位置、肝機能(切除後に残る予定の肝臓の量、働き)、また患者さんご自身の状態も総合的に判断して、患者さんお一人お一人に合った外科切除を提案しています。

従来、肝臓の手術はおなかを大きめに切る開腹手術が一般的でしたが、国立がん研究センター東病院では近年、おなかの創(きず)が小さくて済む腹腔鏡手術を積極的に取り入れており、肝切除手術全体の8割が腹腔鏡(ふくくうきょう)手術です。

 手術後の経過について

術後1日目(手術翌日)の朝から水分、昼からお食事を開始します。歩行訓練も術後1日目から開始します。術後入院期間は、合併症が無ければ7日から10日程度ですが、持病の状況や手術合併症の発生状況により異なります。

創(きず)の小さい腹腔鏡(ふくくうきょう)手術の場合、術後の痛みがはるかに少ないため、術後の入院期間は5日から7日です。

 起こりうる術後合併症

急性期(手術後から数週間以内)に起きる合併症(国立がん研究センター東病院では5パーセント以下)

胆汁漏(たんじゅうろう)

肝臓の切離面から胆汁が漏れることをいいます。胆汁が漏れた場合は、手術のときにおなかに入れておくドレーンという管から体外に排出します。場合により、術後に局所麻酔でドレーンを入れる必要が出てくることもあります。胆汁が漏れていた穴は時間とともに自然と閉鎖するため、致命的となることはありませんが、胆汁漏が止まるまでドレーンを留置する必要があり、入院期間が延長することもあります。

胸水・腹水貯留

肝臓の切除後、一時的に肝機能が低下することが原因で、腹水(おなかの中に水が溜まること)や胸水(胸の中、肺の周りに水が溜まること)が出ることがあります。腹水や胸水を減らすためには利尿剤で治療しますが、量が多い場合は局所麻酔で針を刺して水抜きをする場合もあります。

腹腔内膿瘍(ふくくうないのうよう)

肝臓を切除した付近に胆汁漏や腹水が溜まり、そこに細菌が感染して膿が溜まる状態です。発熱や痛みを伴うことがあります。菌が広がり血液内に入ると、敗血症といって深刻な状態になることもあります。膿(うみ)を排出するためにドレーンという管を入れる処置や、抗生剤の投与で治療します。

 

 急性期(手術後から数週間以内)に起こり得る、稀であるが重篤な合併症(国立がん研究センター東病院では1パーセント以下)

肝不全

肝切除後に残った肝臓が十分に働かない状態です。切除した残りの肝臓が小さすぎる場合や、もともとの肝機能障害が強い場合に起こります。肝不全を発症すると他の臓器も機能不全に陥ることが多く、命にかかわる非常に重篤な合併症です。

術前に肝機能や残る予定の肝臓の量を評価して、このような合併症が起こることがないように十分に注意していますが、数値だけでは評価しきれない部分もあり、術後に稀に起こり得ます。通常肝臓には自己再生機能が備わっており、3か月から6か月程度で残った肝臓の体積が大幅に増大し、機能的にもほぼ元に戻ります。

腹腔内出血

術直後に手術で操作した部位から出血する場合と、数日から数週間後に胆汁漏や腹腔内膿瘍が原因で動脈や静脈が破綻して出血する場合があります。出血に対しては、再手術や血管造影でカテーテルからコイルという小さな金属を血管の内側に詰めて止血します。胆汁漏や腹腔内膿瘍による動脈性出血は、一度止めても再度出血することがあり、そのような場合は命にかかわる可能性もあります。

退院後の生活について

退院後は通常3か月毎に血液検査、CTや超音波検査を行い、再発やその他の不具合がないか確認していきます。再発予防のため全身化学療法(抗がん剤)をお勧めする場合もあります。

 

肝臓の手術後に特に注意すべき点は体重の変化です。手術による消耗や食事量が少なくなるために入院中に2キログラムから3キログラム程度体重が減少します。通常は退院後すぐにもとの体重に戻りますが、入院中と同じように毎朝お食事前に体重を測るようにしてください。もし短期間で急な体重増加や手足のむくみが悪化するようなことがあれば、担当医までご連絡ください。
緊急性のあることではありませんが、退院後ご自宅で過ごすにあたって何らかの原因により肝機能が弱り腹水やむくみが生じ、結果として体重が増加していることが考えられます。その場合は休養、安静をとりつつ、利尿剤で治療します。

 

退院後、過剰に食事を摂取することやアルコールの摂取、すぐに術前と同じくらい体を動かすこと(過労)などはいずれの行為も肝臓に負担をかけますので、適度な食事量と運動を心がけ、体重をコントロールしてください。

受診をご希望の方へ

東病院肝胆膵外科への外来受診についてはこちらをご確認ください。

更新日:2024年4月2日