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遠位胆管がん

原因は不明なことが多いですが、胆道拡張症や膵胆管(すいたんかん)合流異常という先天的な疾患がある場合には3パーセントから7パーセント程度と高率に胆管がんを生じやすいと言われています。また、一部の化学物質が胆管がんの発生に関係していると言われています。特に印刷工場で使用される化学物質が原因物質の一つとして疑われており、印刷業に従事される方は定期的に検査を受けることが勧められます。

症状について

がんによって胆汁の流れがせき止められてしまうと、胆汁中の色素(ビリルビン、と言います)が血液中に蓄積し「黄疸(おうだん)」と言う症状を呈します。黄疸となると、皮膚や白目の色が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりします。また逆に、胆汁が便中に排泄されなくなるので、便の色は灰色となります。これら黄疸の症状が出る前に、検診などの採血で肝機能異常を指摘されてがんが見つかる場合も数多くあります。

診断および必要な検査について

肝機能異常や黄疸のため肝門部領域胆管がんが疑われた場合、まず超音波検査、CT、MRIなどの精密検査を行います。また、がんによってせき止められた胆汁の詰まりを解除するため、ステントという筒を内視鏡検査により胆管に留置します。この内視鏡検査では、数日の入院が必要です。画像検査でがんの広がり具合を診断し、手術適応があるかどうか判断し、さらにステントを留置してから黄疸がある程度下がったら手術を予定します。

手術について

遠位胆管がんの手術は、肝外胆管と胆嚢(たんのう)を切除し、さらに膵頭部(すいとうぶ)と十二指腸を一緒に切除します(図1:膵頭十二指腸切除術)。詳しくは膵臓の手術についてをご覧ください。

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図1 膵頭十二指腸切除術

胆管、胆嚢、膵臓、十二指腸を切除します。胆管、膵臓、胃の断端をそれぞれ小腸と吻合し、胆汁、膵液、食物の流れ道を作り直します。

治療成績

起こりうる合併症

胆汁漏(たんじゅうろう)

胆管と小腸を吻合した部位から胆汁が漏れることがあります。漏れた胆汁は手術の時に入れた管(ドレーン)により体外に排出され、また胆汁が漏れていた穴は時間とともに自然と閉鎖するため致命的となることはありませんが、胆汁漏が止まるまでドレーンを留置する必要があり入院期間が延長する原因となります。

膵液漏(すいえきろう)

膵臓と腸のつなぎ目から膵液が漏れることを膵液漏といいます。漏れた膵液は消化液や胆汁と混じることにより活性化され、周囲の組織を溶かしたり膿を作ったりして炎症を引き起こします。まれですが近くの動脈を溶かして出血を引き起こし(2パーセントから5パーセント)、生命にかかわる深刻な状況になることがあります。多くの場合、手術の時に入れた管(ドレーン)から漏れた膵液を回収することにより深刻な状況には至りませんが、膵液漏が収まるまで、ドレーン腔を洗浄したりしながら慎重に経過を見る必要があります。

腹腔内膿瘍(ふくくうないのうよう)

お腹の中に膿がたまる状態です。敗血症につながることもある深刻な合併症です。腹水に細菌が感染したり、胆汁漏、膵液漏といった縫合不全から感染が広がったりして起こります。38度以上の発熱や痛みを伴うことがあります。抗生剤の投与や、手術の時に入れた管(ドレーン)から膿を排出して治療します。場合により膿を効率よく排出するために追加のドレーンを入れる処置を行います。

胆管炎

胆管内に腸内の細菌が入り込むことにより、胆管で炎症が起きる症状です。膵頭十二指腸切除では胆管と腸を直接つなぎ合わせるので、術後は腸液が胆管内に逆流しやすくなります。便秘やお腹の中の炎症で腸液の逆流がしやすい時は胆管炎にかかりやすくなります。38度以上の発熱や右の脇腹の痛みを伴うことがあります。栄養状態が悪かったり、体調が悪い時は胆管炎から敗血症になることもありますので注意が必要です。抗生剤で治療しますが、胆汁の流れを良くする薬や便秘薬を併用します。

吻合部狭窄(ふんごうぶきょうさく)

胆管と小腸の吻合部が狭窄(狭くなりつまること)し、胆汁の流れが悪くなることがあります。黄疸(おうだん)が生じるような場合には、内視鏡的治療が必要になる可能性があります。

退院後の生活

退院後は通常3か月毎に採血と造影CT検査を行い、再発やその他の不具合がないか確認します。自宅で特に注意すべき点は胆管炎による発熱です。胆管炎を放置すると肝臓に膿みがたまってしまい(肝膿瘍、と言います)ドレナージが必要となる可能性があります。発熱時は自己判断せずに私たち担当医か、かかりつけ医を受診してください。

受診をご希望の方へ

東病院肝胆膵外科への外来受診についてはこちらをご確認ください。

更新日:2021年10月29日