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国立がん研究センター 東病院

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がん患者の生活の質(QOL)を守る支持療法のガイドライン遵守実態調査結果について~がん薬物療法専門医が一般の医師に比べガイドラインに沿って実践していることが明らかに~

ポイント

  • がん治療に伴って発生する副作用に対して行う支持療法(注1)は、患者さんの生活の質を維持するために必須です。最近は副作用対策に関するガイドラインが症状ごとに発行されています。
  • ガイドラインは実臨床の医療者が参考にすることで初めて患者さんに恩恵があるため、支持療法が正しく行われているかを調査する一環として、支持療法ガイドライン遵守実態調査を行いました。
  • 調査の結果、日本臨床腫瘍学会が認定するがん薬物療法専門医は一般の医師と比べて、ガイドラインに沿った支持療法を実施していることが明らかになりました。
  • がん薬物療法専門医のガイドライン遵守率が高かったことは専門医の信頼を上げるとともに、患者さんも安心感を得ることができる結果となりました。また、日本臨床腫瘍学会の教育システムが機能していることがわかりました。

概要

支持療法はがん治療で発生する副作用にしっかりと対応する治療であり、がん患者さんの生活の質(QOL)を維持するためには必須のスキルです。

国立がん研究センター東病院 臨床研究支援部門 支持・緩和研究開発支援室長の全田貞幹が研究代表者を務める研究班では、生存など直接的な数字には表れないものの、がん治療の水準に大きな差が出る支持療法が全国でどのように普及しているかを調査しました。本研究の大きな目的は、その阻害要因や促進要因を明らかにして支持療法の全国的な普及実装に資することです。

発熱性好中球減少(注2)ガイドラインを対象にした調査の結果、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の遵守率が有意に高いことが明らかになりました。

なお本研究成果は、世界がんサポーティブケア学会:Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC)の学術誌である「Supportive care in cancer」に日本時間2022年1月30日付けで掲載されました(筆頭著者:帝京大学 秋山 暢)。

背景

支持療法に関するガイドラインはいくつか公表されていますが、ガイドラインは実地臨床で使用されてこそ患者に恩恵をもたらすものだと考えます。日本臨床腫瘍学会(JSMO)は2017年に『発熱性好中球減少症(FN)に関するガイドライン(改訂第2版)』(GL)を発表しました。

本研究の目的は、化学療法に携わる医師を対象にGLの周知・使用ならびに推奨項目の遵守状況をアンケートにより調査し、GL勧告を遵守するための促進因子と阻害因子を明らかにすることにあります。

研究方法・成果

質問項目と実践の割合の図

図1.質問項目と実践の割合

20204月から5月に日本がんサポーティブケア学会および日本臨床腫瘍学会、日本血液学会、日本乳癌学会の医師会員を対象に、SurveyMonkeyTMによるアンケート調査を実施しました。

GLの周知・使用ならびに推奨項目の遵守に関する質問21問、回答者の属性に関する質問7問について回答を求めました。800件の回答が得られ分析可能な788件を解析しました。

主な回答者は10年以上の経験を持つ専門家で、内科系医師が54%、外科系医師が46%でした。GLの周知・使用率ならびにGL推奨項目の遵守率を報告した回答者の87%がGLを知っており、実臨床で使用していました(図1)。

推奨項目を必ず行うという回答を完全遵守、半数以上の患者に行うという回答を部分遵守とすると、完全遵守率および完全+部分遵守率の中央値は、それぞれ46.4%(範囲:7.0-92.8)、77.8%(範囲:35.4-98.7)でした。

次に回答者の属性毎に利用率と遵守率を求め、これらに影響を与える属性について単変量解析(Fisher正確確率検定、Mann-WhitneyのU検定、Kruskal-Wallis検定)、多変量解析(二項ロジスティック回帰分析、線形重回帰分析)を行いました。

その結果、部分遵守を含めると女性、日本臨床腫瘍学会(JSMO)の学会員がガイドラインをしっかり参考にしていることがわかり、中でも日本臨床腫瘍学会認定薬物療法専門医が一般の医師に比べてガイドラインの完全遵守の割合が高いこと(p=0.0325)が示されました(表1)。

多変量解析による結果の表

表1.多変量解析による結果

展望

本研究班の今後の方向性として、ガイドラインの遵守率が低かった項目については一般臨床医にGLに沿った診療を促すだけでなく、阻害因子を究明して臨床で実践できることを念頭に置いたガイドラインの作成を提言していく予定です。

将来的には、どこに住んでいてもがん治療(手術、放射線治療、薬物治療)だけでなく、副作用対策を含めた支持療法も充実した医療を患者さんが受けられることを目指しています。

発表論文

  • 雑誌名:Supportive care in cancer
  • タイトル:Difference of compliance rates for the recommendations in Japanese Guideline on Febrile Neutropenia according to respondents’ attributes: The second report on a questionnaire survey among hematology-oncology physicians and surgeons. 
  • 著者:Nobu Akiyama, Takuho Okamura, Minoru Yoshida, Shun-ichi Kimura, Shingo Yano, Isao Yoshida, Hitoshi Kusaba, Kosuke Takahashi, Hiroyuki Fujita, Keitaro Fukushima, Hiromichi Iwasaki, Kazuo Tamura, Toshiaki Saeki, Yasushi Takamatsu, Sadamoto Zenda
  • DOI:10.1007/s00520-022-06834-9
  • URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00520-022-06834-9
  • 掲載日:2022年1月30日

研究費

  • 厚生労働科学研究費補助金
    「実地臨床における支持療法の実装実態及び普及阻害/促進要因に関する研究」

用語解説

(注1)支持療法 :がんに伴う副作用に対して行う介入のこと。

(注2)発熱性好中球減少:抗がん剤使用で出現する発熱を伴って好中球が減少する副作用。命に係わる場合もある。

お問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 
臨床研究支援部門 支持・緩和研究開発支援室長 全田 貞幹
電話番号: 04-7133-1111(代表)  
メールアドレス:szenda●east.ncc.go.jp(●を@に差し替えください)