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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第7回 胃がんに対する手術

2021年11月27日
国立がん研究センター東病院 胃外科 科長 木下 敬弘

胃がんは日本に多い病気です。2018年の1年間には、約12・6万人の患者さんが国内で胃がんと診断されています。
みぞおちの痛みや違和感、食欲不振、吐き気、黒い便などの症状をきっかけに病院を受診して発見されることもありますが、かなり進行するまで症状がない場合も多いです。したがって50歳以上になったら集団検診(胃X線検査や胃内視鏡検査)をうけることが推奨されています。 

他の国と比較して胃がんの発生率が高かったこともあり、日本の胃がんの診断や治療は世界的に高いレベルにあります。国内全体での5年生存率は66・6%とされており、決して治らない病気ではありません。

治療方法は大きく分けると、内視鏡治療、手術治療、薬物治療の3種類があります(図1)。治療法は病気の進み具合(ステージ)をまず検査で確認し、個々の患者さんの状況も加味しながら、最も適切な方法を選択します。

image02.png図1

がんが胃壁の一番内側の層(粘膜)にとどまり一定の条件を満たす場合、リンパ節転移の可能性はほとんどありませんので、胃カメラを用いて病巣だけを切除する内視鏡治療が可能です。がんがもう少し胃壁に深く入り込んでいる場合、胃のまわりのリンパ節にがんが転移している可能性が高くなってきます。
この場合は、胃のまわりのリンパ節も含めて胃を切除し、食べ物が食べられるように胃と腸管をつなぎ直す(再建)治療が必要となってきます(図2)

最近は、CT画像検査でリンパ節転移がすでに明らかに確認できる場合、がんの拡がりが高度で手術で切除できるかできないかぎりぎりと判断される場合、もともと悪性度の高いがん(スキルス胃がんなど)と判断される場合などには、手術前に2―3カ月の薬物治療を先行して行い(術前化学療法)、その後に計画的に手術治療を行う方法をとる場合が多くなっています。

また最初は手術で切除ができない(ステージIV)と判断されても、薬物治療が効いて切除可能な状態になり(ダウンステージ)、手術治療を行うケースも最近は増えています。

image01.png
図2

手術方法は以前のお腹を大きく開く開腹手術から、傷のほとんど目立たず術後の回復が早い低侵襲手術にシフトしています。当院では胃がん手術の約80%を低侵襲手術で行っています。
低侵襲手術の方法は、小さな傷から細長い手術器具を外科医が体内に挿入し、直接操作する腹腔鏡手術が主流です。

最近は、手術器具を外科医が2―3メートル離れたコックピットから操作するロボット手術が普及してきています。ロボット手術ではこれまで真っすぐであった手術器具が関節機能で自由に曲げられるとともに、手振れが補正される機能もあります。

当院では国内に先駆け2014年からロボット手術を開始し、これまでに約280例(2022年3月時点)を経験しました。ロボット手術を用いることでより精密に病変を切除することができ、食事をする機能も温存でき、術後合併症も少ない手術が行えると期待されています。

このように胃がん手術はがんを治すことと同時に、患者さんへの負担を軽減できる時代になってきたと言えるでしょう。

執筆者

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  • 木下敬弘(きのした・たかひろ)
  • 1994年、金沢大学医学部卒業。2001年、ドイツ学術交流会奨学金でドイツ・テュービンゲン大学低侵襲外科留学。2004年、東邦大学医療センター佐倉病院外科・講師。2010年、国立がん研究センター東病院胃外科・医長。2012年、国立がん研究センター東病院胃外科・科長。専門は胃がん・食道胃接合部がんの外科手術、低侵襲手術(腹腔鏡・ロボット手術)。日本胃癌学会理事・代議員・規約委員・ガイドライン作成委員。日本ロボット外科学会認定専門医。

更新日:2022年3月11日