トップページ > 診療科・共通部門 > 外科系 > 胃外科 > 病気と治療について > 化学療法を併用した治療について
化学療法を併用した治療について
術後補助化学療法
胃がんが発見され、まず手術で胃切除を行った後は、顕微鏡を用いた病理検査で切除した標本を詳しく調べます。その結果、リンパ節転移が見つかったなどの理由でステージIIあるいはIIIと診断された場合は、術後に再発予防目的に抗がん剤の投与を行うことがあります。これは肉眼やCT検査などで確認できないようなミクロのがん細胞が体内に残っているかも知れない可能性を考えての予防的治療法です。このような治療を『術後補助化学療法』と呼びます。一般的には、手術後1か月後を目途に開始されます。
使用される薬剤は経口抗がん剤であるS-1のみの場合、これにドセタキセルを加える場合(DS療法)、オキサリプラチンを加える場合(SOX療法)があり、病理所見や個々の患者さんの状況から判断されます。S-1療法、DS療法、SOX療法ともに、原則として入院の必要はなく、外来での治療となります。東病院での術後補助化学療法は、抗がん剤治療のエキスパートである消化管内科医師が行い、胃外科担当医・消化管内科担当医の間で密に連携をとりながら治療をすすめていきます。
また、東病院には遠方からもたくさんの患者さんが来院されます。術後補助化学療法のための通院が困難な場合には、東病院サポーティブケアセンターを通じて地元の病院と連携することが可能です。術後補助化学療法は地元の病院で行い、その後の経過観察(頻度としては3から6ヶ月に1回程度です)を東病院でうけることも可能です。遠慮なくご相談ください。
術前化学療法
治療の効果を高めるために、一部の進行胃がんに対して、手術の前に抗がん剤による化学療法を行います。
メリット
- 目に見えない小さな転移に対して、抗がん剤治療が効果を発揮する。
- 手術の前に行うので体力があり、十分な抗がん剤治療ができる。
- 手術前に様々な準備が行う時間が得られる。
- 胃がんそのもの、およびがんが転移しているリンパ節が小さくなることによって、手術でがんを取りきれる可能性が高くなる。機能を温存できる可能性もでてくる。
デメリット
- 術前化学療法が効果を示さなかった場合、あるいは重い副作用が出現した場合などに、手術のタイミングを逃してしまう可能性がある。
術前化学療法を行うことで効果が期待できる場合は、考えられるデメリットとあわせて、担当医より詳細に説明します。術後補助化学療法と同様に、術前化学療法も抗がん剤治療のエキスパートである消化管内科医師が行います。手術を前提とした治療であり、適切な手術のタイミングを逃さないように、術前化学療法中は胃外科と消化管内科間でより密な連携をとるように努めています。遠方の方でも、術前化学療法は可能ですので、遠慮なくお問い合わせください。
cStage IV(ステージ4)胃がんに対する集学的治療
根治切除が不可能な進行胃がんと診断された場合(ステージIVB)、標準治療はバイオマーカー検査(HER2, MSI-High, CPS, CLDN)の結果に基づいた薬物治療です。近年の薬物治療の進歩に伴い、薬物治療が著効(効果が現れること)し根治切除が可能な状態にステージが下がる場合もあります(このような状態をダウンステージと呼びます)。この状態で、根治手術を行う場合があり、このような手術を『コンバージョン手術』と呼びます。一般的には、コンバージョン手術が考慮されるのは、薬物療法が開始されて4か月以上が経過したタイミングとなります。東病院では、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤に手術をうまく組み合わせることで治療成績の向上を目指すとともに、胃外科と消化管内科でのカンファレンスを定期的に行い、切除のタイミングを逃さないよう密に連携をとりあっています。しかしコンバージョン手術がすべての患者さんにとって有益かどうかはまだはっきりしておらず、個々の患者さんと相談しながら治療方針を決めることとなります。
下の写真は、初回来院時には根治切除は不可能と判断されたにもかかわらず、薬物治療が著効し切除可能となった患者さんの一例です。根治切除後、5年以上経過しましたが再発なくお元気で生活されています。もちろん、すべての患者さんに抗がん剤が著効するわけではありませんが、すこしでも多くの患者さんの命を救うことを目指し、Stage IV胃がんに対しても積極的な治療を行っています。
例 化学療法によりStage IV(ステージ4)から手術が可能となった胃がん
●胃がんに対する治療方針についてはこちらをご覧ください
●胃がんの手術についてはこちらをご覧ください